第594話
2枚目の手紙に書かれていたコウ自身のことについてなのだが、以前帝国へ行った際に出会ったビビから聞いていた内容とほぼ一致するものばかりであった。
きっと自身の死期が近いということが薄々分かっていたため、最後にコウへ出生の秘密について伝えたかったのだろうが、自身のことについてはある程度ビビを通して知っていたりする。
まぁハイドもまさかコウが母であるリーゼの従者ビビと出会い、出生の秘密を知り得るとは思ってもいなかった筈である。
また手紙の最後には別れの言葉と共にこれから先何があろうとも強く生きて欲しいという願いが込められた一文が書かれていた。
「俺は本当にもう1人っきりになったんだな...」
そしてハイドからの手紙を読み終えたコウは天涯孤独の身となってしまったことを改めて実感してしまう。
前の世界でともに生活していた家族に会うことが出来ることはなく、またこの世界で家族と呼ばれる者達も既にいないということで、再び悲しさの感情がコウのぽっかりと空いた心の穴を埋めていく。
しかし悲しい気持ちにはなれど、先程ずっと涙を流していたせいで、出したくともこれ以上涙は出ることはない。
そのため、コウはハイドからの手紙をそっと先程まで置いてあった場所に置くと、再びベッドに寄り掛かりながら座り出す。
「キュ!」
そんな悲しそうなコウの姿を見たフェニはもう一度慰めるよう頬にベッタリと翼を広げて擦りながら寄り添ってくれた。
そして寄り添ってくれたフェニの温かな体温が頬にじんわりと伝わることとなったのだが、そこでコウは家族と言えないが今の仲間であるライラや親しい人物などの顔が頭の中に思い浮かぶこととなり、自身の周りにはまだ支えてくれるような人物がいることを気付かされた。
とはいえ、この悲しみから簡単に立ち直ることは出来ないだろうが、親しい仲の人物と永遠の別れはどちらにせよ遅かれ早かれ起きることでもあり、コウはこの壁を乗り越えて前に進んでいくしかない。
「父さんの願いを叶えないと...」
そのため、コウは外套の袖で泣いたことによってぷっくりと腫れた目をゴシゴシと強めに擦りながら拭くと、最後に火葬して欲しいという父であるハイドの願いを叶えることにするため、そのまま足に力を再び込めて立ち上がり、家の外へ出ていくことにした。
家の外に出ると、頭上には大きな満月が満天の星空の海を泳ぐかのように浮かびながら煌々と輝いていた。
そのお陰で家の周囲一帯が月明かりによって照らされ、夜だとしても足元がかなり見やすくなっていたりする。
「とりあえず穴でも掘って燃やすための場所を作るか...」
そして外に出たコウは早速、ハイドの亡骸を燃やすための場所を確保することにし、庭の片隅に人一人分がすっぽりと入ることが出来るような大きな穴を掘ることとするのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
次回の更新予定日は多分8月30日になりますのでよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます