第102話
西門で防衛戦が開始する頃には、東門でも同じく大規模な防衛戦が始まっていた。
こちらの冒険者や聖騎士達を指揮しているのはライラとなっており、イザベルと同じく小さな黒い石に向かって声を出して指示をしていた。
既に投石機は使用し、今は弾の充填などの状態だ。
東門へと進軍して来ている魔物の多くはアンデット系つまりはスケルトンやグールなどの相手となっており、聖騎士達にとってはかなり相性の良い相手である。
「では~攻撃魔法と聖地作成をお願いします~!」
ライラの指示の通りに攻撃魔法を目の前のアンデットの集団へと打ち込んでいき、動きが鈍いためか的あてゲームが如く簡単に当たり殲滅していく。
そして攻撃魔法を行っていない聖騎士達は己の持っている盾を地面に突き刺すように置くと、そこから透明な結界のようなものがどんどんと広がっていき、東門の周囲を包み込む。
これがライラの言っていた聖地作成というものなのだろうか?
透明な結界に包まれた周囲の地面からは小さな光の欠片ようなものが煌めき出ては空へと昇っていく。
アンデットの集団は聖騎士達が出した透明な結界へと、1体のグールが透明な結界に触れてしまう。
すると急に発火しグールの身体は燃え上がって苦しんでいる。
そして連鎖するようにグールの身体から別のグールやスケルトン達に燃え移り、どんどん燃え広がっていく。
「おぉ~中々に燃えていきますね~。でもこのままじゃあジリ貧なので親玉を倒さないといけないですね~」
アンデット達は燃え広がって行く炎に包まれ、数を減らしていくが何故か地面から追加の補充としてグールやスケルトンが湯水のように湧き出てくる。
この現象はもしかしたら召喚魔法に近いものだろう。
そしてアンデット達の中心部分の空間に亀裂が入りだし、黒い空間が広がりっていくのが見える。
ライラはあの黒い空間を何処かで見たことがあり、それはつい最近の出来事の事を思い出すとあの黒い空間から出てくる魔物はすぐに予想できた。
黒い空間から白骨化した大きな手が出てきており、無理やり空間を両手で広げるとずるりと外に出て、その正体を表す。
やはり黒い空間から出てきたのはリッチだった。
前回倒したリッチよりも服についている装飾品が多く禍々しい雰囲気であり、もしかしたら上位種の可能性が高い。
「あれが親玉ですね~流石に聖騎士達では分が悪そうなので私が行きます~」
ライラは透明な結界で包まれている範囲から外に出て中心部にいるリッチを倒すべく、黒い皮で出来た手袋を嵌めながらゆっくりと歩き中心部へと向う。
当然、透明な結界の外に出たため、まるでゾンビ映画のようにアンデット達は襲いかかってくるがライラは手袋に付いている十字架の装飾品を輝かせながら拳を振るい次々と倒していく。
「数が多いですね~じゃあこれならどうでしょうか~!」
地面へと拳を殴りつけるとアンドット達の足元の地面から光の槍のようなものが飛び出し、アンデット達はまとめて貫かれていく。
今の攻撃のお陰で中心部へと道が開いたので再び足を進めるとリッチは人の大きさぐらいの黒い頭蓋を5個作り出しライラに向けて放つ。
この攻撃は前回リッチとの戦いで覚えており、飛んでくる頭蓋に対して衝撃などを与えると爆発することも記憶していた。
「前見た攻撃だからもう効かないですよ~」
そんなことを言いつつライラは地面にある小石をさっと拾うと飛んでくる頭蓋に向かって的あてゲームの感覚で正確に当てていく。
すると頭蓋は小石が当たった衝撃で爆発していき、目の前は黒煙で包まれた。
リッチは視界が晴れるのを待ちつつ、頭蓋では簡単に対処されてしまうと思ったのか今度は黒い玉を周囲へと生成する。
その黒い玉の表面は黒いモヤのようなものが揺らいでおり、黒煙が風に流され視界が晴れていくと同時にライラへ先程の頭蓋と同じ様に飛ばす。
速度はそこまで早くはないのでライラは一応避ける準備をしつつ、まだ手に残っている小石を黒い玉に向かって投げると小石は黒い玉の中に飲まれていってしまった。
「なるほど~小石では対処はできないのですか~」
黒い玉を回避するとそのまま後ろにある結界へと直撃してしまい一部分に大きな穴が開くと地面から出ていた光の欠片が無くなり、その開いた穴からどんどんとアンデット達は流れ込んでいく。
冒険者達は城門を守るべく流れ込んできたアンデット達との戦いが始まった。
小石では対処できない様子を見てリッチはかたかたと顎を動かし自分が優位だと思い笑っているようだ。
「もしかして~私に他の遠距離攻撃ができなと思っています~?」
ライラは拳を握しめてリッチへと狙いを定めると、握りしめた拳の中から光が漏れ煌めいていく。
リッチも流石に何かしらの危機を感じ取ったのか巨大な黒い槍を自分の頭上へ生成するとライラへと撃ち出す。
黒い槍は地面を刳り、その直線状にいる自身が召喚したアンデット達を巻き込みながらライラへと向かって行くのでかなり威力が高いのが見て分かる。
もし避けてしまえば後ろにある城門や結界は壊れてしまい更にアンデット達は流れ込んでいってしまうだろう。
その場から避けようとしないライラを見てリッチはほくそ笑みながら見ており、勝ちを確信していた。
「準備ができましたので行きますね~」
握りしめていた拳を狙い定めていたリッチに向かって開くと光り輝く光線が撃ち出された。
その光線は黒い槍と衝突するが黒い槍の全てをそのまま飲み込みかき消す。
リッチは黒い槍がかき消されたのを見てすぐに自分の前にアンデット達を召喚し盾にしていくが威力の高い黒い槍でも止まらなかった光線が止まるわけもなく、リッチも光りの輝きの中へと飲み込まれる。
そして一筋の光となっていき、光線の通った場所には何も残っていない。
「大勝利です~!」
周囲の召喚したアンデット達は召喚主がいなくなった為か、次々と崩れていき土へと還っていくのを冒険者達は見て東門の防衛が成功したことにより、歓声があがっていく。
「ふぅ~少しだけ休憩しますか~コウさん達に怪我がないと良いのですが...」
リッチを倒す際に使用した光線の反動で疲れたのかライラは地べたに座りゆっくりとしつつ、コウ達に怪我がないようにと祈るのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
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