第385話

 部屋の一番奥ではイザベルの両親であるライエルとイザベラが仲睦まじく食事をしており、近づいてくるコウ達に気づいたのか片手を上げて挨拶をしてくる。


「やぁ久しぶりじゃないか!皆元気そうで何よりだ!」


「さっきぶりね。楽しんでくれているかしら?」


「いやまだ部屋に入ったばかりだ。招待してくれてありがとな」


「今日は誘って下さってありがとうございます〜!」


「お父様お母様ありがとうございます」


 コウ達はお礼を言いながら頭を下げると、ライエルとイザベラの2人はにっこりと優しげな顔で微笑みつつ、こちらを見ていた。


「あらあら挨拶なんていらないのに。早く料理を食べに行かないと冷めちゃうわよ?」


「イザベラの言う通り今日は気にせず楽しむと良い」


 どうやら挨拶とお礼は不要だったようで、イザベラに料理を食べに行けと背中を押されたため、コウ達は軽く会釈をすると、その場を後にすることにした。


 そして、早速コウ達は待ちに待った料理が並べられている机に向かうと、ビュッフェ形式だったため、近くに置いてあった皿を手にし、せっせと肉料理を中心に自分の食べる分とフェニの食べる分を皿の上に埋めていく。


 またイザベルやライラも机に並べられた様々な料理を選んでいるのだが、料理が多いため、どれにしようか悩んでいるらしく、選ぶのには時間がかかりそうであった。


「よし...こんなもんかな?フェニはこれで良いか?」


「キュ!」


 そのため、コウはある程度取り終わると、イザベル達を待たずに大部屋の端っこにある窓際へフェニと共に移動し、目立たないようこっそりと食べることにした。


 しかしどれもこれも時間が多少なりとも経っている筈だというのに白い湯気が立ち昇り、出来たてのようになっているため、熱を冷ましながらゆっくりと食べていく。


 そして窓際の縁に取皿を用意し、コウの手に持っている皿にある料理を別けると、頭の上に乗っていたフェニも小さな嘴を使って同じ様に食べ始めた。


「やっぱ貴族が食べてる肉は柔らかくて美味しいな」


「キュ!」


 そんな端っこにある窓際で満足そうに黙々と、皿に乗っている料理をフェニと共に食べていると、興味本位なのか貴族だと思われる綺羅びやかなドレスを着飾った女の子が寄ってくる。


「ん?誰だ?」


「わたくしはフェイマール伯爵家の三女メリスと申しますわ。珍しい魔物を引き連れておりますのでお話をお掛けさせて頂きましたの」


「俺はコウだ。こいつが相棒のフェニ」


「キュ!」


 どうやら目の前に立っているメリスと名乗った貴族の女の子は隣で肉料理を食べているフェニのことが気になったのか話しかけてきたようであり、自己紹介をされたのでコウも同じ様に自己紹介をしていく。


「家名がないということは平民の方ですの...?」


「平民...?まぁ平民なのか...?ただの冒険者だしまぁ平民か」


 一応、父であるハイドはクルスという名字のようなものがあったのだが、それが家名かどうかわからないため、コウはとりあえず自身のことをただの冒険者で平民としておくことにした。


 まぁ実際に自身の出生については話しづらいことでもあるし、誤魔化しておいたほうが良いだろうと思っての判断でもある。


「それは凄いですわね。この晩餐会に誘われる方は殆どが貴族若しくは偉業を成した方々なのですよ」


「へぇそうなんだ」


 そしてイザベル達が料理を取りに行っている間、話しかけてきたメリスという貴族の女の子と少しだけ会話していると、背中に何だかぞっとするような気配を感じ、振り返ってみると、そこには料理を乗せた皿を片手に冷たい目をしたイザベルとライラの2人が立っているのに気がついた。


「あっ...その...わたくしはお邪魔なようなのでこれで失礼致しますわ!」


 そんな2人の冷たい目に怯んだメリスはコウの側から離れるための言い訳をしながら、蜘蛛の子が散るかのように離れていってしまう。


「コウさん?今日は私達がいますよね?」


「他の子に目移りした駄目ですよ~?」


「はぁ...話しかけられたから話してただけなんだが...」


 他の女性貴族達が離れたのを確認すると、イザベルとライラは新しく持ってきた料理を片手にコウの左右を陣取って、チクチクと針をさされるように言われるが、コウは軽くため息をついて、どんな会話していたのか事情を説明していく。


「そうでしたか...すみません色々と勘違いしていました」


「も~紛らわしですね~」


「まぁ分かってくれたらないいや...って何だこの鳥?」


「キュ?」


「ピュイ?」


 そしてイザベルとライラに事情を説明し、なんとか理解してくれたので食事を再び再開しようとすると、フェニの隣に見知らぬ青い鳥がいることに気がつくのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は7月8日になりますのでよろしくお願いします。

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