第350話
昼食を終えた後のコウ達は小川で討伐したホーンラビットの血抜きをしたり、毛皮を剥いだりし、なんとかホーンラビットも解体終えたということで、依頼の達成報告をするため、ローランに向かってコウ達は広い草原を歩き出す。
「何だか重そうだな。収納の指輪の中に入れるか?」
「いえ!これから冒険者として活動していくのでこれくらい慣れないと!」
ルビィ達は解体したホーンラビットの肉や毛皮などを肩に担いで分担するように持っていた。
コウはその運搬が大変だろうと思い、収納の指輪に仕舞い込んで運搬ようか?と聞いてみるもあっさりと断られてしまった。
まぁルビィの言う通り、新人冒険者は収納の袋などの便利な魔道具は持つことが基本的にないので、多少なりとも大変なことが多く、逆にコウやライラが持つ、収納系の魔道具に最初から慣れてしまうのはあまり良くないのだろう。
そして暫くの間、ローランに向かって草原を歩いていると、コウ達の背後から何かが追い掛けてくるようなドタドタとした振動が地面を通して伝わってくるので、何だろうと全員は今まで通って来た道を振り返る。
振り返った先には草原と同じような草色をした毛質の狼が数頭程、こちらに向かって走ってきているではないか。
その魔物の正体とはメドゥウルフというDランクの魔物であり、主に草原で生息し、ホーンラビットが大好物だったりする。
そんな魔物が何故、コウ達に向かって走ってきているのかというと、ルビィ達が肩に担いでいる解体したホーンラビットが狙いだろうか。
「メドゥウルフですか~ホーンラビットの匂いにでも釣られてきちゃったんですかね~」
「ルビィ達には少し荷が重い相手か?」
「そうですね~Dランクの魔物ですし~私達が相手をしたほうが良さそうです~」
Dランクの魔物ということで、流石にルビィ達にとっては荷が重い相手となっている。
そのため、今回はコウ達が相手をした方が良いということで、メドゥウルフを迎え撃つために十字架のブレスレットに魔力を込めると、愛用しているサンクチュアリを構えた。
「あぁそうだ。そこを動くなよ?」
ルビィ達に動くなと指示をすると、コウは指先に水球を作り、真上に撃ち出し、破裂させて覆い被さるような半球状の膜を作り出す。
そしてそのまま凍らせることによって半球状の氷のドームが出来上がり、これで不意を突かれたとて、ルビィ達を守ることが出来る筈である。
「コウさん~ここは私に任せてください~」
「いいのか?」
「問題ないですよ~ルビィちゃん達とのんびりしていてください~」
どうやらライラが目の前に迫ってくるメドゥウルフを相手にしてくれるようなので、ここは任せることにしてルビィ達と共にライラの戦いを眺めることにした。
まぁトゥリッタもライラに対して本当に前衛を張れるような強い人物か疑問を抱いていたので、これはこれで実力を示すには丁度良い機会かもしれない。
「じゃあ行ってきますね~」
「あぁ気をつけてな」
そしてライラは軽く屈伸をすると、脚に力を込め、地面が隆起する程の力で蹴り、そのまま後ろから追い掛けてきたメドゥウルフ数頭に向かって一気に突っ込んでいってしまう。
「シスターさんってあんな動き出来るんですか...!?」
「凄く速い...」
そんな身軽に動くライラを見た2人は大きな口を開けて驚きながら目を丸くする。
シスターの格好をしているというのにあんな身軽に動いているのを
まぁ実際にはあんな身軽に動くシスターは中々いない訳であるのだが...。
「やっと"これ"を試す機会がきましたね〜」
そして一回り大きなメドゥウルフ達と対する前にライラは以前、レヴィエールという魔人から贈り物として貰った力である赤いオーラを上手いこと使いこなし、全身の衣服から手の指先まで薄く纏わせていく。
「ガゥ!」
そんな突然、突っ込んできた外敵であるライラに対してリーダー格と思われる一回り大きいメドゥウルフが好物であるホーンラビットの略奪を邪魔するなと言わんばかりに牙を剥き出し、襲い掛かった。
「危ないっ!」
それを見たルビィは噛み殺されてしまうと思ったのか、大きな声を上げるも、残念ながら想像していることは起きることはない。
「おぉ〜噛まれても全く痛く無いですね〜」
その一回り大きなメドゥウルフはライラが噛み付かれるのを防ぐように前に突き出した腕へ喰らい付いたのだが、顎に力をいれども皮膚や服に対して鋭利な牙が貫通する様子はない。
齧り付いた一回り大きなメドゥウルフは自慢の牙が通らないことに疑問を抱き、すぐに口を離そうとするも、時既に遅し。
「逃しませんよ〜っと〜!」
ライラは口を離されて逃げられる前に一回り大きなメドゥウルフの首へ手を回し、ヘッドロックの要領で捕まえると、一気に力を込めた。
するとボキボキとまるで骨が折れる様な音が周りに鳴り、一回り大きなメドゥウルフは白目を剥いてしまう。
そして締め付けていた腕の力を緩めると、そのまま地面へずるりと落ちながら倒れていく。
「筋力も上がってるんですかね〜?」
そんなリーダー格と思われる一回り大きなメドゥウルフがまさか倒されると思ってもいなかったのか、付いて来ていた他のメドゥウルフ達は逃げ出したい様で徐々にじりじりと後ろへ下がり出した。
きっと自身達では敵わない相手だと認識したのだろう。
「さてと〜...ってあれ〜?逃げられちゃいました〜?」
そしてライラが一歩前へ踏み出すと、メドゥウルフ達は一斉にその場から散り散りに逃げ出す様に駆け出し、広い草原の奥へ消えて行ってしまうのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m
次回の更新は4月29日になりますのでよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます