第96話
「で...あの魔道具の靴はいくらぐらいで売れそうか?」
ソファに座るとすぐに魔道具の靴の話しをルーカスから切り出されたのでコウも売れるかどうかを早速、聞き返す。
まぁコウとしては暗殺ギルドの2人組から貰う際の反応から十中八九売れると思っているので特に心配はしていなかったのだが売値は気になっていた。
「そうですねぇ...2足とも売ってくださるのなら合計金貨75枚はどうでしょうか?」
売値が金貨75枚という事を聞きコウはまさかここまで高く売れるとは思っていなかったので「まじか」と小さく声を漏らしてしまう。
簡単に計算すれば1足あたり金貨37枚と銀貨5枚になり、今まで魔物を倒してきた収入と同じぐらい貰えるのだ。
「おぉ、なかなか良い値段で売れるな。やっぱ良いやつだったのか?」
「あれは中々に良いものです!少量の魔力を流すだけで消音にサイズ変更など魔道具としては一級品となっておりました!」
少し興奮気味に久々に良い魔道具を入荷できそうですなどとルーカスは言いながら鑑定した靴の情報を教えてくれる。
そしてルーカスの話を聞く限り少しの魔力を流せば消音の他にもサイズ変更が自由自在にできるらしいのでコウとしては1足だけ残して自分で使っても良いのでは?と少しだけ考えが変わった。
「なるほどな。じゃあ1足だけ売ってもいいか?」
「ふむぅ...1足だけですか。でしたら金貨35枚でどうでしょうか?」
少しだけ売値は下がるが金貨35枚ともなれば十分だろうし、今後どこかしらで使う時が来るかも知れないので1足だけでも残しておくのが吉だろう。
「金貨35枚で問題ないかな」
「では交渉成立でしょうか。良い魔道具の提供感謝いたします」
お互いに交渉成立としての握手を交わした後にルーカスが机の隅においてあったベルを振り鳴らす。
すると店員がすぐに駆けつけてルーカスが事情を説明すると預けていた魔道具の靴1足とカジノチップのように積まれた金貨がコウの座っている目の前の机の上に置かれた。
置かれたものを全て回収すると座っていたソファからよいしょとオジサン臭いセリフを言いつつ立ち上がる。
ルーカスに部屋のドアを開けてもらうとそのまま混雑している店の中を通り外に出た。
「今日はありがとうな」
「いえいえ!こちらこそ良いものが入荷できましたので感謝でございます!」
「じゃあ、また良さげな魔道具が手に入ったら売りに来るとするよ」
「また楽しみにさせて頂きます」
別れる前に店の入り口で軽く雑談をした後、隣りに立っている小鳥の止り木へ帰ろうとすると肩に乗っているフェニに頬を突かれ何だと思いフェニを見ると少しだけ不機嫌な様子だ。
何かやったけ?と思いつつ記憶を掘り返すと1つのことを思い出す。
それは少し前というか闘技大会の時にフェニを放置していた際に川魚を取りに行くという約束である。
最近は忙しくてコウはすっかり忘れていたのだがフェニはまだ覚えていたようだ。
「あぁ~そうだったな。どうせ今日は何もないし川魚を取りに行くか」
「キュイキュイ!」
コウは少し遅れたがフェニとの約束を果たすべくローランの外へと出るために門へと向う。
■
「ふぅ...前来たのはここだっけ?」
「キュイ!」
目の前にはそれなりの大きさの川が流れており、水の透明度はかなり高く澄んでいる。
川の中には魚が泳いでいて天敵もいないのか警戒心が薄いのか逃げようともしていない。
といっても流石に素手で取れるようなものでもないため魔法を使って魚を捕ることにし水に手を少し入れて魔力を流し川の水を支配していく。
「こんなものかな?」
そしてコウは魚の周囲の水を空中に持ち上げると空浮かぶ丸い水槽の中に5匹ほど魚が入っているのが見え、いとも容易く魚をとることに成功する。
そのままコウ達のいる場所まで移動させ地面に置くと周囲は水浸しになるが魚はピチピチと跳ねながら飛び回っていた。
昼飯は食べたがルーカスとの交渉やここまでの移動などを含めると今の時間はおやつの時間だろうか。
おやつにしては中々にボリューミーなものであるのだがそこは気にしてはいけない。
前回と同様に魚の内蔵や血抜きの処理をすると効率の悪い火の魔法を使用しフェニが集めてきた乾いた木に点火していく。
川魚の処理はもう終わっているので火がある程度まで大きくなると綺麗にした木へ川魚を刺して収納の指輪の中にある塩を振りかけ焼けるのを待つ。
暫く待つとふわりと魚の焼ける匂いが鼻の奥をくすぐり食欲を誘い唾液が口の中を満たしていく。
「そろそろかな?」
コウは焼けている川魚を用意した木の皿の上に乗せフェニと自分用に取り分けると腹の部分から思いっきり齧り付く。
内臓は取り除いているため泥臭さはなく身が甘くホクホクとしていてかなり美味しい。
フェニも久々に食べる魚を夢中に食べており、当分は機嫌も悪くはならないだろう。
1人と1匹は満足いくまで魚を食べ後片付けをした後にのんびりと小鳥の止り木へと帰ったのだが、満足いくまで魚を食べたせいか宿の夕食を食べきるのがきつく少し後悔するのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星をくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
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