第147話
「っ...つかれたぁ~!」
綺麗にベッドメイキングされシワ1つもないシーツが敷かれたベッドの上に吸い込まれるように倒れると丸くなって寝ていたフェニがコウが倒れた反動で一瞬だが、宙へと浮き上がり「キュイ!」と驚くような小さな鳴き声が聞こえた。
隣の部屋はイザベルとライラの部屋で、そちらからはきゃいきゃいとした女子同士の話し声が聞こえてくるが疲れているコウにとっては些細なことであって気にならない。
何故、コウがこんなにも疲れているのかというとここ数日間デートという名の連れ回しを2人から受けたからである。
まず初日である1日目はライラとアルクの観光であった。
アルク自体はダンジョン都市として有名ではあるのだが、実はダンジョンから手に入る様々な物を販売や利用しているため観光としても有名である。
コウは元々アルクの観光を行きたかったためライラが調べ計画した観光スポットを巡るのは楽しかったのだ。
特にコウが凄いと思ったのは魔道具で作られた噴水のショーである。
その噴水のショーは1日に2回ほどしか公演していないらしいが時間が偶々合ったらしく見ることが出来て水で様々な形へと変化し舞い上がるショーは圧巻の一言だった。
ただ観光スポット巡りが終わり適当なお店で軽く食事を済ませると残ったのはお買い物タイムである。
普段、魔物達と戦うよりも長く辛い戦いだった。
最初は1軒か2軒ほどの店を立ち寄ってアクセサリーや服などの買い物をして時間は夕方頃となっていたので帰る雰囲気になっていたのだ。
しかし他の店を横切るたびにあの手この手と商人達が上手い話術でこちら側へ話しかけてくると「少しだけ覗いてきましょ〜」とライラは言い、吸い込まれる様に店の中へ入ってまた買い物が始まる。
結局帰った時間はそれなりに遅い時間であったのだが、ライラはかなり満足そうに隣の自室へ戻っていていた。
夕食に関しては今泊まっている宿は遅い時間帯でも食事を用意してくれたのが唯一の救いである。
そして2日目の朝。
アルクの街の観光は前日にライラと既にしているのでこの日はイザベルと一緒に丸一日を通しての買い物となった。
午前中は服などを見て回り試着などをしていて時折、イザベルから試着した服の感想などを求められたりするがコウにとってそこまで服に興味があるわけでもない。
ただ否定や適当な感想を言うと雰囲気が悪くなってしまうのも理解しているので肯定的なことやなるべく無い頭をフル回転させて気が利くような言葉を選んでいた。
そうするとイザベルは笑みを溢すのでそれなりに楽しんでもらえているのだろう。
昼の食事は意外にもイザベルが朝早くから宿の厨房を少しだけ借りて作ってきてくれた様で噴水がある広場の腰が掛けれる場所へ探し2人横になるように座る。
するとイザベルの腰にいつも身に着けている魔法の小袋から少し形の違う魔法のウエストバッグへと変わっており、中から昼の食事を取り出してくれた。
ポーチの中から取り出されたのは木で編み込まれたバスケットであり、入ったサンドイッチなどを見た時、コウは貴族の令嬢であるイザベルが料理出来るのか?と思っていた。
しかし実際に口へ入れてみると杞憂だっだようで意外にも美味しくついつい手が自然と料理へと伸び黙々と食べていると追加で取り出してくれていた。
その後は昨日のライラと同じ様に夜まで買い物を続けて夕食は手頃な店の中へと入っていき食事して宿へとゆっくり帰り現在に至るのだ。
「はぁ~明日にはこのアルクからローランに戻るのか...」
コウはベッドの上で仰向けになると目を瞑りながら呟くようにしみじみとこの長いようで短かった時間を思い出すと同時に意識はなくなって泥の様に眠るのであった...。
■
次の日の朝。
コンコンと部屋の扉から軽快に叩く音が鳴り響き、部屋の外からは宿屋の従業員である若い女性の声が聞こえてきてコウの意識は深い眠りから目が覚める。
「おはようございます。朝食をお持ちしました」
どうやら従業員の若い女性は朝食を持ってきてくれた様でコウは欠伸を噛み締めながらベッドから降りて部屋の扉を静かに開ける。
するとドアの前には従業員である若い女性が立っており、ペコリと頭を軽く下げて「失礼します」と言うと朝にしては小煩いガラガラと鳴るワゴンを押しながら部屋の中へと入ってきた。
ワゴンの上には湯気が出ている出来たての朝食が乗っており、その料理の美味しそうな匂いがふわりとコウの鼻を掠めると空腹なのにお腹は気がついたのかぐぅ~っと小さく鳴る。
そしてあらかたワゴンの上に乗っていた料理を部屋の机へと置き終わると「ごゆっくりどうぞ」と一言残すとそのまま空になったワゴンを押して部屋の外へと出ていく。
「今日の朝には馬車が来るって言ってたな」
コウは今日の予定を思い出しつつ、木の椅子に座ろうとするといつの間にかフェニは机の上にあった果物の盛り合わせを啄んでいたのでコウはくすりと笑うと引いていた木の椅子へと座りフェニとともにゆっくりと朝食を楽しむのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます