第585話
「到着だな」
「キュ!」
「今日はもうゆっくり出来そうですね〜って何か置いてあります〜」
解体倉庫にある程度の魔物を任せたコウ達はというと、日頃からお世話になっている小鳥の止まり木という宿へ足を運んでいた。
そんな小鳥の止まり木という宿に到着すると、入り口の前には何箱か木箱が置かれており、1つの木箱の中を確認してみると、中にはごろごろとした大きめの野菜が詰め込まれていたりする。
きっと宿の夕食などで使われる食材達なのかもしれない。
そして建物の中に入ると、そこにはいつものミランダが先ほど外に置かれていた野菜が詰められていた木箱を台車でガラガラと音を鳴らしながら運んでいる姿があった。
「あら?コウさん達ではありませんか」
「忙しそうだな。手伝おうか?」
「いえいえ私の仕事ですので。お気持ちだけ頂きますね」
「そっか。じゃあ仕事中悪いけど預けてた部屋の鍵をもらっても良いか?」
「えぇ問題ありませんよ。少々お待ち下さい」
とりあえず荷運びの手伝いでもしようかと思ったのだが、ミランダからは自身の仕事なのでと断られてしまったので、仕事中で悪いのだが、預けていた部屋の鍵をもらえないかと聞くことにした。
するとミランダからは少し待って欲しいと言われ、台車に乗っている木箱をそのまま奥の部屋まで手で押しながら運び出す。
「お待たせ致しました。こちらが預かっていた部屋の鍵になります」
そしてそのまま受付の前で待っていると、先ほど奥の部屋に入って行ったミランダがパタパタと足音を鳴らしながらこちらへ駆け寄り、受付の引き出しからコウ達が預けていた鍵を取り出して手渡してくれた。
「ありがとな」
「ありがとうございます〜」
「キュイ!」
「いえいえいつもご利用して頂きこちらこそありがとうございます。ではごゆっくりお過ごし下さいませ」
部屋の鍵を受け取ったコウ達はお礼を伝えつつ、2階へ続く階段を昇っていき、そのまま別れるように部屋の中へ入っていく。
「夕食までまだ時間はあるしまた一眠りでもしようかなぁ...」
「キュ!」
馬車内で軽く寝ていたとはいえ、朝早くから王都を出たし、夕食まで時間もあるということなので、コウは外套を脱いで近くにあったポールハンガーに掛けると、ダイブするかのようにベットの上で横になり、目を少しだけ瞑ることにするのであった...。
■
「んぁ?何の音だ?」
あれからベッドの上で目を瞑ってすやすやと気持ちよく寝ていたコウはこんこんという誰かが部屋の扉を叩く音で目が覚まされることとなる。
そんな目を覚ましたコウは周りを見渡すと、部屋の中は既に薄暗くなっており、若干開いている窓の外は夜ということで星空がちらりと見えることに気が付いた。
「コウさん起きて下さ〜い。夜ご飯に行きますよ〜」
どうやら先程、部屋の扉をノックしてきた人物というのはライラであり、夕食の時間のため、食堂へ一緒に食べに行こうという誘いであったようだ。
「分かった!すぐに準備するから待っててくれ!」
確かに自身の胃袋からはお腹が空いたというSOSサインが聞こえてきたので、夕食にすることとし、ライラに返事を返しながらベットから飛び降りてポールハンガーに掛かっていた外套を身に付けると、部屋の扉を開けて外に出ていく。
「起こしてもらって悪いな」
「いえいえ〜フェニちゃんは呼ばなくても良いんですか〜?」
「おっと...そうだった。フェニも行くぞー」
そしてライラからフェニは呼ばなくても良いのかと聞かれたので、コウは確かにと納得し、部屋の中に向かって声を掛けてみることにしたのだが、全く持って反応がない。
「反応が無いですね〜」
「あー...窓が開いてたし出掛けてるのかもな。まぁフェニはどっかで食べてるだろ」
「では行きますか〜」
今思えば、窓が開いていたので、出掛けているのかもしれれない。
まぁ反応が無いということはもしかするとそういうことなのだろう。
ということで、コウ達は宿の1階に降りて食堂に向かうことにし、食堂へ到着すると、そこにはこの宿の部屋を借りている人達がチラホラと食事しているのが見えた。
とはいえ、まだまだ場所自体は空いているので、コウ達も近くの空いている席へと着席すると同時に厨房からミランダが水差しと銀のコップを持ちながら姿を現し、こちらに向かって歩いてくる。
「すぐに料理をお持ちしますので待っていて下さいね」
「あぁありがとな。よろしく頼む」
「よろしくお願いします〜」
そんなミランダはコウ達の前に水差しと銀のコップを置くと、料理をすぐに運ぶので待っていて欲しいと言われたので、水を注ぎながらゆっくりと待つことにした。
そして料理が出来るまでの間、ライラと雑談でもしながら待っていると、ミランダが厨房から再び現れ、こちらに向かって夕食そしてスプーンやフォークなどをワゴンに乗せて運んでくるのが見えた。
「お待たせ致しました。本日は焼きたてのパンと野菜たっぷりのポトフになります」
そのままコウ達の元へ到着すると、ワゴンの上に乗っていた料理が目の前に並べられていくのだが、今日の夕食はどうやらこんがりと焼かれた黄金色のパンと昼頃にミランダが運んでいた野菜がたっぷりと入ったポトフのようだ。
「じゃあ早速食べようかな」
「お昼の野菜ですかね~?美味しそうです〜」
まず最初に手を付けたのはポトフであり、置かれていたスプーンでゴロゴロとした野菜を掬って口の中に放り込んでみると、シンプルに塩と胡椒で味付けされたスープが野菜に染み込んでおり、噛めば噛むほど野菜の甘みも出てきてかなり美味しい料理となっていた。
続いてポトフと同時に出されたこんがりと焼かれたパンも手に取って指先に力を込めると、ふんわりと焼き上げられているためか、指先は沈み込んでいき、いとも容易く千切ることが出来たりもした。
またコウとライラの2人はそんな美味しいパンやポトフのおかわりが自由ということで、何度もおかわりをして黙々と食べ続けることとしたのだが、夕食を終えて部屋に戻った後に胃袋が悲鳴を上げたのは言うまでもないのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
次回の更新予定日は多分8月12日になりますのでよろしくお願いします。
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