第68話
決勝戦の合図とともにお互い前へ突撃するように前進しお互いの武器をぶつけ合う。
武器同士が何度もぶつかるたびに火花のようなものが散り、お互いに力は拮抗しているように見えるがシスのレイピアのが小回りが利くためコウは少しずつシスのレイピアを被弾していた。
何度かお互いに打ち合ったのちにコウは下から救い上げるようにサンクチュアリを振るう。
サンクチュアリは武器としては長いため地面をがりがりと削りながらシスへと向かうがシスは向かってくるサンクチュアリにレイピアを突き出すとピタリと動きが止まってしまった。
コウはサンクチュアリを受け止められた瞬間に動きを切り替えシスの腹に目掛けて蹴りを放つと吸い込まれるように蹴りが入ってシスは数mほど吹き飛ぶ。
「き...君には騎士道精神が無いね」
体勢を立て直し腹を抑え蹴られた部分の痛みに耐えるとシスはコウに向かって文句を垂れる。
「勝てばいいんだよ、勝てばな」
コウの戦闘スタイルはまさに蹴りや拳...飛び道具など冒険者の使えるものがあるなら何でも使うといった何でもありの戦い方なのだ。
騎士のように剣や槍のみを使い、正々堂々戦うわけでもないし型に囚われているわけでもない。
使えるものがあるならば使い勝利をもぎ取る...それがコウの戦い方であった。
シスとしては今まで貴族として多くの騎士と手合わせし戦ってきたが冒険者のような荒くれ者を相手することはあまり経験が無くコウの相手はしづらいだろう。
「でも...勝つのは僕だよ!」
蹴られた部分の痛みが引いたのかシスはこちらに向かって走り連続でレイピアを突き出す。
シスこそ伊達に決勝戦まで残っているわけでもなく実力は確かなのだ。
流石のコウも全ての突きに対処できるわけもなく被弾してしまう。
「そろそろかな?」
シスがそう言うとレイピアに傷をつけられた部分に変化が起こる。
そこまで大きくなかった傷口が先程より開いており、血が流れていくのだ。
「この武器は
シスはレイピアの刃の部分をなぞるように触りレイピアの能力をコウへと伝える。
サンクチュアリと打ち合える時点でただのレイピアだとは思っていなかったがまさかその様な能力があるとは思っていなかった。
そしてコウは多くの突き攻撃を被弾していたためコウの体からは血が至るところから流れ出す。
「舐めるなよ...」
コウは唸るように呟くと水球を自身の頭上に作り出すとそれを破裂させて自身に水を被る。
被ると同時にコウは血で濡れていた身体をを洗い流し傷口を凍らすとこれ以上、血が流れないようにしていく。
「ははっ!そんな事しても僕のスピードに追いつけないなら傷口なんていくらでも付けれるんだよ!」
そんな事を言いながらシスは再びコウの身体に傷を付けようと突きを繰り出そうとする。
「ふぅ...これ以上はあまり時間を掛けたくないから勝負を決めさせてもらうぞ」
コウはサンクチュアリを横に振るうと同時にサンクチュアリに更に魔力を流すと先程よりも更に早い速度と力で横に振られ突き出してきたレイピアを弾き返す。
「なっ――!」
シスは何故自分のレイピアが弾き返されたのかわからないようで口を開き唖然とする。
「悪いな切り札ってものは最後に使うもんだ!」
コウのサンクチュアリの3つの刃の真ん中には穴が空いており、その穴から水が少し溢れているのが見えた。
もう一度コウはシスに向かって縦に振るうとサンクチュアリの穴の部分から水が一気に噴射し武器の振るう速度を上げているのがわかる。
勿論、速さではシスと拮抗をしていたのだが今となってはコウのが武器を振るう速度が早くシスは対応しようと必死にコウの振るうサンクチュアリを捌いていく。
シスはコウの猛攻を捌きながら少しでも反撃できるような隙きを探しているとチャンスはすぐに訪れた。
「見つけた!僕の勝ちだ!」
コウの猛攻を捌ききりサンクチュアリの横薙ぎ一閃を避けきるとシスはコウの腹に目掛けてレイピアを突き出す。
「甘いな。そんな隙きを俺が見せると思うか?」
コウは一言言い残すと振り切ったサンクチュアリが逆の方向へと水を噴射し武器の軌道を変える。
「ぐっ―――!」
シスは既にコウへ攻撃する体勢を取っていたため避けきることが出来ないので軌道が変わったサンクチュアリの刃のない部分をまともに喰うとゴキッ!と骨が折れたような鈍い音が会場内に響き渡る。
そしてシスはそのまま会場の壁まで吹き飛ばされると激突しシスを見るとレイピアを持っていた腕は逆の方向へと曲がりシス本人は気絶しているのが見えた。
決勝戦の決着―――。
勝負は一瞬の出来事であり、会場は一瞬だけ静まり返るがすぐに優勝者が決まったことがわかると歓声が上がり盛り上がる。
「決勝戦!勝者コウ!」
こうしてコウは決勝戦を制しアルトマード王国の闘技大会の優勝者が決定するのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m
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