『ストーカーの告白』
私、和久は、同級生の恵美に対しストーカー行為を行っていたことを反省いたします。
何故ストーカー行為を働いてしまったのか。その理由は、恵美のことが好きだったからです。ですので、最初は自分がストーカーをしている自覚がありませんでした。正直に話せば、自分自身は今もストーカーをしていたとは思っていませんが、第三者から見れば紛れもなく、ストーカー行為そのものだったのだと思います。
最初は、ただ好きで、見守りたくて始めたものでした。今から三か月前の事です。学校からの帰り道、途中まで道が同じだったことに気が付きました。私にとっては嬉しいことでした。好きな人と同じ道を通って帰られるんですから。
ですから、後を着けることはとてもやりやすかったのです。でも、それ以上のことは決してしません。私はただ恵美のことを見ていたかった、ただそれだけだったのです。
その行為がだんだんとエスカレートしてしまったのは言い訳のしようがありません。学校から家までは、私の方が短く恵美の方が長い距離です。最初こそ自宅に着くまで、といっても同じ道なので当初は周りも違和感がなかったんだと思いますが、こっそり見守る形で着いて行っていました。
それが、いつの頃からだったかはもう覚えていません。私は自宅には入らず、そのまま、恵美の後ろを、じっと、じっと着いて行くようになりました。ただばれるのだけは避けたかったのは覚えています。
なぜばれるのが嫌だったのか、今思えばよくわかりません。ただ、ばれて嫌われるのが怖かったからかもしれません。それが怖いならしなければいいだけだったと思います。でも、私はどうしても恵美のことをじっと見ていたい。その気持ちが抑えきれなかったのです。
次第に、ストーカーと呼んでもおかしくない行動は、下校時以外にも及びました。たとえば授業中も、ふと気づけば恵美の方を見てしまっていました。授業を疎かにしていたと思います。
恵美はテニス部に入っていました。私は帰宅部だったので、本当ならすぐに帰れるのですが、恵美の事を見ていたいので、遠くの陰からじっと恵美の事を見ていました。そうしてテニス部の部活が終わり、みんなが帰り支度をし始めた頃合いを見計らって、自分も帰る準備をして、いつものように恵美の後を追ったのです。
実は一度、同級生にこの行為がばれかけたことがありました。
「メグミは、カズヒサのことをストーカーしてるの?」
私や恵美と同じ小学校からこの中学に上がった子から言われました。その時は、「いいえ」と答えましたが、内心はばれたと思いました。いや、本当はばれていたかもしれません。
「たまたま帰り道が同じだけで、だれかがそうみえたんじゃないか」
そういって否定したので、当時から帰り道が同じことを知っているその子は信じてくれました。それが、私の行動を過激にしたのかもしれません。
そもそも私と恵美は、小学校の頃から同じ学校です。通学路も当時から同じでした。同じクラスになったこともあります。でも最初は、お互いに仲良く話すほどではありませんでした。
一時期、小学校低学年の時、クラスで「カズヒサがメグミのことを好きらしい」と噂になったことがあります。そのせいで一度、突き放されたことがあります。でもそれは低学年の頃の話で、気付けばそのような事実はまるでなかったかのようになりました。
そこで、一度すっぱり諦めることが出来ればよかったのかもしれません。でもできませんでした。当時から思いは変わらなかったのです。
だから、だからこそ、振り向いた恵美にばれて、思いっきり叫ばれて、このことがこうして明るみになるまで、私はストーカー行為を続けてしまったのだと思います。
改めまして、
そして願わくば、私のせいで不登校となってしまった恵美のために、私の口から直接謝罪しに行きたい所存です。それが私の誠意であり、償いだと考えております。
二年 三組 出席番号三二番
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