第72話
今回、ジールから言い渡された試験内容は聖都シュレアという場所へと1つの木箱を運ぶというものであり、簡単に言えば荷物運びである。
コウは荷運びの依頼などを受けたことがないので試験としては丁度良いかも知れない。
「そういえば、その聖都シュレアとかいう場所は何処にあるんだ?」
ハイドから王都までの範囲までは教育されているがそれ以外の土地の名前や場所などは知らないためジールへと聞く。
「あぁ、場所なんだが王都を超えて西へ2日程馬車で走れば着くはずだ」
普通の冒険者なら保存食やら野宿に必要なものなどが必要になったりするのだが、コウは収納の指輪の中へ食料やテントなどを入れて行けば軽い旅行程度のものとなってしまうだろう。
「なるほど、大体場所は理解した。あとは教会に持っていくといっても教会は1つだけなのか?」
聖都シュレアの場所はある程度把握できたため次に木箱を持っていく教会について質問する。
「聖都シュレアにある教会のような建物は1つだけだ。その教会は街の中心部に構えてるからわかりやすいだろう」
どうやら教会は街の中心部に1つだけ立っているようで聖都という名の通り宗教の街のようだ。
ある程度、聖都シュレアの情報をジールから聞くとコウは机の上に置いてある木箱を収納の指輪の中へと入れジールに挨拶をした後に旅立つ準備をするため部屋を出る。
「あっコウさん。ギルドマスターと何のお話をされていたんですか?」
ギルドマスターの部屋を出て受付の横を通り過ぎようとすると書類整理に戻っていたサーラに声を掛けられた。
「あぁ、Cランクへの試験を受けさせてくれるという話だったよ」
「へぇ〜Cランクに...って!本当ですか!?」
書類整理をしていたサーラの手が止まり椅子から立ち上がって驚いた表情をする。
「嘘ついてどうするんだよ...」
「それもそうですね...。それにしてもCランクの試験をその歳で受けている人はあまりいないんですよ?」
コウの年齢でCランクの試験を受ける者はそうはいない。
寧ろDランクの試験で止まる者が多いだろうか。
もし、このままCランクまでコウはランクを上げていけばハイドの言っていた通り冒険者としての才能があるという事となる。
まぁ現状コウが目指しているランクはBランクなのでそこまで行けば天才と呼ばれるものになるだろうか。
「そういう訳だからまたな」
コウは数日会えなくなるであろうサーラにも挨拶をして冒険者ギルドの扉に手を掛けた。
すると後ろから「気をつけて下さいね!」とサーラの声が聞こえてきたので適当に手で合図し、そのまま冒険者ギルドを出るとコウは屋台へと寄り道する。
勿論、寄り道の理由は聖都シュレアへ行くまでの食料を収納の指輪の中へと入れ快適な旅にするためだ。
「いらっしゃい坊っちゃん!うちの串焼きは2本で銅貨1枚!安くてうまいよ!」
「じゃあ悪いけど30本頼む」
店主もまさか30本も串を注文されるとは思っていなかったのか急いで焼いていき、暫く店の近くで待つとニコニコ笑顔の店主が串焼きを紙のようなもので包みこちらに手渡してくるのでコウもお金を払う。
「ありがとな坊っちゃん!」
コウは串焼きを買った後に手当たり次第、他の屋台に寄っては注文し収納の指輪の中へ入れていく。
屋台側からしたらかなりの上客だろう。
ただ聖都シュレアへは王都から2日、3日の旅なのでそこまで食料を買い込む必要は無いのだが...。
「さて...準備も終わったし行くか!」
聖都シュレアへ向かうための準備も終わったのでコウはフェニと共に再び王都へと向かうべくローランの門へと向かう。
時間帯もまだ昼のためか王都へ行くための馬車は多く門の外に待機しており、ふと見知った顔の御者が待機しているのが見えた。
その見知った顔の御者はクルツ村へ女子供達を送る際に乗せてくれた者であったのでコウは門の手続きを軽く済ませて見知った顔の御者の馬車に近づき話しかける。
「この馬車は王都に行くか?」
「おう...ってなんだクルツの英雄坊主じゃねぇか」
荷台へ荷物を載せている御者に話しかけるとコウの顔を見るないなやそんな事を言いだす。
「なんだクルツの英雄坊主って...」
「坊主はクルツ村で色々やらかしたろ?それが噂になってんだよ」
確かにコウはクルツ村でワイルドボアを倒したり盗賊に売り飛ばされそうになった女子供を助けたりした。
そして御者の話を聞く限りクルツ村に立ち寄った旅人や商人はクルツ村の人達から話を聞きそれが更に噂になっているらしい。
「あいつら...」
コウは頭を抱えるが時既に遅し...人の噂も七十五日とも言うしコウはため息をつくと諦めることにし考えるのをやめる。
「ははっ!まぁいいじゃねぇか悪い噂じゃねぇし!ほら、王都に行くんだろ?」
笑う御者に馬車へ乗ることを促されコウはお金を払い乗り込んでいくと馬車の中は前回と同様で広く快適なものとなっていた。
「じゃあ王都に行くぞ~」
他に馬車に乗るような者も周りにはいないようなので御者は掛け声とともに2匹の馬へ鞭を打つとガラガラと車輪は回り音を鳴らしながら王都へと向かうのであった。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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