第70話
闘技大会の翌日、コウとフェニは王都からローランへと帰る前に白薔薇騎士団が拠点としている屋敷へと寄り道していた。
何故、寄り道をしていたかというとCランクへ上がるための推薦状を貰う為なのとダンジョンにいつ行くかと言う話をするためなのだ。
屋敷の門の前に着くといつもの門兵が警備しているのが見えたので声を掛ける。
「あぁ君か、団長にまた用があるのかい?案内するよ」
既にコウの顔は門兵に覚えられており、常連のような感じになっていたため敷地内にすんなりと入れた。
また敷地内に入ると最初は他の団員から色々な目で見られていたのだが、今となってはコウが敷地内に入ってくるのに慣れてしまったのか全く気にされていないようだ。
まぁコウの見た目は年若い美少年なので無害認定でもされているのだろうか。
イザベルの部屋の前に到着すると門兵がドアを軽くノックしコウが来た事を説明すると部屋の中から「ちょっとだけ待ってて下さい!」と声が聞こえたのちバタバタと部屋の中が騒がしくなる。
暫く待つと先程までバタバタしていた部屋が静かになると中から「お待たせしました!どうぞ」と声が聞こえコウは部屋の中へと入っていく。
前回は書類で山盛りだったイザベルの机はすっきりしており、小綺麗な部屋へと変わっていた。
「急に押しかけて悪いな。で、報酬の件なんだけど...」
「でもお互いまだ知らないこともあると思いますのでまずは友達から...」
コウはCランクへの推薦状を最初に貰おうと思い話を切りだしたのだが、イザベルと話が食い違っているようだ。
勿論、イザベルの想像していることはあの本の事なのだが...。
「ん...?何を勘違いしているのか分からないけどCランクに推薦してくれるんだろ...?」
イザベルも自身とコウの話の食い違いに気づいたのかハッとした表情となり、すぐにコウの話しへと切り替えた。
「す、すみません!最初にそちらの報酬ですね!」
そう言うとイザベルのは机にある引き出しから1枚の白紙の紙を机の上に出しスラスラと羽ペンで文字を書いていくと最後にサインを書き足して三つ折りにし、綺麗な封筒の中に入れ封をする。
「こちらが推薦状になりますね。ローランの冒険者ギルドに渡せばCランク試験を受けれると思います」
イザベルは席を立つとコウへ近くに寄り、今しがた書いた推薦状を入れた封筒を手渡してきた。
Cランクとは冒険者としては一人前として扱われるものであるため試験は前回よりも厳しいものになると予想ができる。
「ありがとうな。これで目指してるBランクに一歩近づいた」
コウが目指しているBランクにさえなってしまえば街へ入る際にあの長蛇の列へと並ばなくて済むようになるのだ。
とはいえまずはCランクにならなければいけないのだが...。
「いえいえ!私も結婚しなくても良くなりましたのでとっても感謝しているんですよ?」
イザベルの話を聞くとあの後、シスは闘技場の出来事が親に知られアードルフ家の人間として相応しくないということで勘当されたようだ。
しかしアードルフ家は元々黒い噂があった貴族であるためか更に周りの目は厳しくなって立場も怪しい。
また既に勘当されたシスの消息はわかっていないらしく見た目はそれなりの坊ちゃんなので何処かの盗賊に奴隷として売り飛ばされたか魔物に食われたかだろう。
「イザベルからの依頼だしな。それじゃあ2つ目の報酬は...」
コウは2つ目の優勝した報酬のダンジョンへと一緒に行くという話を切り出すとイザベルは少しソワソワしだす。
「えぇっと!先程も言ったのですが友達から始めるというのは...?」
「イザベルが行きたくないなら別に...フェニの大きさを変化させる魔道具とかを探したいだけだし」
コウの言葉を聞くと自分の想像していた色恋沙汰ではないことを知りもしかしたら勘違いしていたのでは?とイザベルは思い1つの質問をコウへとする。
「その...コウさんつかぬことを伺いますが"永遠のダンジョン"という本はご存知ですか?」
「いや全く知らないけど...それがどうしたんだ?」
勿論、コウは死の森から出てきた田舎者であり、そんな本を知っているはずもない。
コウの反応を見ると自身が盛大に勘違いをしていたといことに気づくが偶然とはいえコウから出た愛の言葉が嬉しかったというのもイザベルの胸の中にはあった。
「そうですか...まぁちょっと嬉しかったのは事実なんですけどね...」
目の前で落ち込んでいるイザベルを見てコウは訳のわからないという表情をする。
「すみません、取り乱してしまいました。ダンジョンについてはまた行けるようになりましたら手紙を送るという形でいいでしょうか?」
「あぁそれで大丈夫だ。じゃあ用も済んだしそろそろ帰るよ」
じゃあと手を軽く上げて挨拶をした後、白薔薇騎士団の屋敷を出る。
こうしてイザベルとダンジョンへ行くという約束とCランクへ上がるための推薦状を貰いコウはローランへと帰るのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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