第111話

 レイジーベア...それが今コウ達の目の前に存在している熊の魔物の名前だ。


 冒険者ギルドが指定しているランクはBランクあり、性格は凶暴で自分より弱い魔物と判断したらその縄張りを荒らし追い出す性格となっている。


 見た目2~3mほどの大きさ、深い緑の毛皮を身にまとい口や手を見ると鋭く太い牙や爪が付いており、身体の中心部には小さな緑色の宝石のような欠片が付いていた。


 ただ見た目は遅そうなのにどうやってフォレストウルフのような素早い魔物を狩れたのかとコウは疑問に思うが、すぐにその疑問は解消されることとなる。


 レイジーベアは大きな咆哮の後に仁王立ちをすると身体の中心部にある緑色の宝石が輝き、コウ達に向かって鋭く太い爪が生えている手を振るう。


 するとレイジーベアから振るわれた腕から何か歪んだ透明なものが物凄い勢いでコウ達に向かって飛んでくるのが見えた。


「氷壁っ!」


 コウは身の危険を感じ自分達の前に分厚い氷壁を出すと、その歪んだ透明なものをが当たった瞬間にコウの出した分厚い氷壁へと大きな爪痕を残す。


「魔法を使えるのか!」


 そう...目の前にいるレイジーベアの特徴として身体の中心部に埋め込まれた宝石の色によって魔法を扱うことが出来るのだ。


 例えば今回のレイジーベアは緑色の宝石ということは風の魔法が使えるということになる。


 フォレストウルフ達も最初は群れで縄張りを荒らしてくるレイジーベアへ挑んだのだが、この風魔法によって蹴散らされてしまったのだろう。


「ライラ!スタンピードの戦いで使ったっていう遠距離攻撃は使えるか!?」


「大丈夫ですよ〜!ただあの熊さんが避けられないようにして下さい〜!」


「分かった!フェニ空高くまで上がって雷魔法を準備しろ!」


 レイジーベアはコウ達が防御に徹していると思っているのか近づいては来ず、腕を振るい次々と風魔法をこちらに飛ばし氷壁を破壊しようとしてくる。


 コウは追加の氷壁を出し、レイジーベアの魔法に耐えながらライラとフェニに指示出す。


 指示をされたライラは拳を握り魔力を込めると、握った拳の中から徐々に光が漏れ出ており、手袋に装飾品として付いている十字架も光の輝きが増していく。


 勿論、ライラの前には分厚い氷壁があるのでレイジーベアにこれからする攻撃は悟られないはずだろう。


 フェニはレイジーベアに気づかれない様に空高くまで飛んで行き、木の先端部で雷魔法を作り出しているようでコウの指示を待っているようだ。


 コウは別で作り出した水球をレイジーベアの後ろにある木の幹に向かって撃ち出す。


 撃ち出した水球は木の幹に当たると大きな音立て抉れるのと同時に水球は破裂し、下にいるレイジーベアへと水がかかりびしょ濡れになった。


「よし...フェニ!雷魔法をぶち当てろ!」


 空の上からバチバチと音を鳴らしながらレイジーベアへと飛んできて視界外の攻撃という事もあり、フェニが作り出した雷魔法をもろに喰らってしまう。


 するとコウが前もって濡らしていたお陰なのか痺れており、レイジーベアは身動きができず次々と飛んできていた風魔法はピタリと止まった。


「ライラ!」


「今回はほんの少し調整しましたよ~!」


 がらがらと音を立てながら崩れていく氷壁を前にライラは握った拳をレイジーベアに向かって手を開くと光り輝く光線が撃ち出される。


 レイジーベアはなんとかして避けようとするが、コウとフェニの魔法によって動けずその光輝く光線は一直線にレイジーベアの身体の中心部へと進み直撃すると貫通し、後ろにある木も一緒に薙ぎ倒していく。


 ライラから撃ち出された光線は徐々に細くなっていくと、レイジーベアはどしんっ!と地面を揺らしながら倒れた。


 レイジーベアの身体の中心にはぽっかりと穴が空いており、ドクドクと血は流れ続け地面を新鮮な血で真っ赤に染め上げていく。


 濃い血の匂いが周囲に充満し、咽返るような匂いだ。


 遠くから暫く倒れたレイジーベアを警戒しながら観察していると一切動かないので死んだと判断し、これ以上この綺麗な湖が汚れ無いようにコウは血で浸されていく地面をぴちゃぴちゃと歩き死んだレイジーベアへ近づくと収納の指輪の中へと回収していく。


 回収している最中に森の奥からフォレストウルフがちらりと姿を見せるので再び戦闘になると思ってコウは武器を構えると森の奥へ逃げていくのが見えた。


 もしかしたらフォレストウルフは血の匂いを感じ取り、今しがた死んだレイジーベアを確認しにきたのではないのだろうか?


 もしそうならば前まで縄張りとしていた森の奥へと帰っていくだろう。


「ふぅ...終わったしクルツ村に報告しに行くか」


「そうですね~なんだか疲れました~」


 スタンピードの時の戦いよりかは疲労感が無いだろうが、それでも皆は疲れてはいるようでフェニも同じくコウの肩に止まり目を瞑っていた。


 そしてコウ達はこの湖まで来た道を戻るように重い体を動かし、クルツ村へ脅威を排除したことを伝えるため再び最初に通ってきた獣道を歩き出すのであった...。



ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る