第97話

 つい最近、ローランの街の周囲では異変が起きていた。


 その異変とは魔物が減少しているということであり、これ以上魔物が減少していくと食材や素材などが減ってしまい市民などの生活に多大なる影響があるのだ。


 そこでローランの冒険者ギルドは魔物が減少していく原因を探るべく調査隊を組むことにした。


 調査隊はCランク以上の経験豊富な冒険者がギルマスターの判断で選ばれているらしい。


「なるほど...そんなことになってたのか」


「そうなんですよ~っと...依頼の受付完了ですね」


 翌日、依頼を受けるため早朝に冒険者ギルドへ顔を出していたコウは受付で依頼を受けながらサーラから昨日の午後以降...つまりはコウがルーカスと商談をしている際に決まったことを知らされていた。


 ちなみに選ばれた冒険者はもう既にギルドマスターから通達されているらしく、コウはCランクになったばかりということなので選ばれなかったようだ。


 まぁコウとしては聞く限り少しめんどくさそうなものだと思っていたため選ばれなくてよかったと内心は思っているのだが...。


「じゃあ、行ってくる」


「はい!では気をつけて依頼の方をお願いします!」


 少し雑談をしたせいか後ろに並んでいる冒険者達から早くしろなどの圧を感じるため話を切り上げ、受付から離れて今日受けた依頼をこなすべくローランの街の外へ出るための門へと向かう。


 門に到着するとささっと受付を済ませローランの街の外へと出ると軽く身体を伸ばし少しだけ解す。


 今日受けた依頼は先日受けた依頼と同じのトレントの討伐であり、トレントの生息している場所はわかっているため依頼を早く終わらせるため生息している場所まで走って移動するのであった。


「ふぅ...これで10体目か」


 トレントの生息している森へと来るとコウはひたすらこの前のように氷のフェニを作って飛ばしトレントを探して倒していた。


 倒した数は10体となっていて時間帯としては太陽が真上にあるため昼頃ということが推測できるが前回よりもトレントを効率よくは倒せていなかった。


 つい先日よりもトレントの数も減っているらしく思った以上に速いペースで魔物は減少しているようだ。


 もしこの状態が続いてしまうのならばコウとしてもお金が稼げなくなり、生活していくのが難しくなってしまうのは少々困ってしまう。


「しょうが無い...もう少し森の奥深くまで進むか」


 あまり森の奥深くまで行き過ぎると隣接している死の森へと踏み込む可能性があり危険なのだが、利益を得るためにはリスクはつきものでありしょうが無いと割り切ってコウは森の中を進む。


 暫く森の中を氷のフェニで囮のように先行させつつ進むと少しだがトレントの数も増え、それなりの数は倒せていた。


「まぁまぁ倒せたな。そろそろ帰るか」


 ただ木の葉が邪魔をして日の光は入ってこないためか、地面がジメジメとして薄暗くこれ以上進むと危険だと判断しコウは来た道を戻るとする。


 勿論、森の深くまで入ると迷う可能性が高いと思ったためコウは氷槍を等間隔に地面へと設置していたため迷うこと無く帰ることは出来るだろう。


 そして振り返ろうとすると木の隙間から近くに湖があるのが見えた。


 その湖は何故か光っており中心部には何かがあるようだ。


「なんだ?」


 ローランへと帰ろうと思ったが少し気になったため足を止めて確認することにしコウは湖へと近づいていく。


 そして湖のほとりに到着すると中心部には巨大な魔石のような物が浮いており、湖のほとりではトレントやフォレストウルフなどの魔物が光の粒子となって魔石へと吸収されていくのが見えた。


そして巨大な魔石のような物は光の粒子を吸収すると光り輝き薄暗い周囲を照らし巨大な魔石の中には光る度に謎の大きな魔物のようなものがシルエットとして浮かび上がる。


「どういうことだ...?もしかしてあれが原因か?」


「キュイ...」


 もしかしたら魔物の少なさの原因はあれかもしれないとコウは顎に手を置き考えていると肩に乗っているフェニから元気のなさそうな声が聞こえてくる。


 フェニを見ると普段よりもかなり辛そうにしており、コウはすぐに湖から距離を取って帰り道の目印の場所へ移動すると辛そうにしていたフェニは先程よりは元気を取り戻していた。


「すまん大丈夫か?軽率な行動だった」


「キュイ!」


 大丈夫だ!というようにフェニは返事をしてくれはしたがコウとしてはかなり申し訳ないと思っている。


 もしあの場にずっと留まって考えていたら大切な相棒のフェニはトレントと同様に光の粒子となって中心部にある大きな魔石のようなものに吸収されていたかも知れないのだ。


「とりあえずはギルドに戻って報告だな。あれは放置していたら不味い気がする」


 コウの勘のようなものではあの巨大なシルエットが何かわからないが放置していたら危険だと警鐘がガンガンと鳴らしている。


 もしあれが魔物の減少についての原因なら早めに報告しておくのが良いだろうと思い急いで帰るための目印を辿りながらローランの街へと帰るのであった...。





ここまで見てくださってありがとうございます!


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