第58話

 オーク討伐の戦いが終わり夜が明け朝日が照らし周囲はオークの死骸が散乱しており、冒険者達はオークから素材や討伐証明部分を剥ぎ取ったりしていた。


 勿論、自分が倒したオークがどれかわかるわけでも無いので報酬が均等になるように分配はされているみたいではある。


 コウも多くのオークを倒してはいるが分配されたのは数体であったが女冒険者を助けた際に倒したオークの分もあるので他の冒険者よりは今回実入りは良いだろう。


 別にコウとしてはそこまで報酬の分配は気にしてはいないが中には自分の報酬が少ないと小さな声で愚痴る者もいる。


 ただあまり大きな声でその様な愚痴を言えないのにも理由があり、それはAランクの冒険者がオークの分配していたからであった。


 そのAランクの男はあの上位種のオークを一太刀で斬り殺した者だ。


 見た目と言えば金髪獅子の様な髪型、筋骨隆々な肉体であるが上位種のオークの一撃を軽々と受け止めたお前は本当に人間なのだろうか?とコウは疑問に思う。


「まぁ、一件落着だな」


 コウが木にもたれ座りオークの戦いからの疲れを癒していると先程まで中央でオークの死骸を分配していたAランクの男がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。


「お前さんが新人の中で期待されてる坊主だな?」


「坊主じゃない。コウだ」


 コウは坊主と言われムッとした顔で言い返す。


「ガハハハハ!そうかすまんかった!コウだな気に入った!俺の名前はマルクという!よろしくな!」


 ムッとした顔のコウを見て笑いながら目の前の男は自己紹介をしてきた。


 男の名前はマルクというらしく、ゆっくり休んでいたコウの背中を握手代わりにバンバン叩いてきた。


「いてぇって!マルクさん!あんた本当になんなんだ!」


 流石のコウも上位種のオークを一撃で倒すような人間で自身よりも実力のある年上の先輩冒険者とには一応礼儀として"さん"付けはする。


 というか"さん"付けをしないと何だか怖い。


「いやぁ受付の嬢ちゃんにな早く助けに行ってくれと言われてなぁ!初めてこんな若くて強い子を見たぞ!」


 どうやら当初はBランクの冒険者をオーク討伐隊に編成していたのだが、サーラが無理を言ってAランクであるマルクを討伐隊の中にねじ込んだらしい。


 とはいえ上位種のオークもいた為、マルクをねじ込んだのは正解だっただろう。


 そしてサーラはコウがオークと戦うこと知っていたのは助けた女冒険者がギルドで報告する際にコウの特徴を伝えたからと予想ができる。


「そうかサーラがなぁ...帰ったら何言われるか分からないし、上位種のオークより怖そうだ...」


 前回のゴブリンの時の戦いでは怪我も無く無事帰ったおかげで注意で済んだが、今回は1発だけ上位種のオークから貰っているため確実に怒られるのがコウには想像ができた。


 まぁサーラには言わずバレなければいいのだが、これがバレた場合起きる事を想像すると溜息が漏れる。


 そんな事を考えていると隣に立っていたマルクが真剣な表情で話しかけてきた。


「コウよ...遠くからお前さんとオークとの戦いを見ていたがまだまだお前は強くなれる。どうだ?うちのクランに来ないか?」


 どうやら上位種のオークとの戦いをしっかり見られたお陰でマルクに気に入られたようでクランへと誘われる。


 クランとは冒険者が集まり結成されるものである。


 白薔薇騎士団という女性だけで構成されたクランが今のコウにとってはわかりやすいだろうか。


 クランに入るメリットは大きく新人冒険者には、色々な支援が受けれたりクラン自体が大きく有名であるならば他の荒っぽい冒険者から絡まれたりもしなくなるなど様々なことがある。


 ただデメリットとしてはクランに属する者はそのクラン独自のルールなどを守らないといけないことなど面倒くさいこともあるので、一概に入ることが良いこととは言えない。


「いや...悪いけど今はクランに入るつもりはない。すまないな」


 コウは今のところ自由に行動したいためクランに入るつもりはなく断る。


「そうか...欲しい人材というものはなかなか手に入らんものだな!気が変わったらまた教えて欲しい」


 マルクもコウがクランに入ってくれるとは思っていなかったらしく、やはり断られたことに少し残念そうにするが、すぐに笑顔になりマルクはコウに手を上げながら「さらばだ!」と告げてこの場を離れた。


 マルクはまだ散らばっている討伐隊をローランへ帰らせるため集合させ帰る準備をさせていく。


 コウも夜からずっと寝ずに戦って疲れたので早く帰るために準備をして討伐隊と一緒にローランへと帰るのであった...。




ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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