第577話

 ディーンと出会い、冒険者ギルドにいるジールの元へ送り届けてから翌日。


 コウ達はそろそろ何かしらの依頼を受けないと堕落した生活になってしまうと思い、危機感を感じたため、鉛の様に重い腰を上げ、朝早くから冒険者ギルドへ訪れていた。


「冒険者が多いですね〜」


「こういうのもなんだか久しぶりの感覚だな」


「キュ!」


 それにしてもサーラから依頼が増加したことによって冒険者も増えたという話は事前に聞いていたが、まさかここまで冒険者ギルドに以前よりも増して冒険者が訪れているとは思ってもいなかった。


 まぁそれだけ依頼や冒険者が増えたというのは、冒険者ギルド側からしたら収益も増え、良いことなのだろうが、コウとしては気軽に依頼を受けたい気持ちもあったりする。


「とりあえず何の依頼があるか見ないとな」


「ですね〜人の隙間を通り抜けるしかなさそうです〜」


 とりあえず掲示板の前まで向かわなければ依頼書が確認できないということで、人の隙間をコウ達は何とかしてすり抜けながら依頼書が貼られている掲示板へ向かうことにした。


 そして掲示板の前に何とか到着すると、そこには多くの依頼書が貼り出されており、他の冒険者達もどの依頼書を取るか腕を組みながら鋭い目で吟味をしていたりする。


「どれにしますか〜?」


「どれでも良いけどまずは身体を慣らしたいよな」


 そんなコウ達も他の冒険者同様にどの依頼書を取るか吟味していたりするのだが、依頼を受けるのは少し日が開いていたということで、出来ればそこまで難しくない依頼のが良いだろうか。


「これにしようかな」


「久しぶりに依頼を受けるのなら確かに丁度良いかもですね〜」


 ということで、貼り出されている数々の依頼書の中から1枚の依頼書を選んだのだが、その依頼の内容とは王都まで向かう商人の護衛というもので、Bランクのコウ達からしたらそこまで難しいような依頼ではないものだ。


 まぁ久しぶりに依頼を受けるのであれば、ライラの言う通り、丁度良い依頼といえるだろうか。


 ということで、コウ達はその依頼書を片手に持ちながら受付に向けて足を運ばせることにし、再び人の隙間を縫いながら通り抜けていく。


 そして人の隙間を通り抜け、今度は受付に視線を向けると、そこは長蛇の列と化しており、片手に持っている依頼書を処理してもらうにも、それなりに時間が掛かりそうだろうか。


 しかしそんな長蛇の列に並ばなければ、手に持っている依頼書の処理をしてもらうことが出来ないということで、コウ達も並んでいくことにした。


「次の方どうぞー...ってコウさん達じゃないですか!」


 暫くの間、ライラと雑談でもしながら時間を潰していると、自身達が受付をする番となり、一歩前に出ると、そこにいたのは昨日は休みでいなかったと思われるサーラがいつもの受付の椅子に座っていた。


「おはよう。元気そうだな」


「サーラさんおはようございます~」


「キュ!」


「皆さんおはようございますー!今日も元気ですよー!」


「じゃあ早速だけどこの依頼書の処理を頼む」


 お互いに挨拶も終わったということで、コウは受付の机の上に片手に持っていた依頼書を処理してもらうために差し出していく。


「あっ...そういえばギルドマスターからコウさん達に指名依頼が来てたんでした!」


 そんな机の上に差し出した依頼書をサーラは処理しようとしていたのだが、ふとギルドマスターであるジールからコウ達に指名依頼があったことを思い出したようで、依頼書を処理しようとする手をぴたりと止めた。


「指名依頼?」


「そうなんです。えっと...確かここに...」


 そしてサーラは机の引き出しをゴソゴソと漁って中から取り出したのは1枚の依頼書であり、目の前に差し出されることとなる。


 そのため、コウはどんな依頼内容なのか確認してみると、そこに書かれていたのは昨日この冒険者ギルドに連れてきたディーンについての依頼のようだ。


 内容についてはどうやらディーンを王都の冒険者ギルドまで一緒に向かって欲しいというものであり、また移動するために必要な御者と馬車は冒険者ギルド側で手配してくれるとも書かれてあった。


 ちなみに報酬について比べてみると、最初にコウが受けようとしていた商人の護衛依頼よりもギルドマスターであるジールからの指名依頼のが当然のように多くなっていたりする。


「もし詳しい話が聞きたいのであればギルドマスターに確認してほうがいいかもです!」


「あー...じゃあそうしようかな」


「ではいつもの部屋にギルドマスターはいますのでよろしくお願いします!」


 別にこの条件であれば依頼を受けてもいいとは思うのだが、とりあえず何故ディーンと共に王都へ一緒に向かって欲しいのか?ということについて詳しい話をジールに聞くため、コウ達はギルドマスター室へ向かうことにするのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


次回の更新予定日は7月26日になりますのでよろしくお願いします。

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