第54話

 ローランから少し離れた北側には森が広がっている。


 その森は木を採伐するには適した場所であり、魔物も生息しているがそこまで強い魔物はいない。


 強くても精々Cランクぐらいの魔物がいるがそれも森の奥まで行かないと出会えないため森の表層で木を切る程度ではまず安全だと言える。


 といってもあまり深くまで森を進むと隣接している死の森へと繋がっているので気をつけなければならない。


「ここが北にあると言ってた森か...そこまで遠くなかったな」


 コウはギルドで依頼を受けた後すぐにフェニとともにこの森まで来たがそこまで距離は遠くなかったためまだ太陽は真上から少し傾いたぐらいだ。


「フェニは周囲を警戒していてくれ」


「キュイ~」


 森の表層なので魔物は少ないと思うが念の為、フェニに周囲の警戒を頼むとコウの肩から離れ空を飛び周囲を警戒する。


「よし、とりあえず木を切るか」


 目の前には4~5mほどの木々が生えており特にどこから木を伐採しろとはされていなかったためとりあえずブレスレットに魔力を流しサンクチュアリへと元に戻す。


 木に向かってサンクチュアリを振るうと豆腐を切るような感じで木は切れコウの立っている位置から反対の方へ倒れズシンと振動が伝わってくる。


「この木が1本銀貨1枚だもんな」


 切った木を収納の指輪の中へと入れながら今回の依頼は楽だなとしみじみ思う。


 まぁ本来はそこらの冒険者とっては木が1本銀貨1枚で尚且この切った木をローランまで運ばないといけないため楽ではない依頼の筈だが、コウにとっては収納の指輪があるので何の苦でもない。


「切り株って収納の指輪に入れれるのか...?」


 コウは切り株に手で触れ収納の指輪を使うと切り株は無事に収納の指輪の中へと入れることが出来た。


「この指輪便利すぎるだろ...まぁわざわざ掘り出さなくてもいいのは楽なんだが」


 コウは自分の持っている収納の指輪に引きつつ次々と木を切り倒し収納の指輪の中へと木を入れていき勿論、切り株の回収も忘れない。


 黙々と夕方まで木を伐採しているといつの間にか周囲は更地になっており、かなりの本数を伐採していた。


「ふぅ~こんなもんでいいかな?あれフェニはどこだ?」


 コウは木を切ることに集中していたらいつの間にかフェニがおらず周囲を見渡す。


 すると少し離れた場所から女の叫ぶような声が聞こえてくるのでそちらにコウは走るとそこにはオークが女冒険者を襲おうとしていたがフェニの雷魔法によってオークは痺れていた。


 どうやらフェニは女冒険者を偶々守ったらしく近くで護衛をしていた。

 

「なんでこんな場所にオークが?」


 オークはDランクの魔物であり、この森の表層にはオークは生息しておらず大体中層から深層付近にいる魔物なのだが、表層まで何故か来ていることにコウは疑問に思う。


 すぐさまコウは痺れているオークの首を切り飛ばすと女冒険者の近くに寄りフェニを自分の肩へと止まらせる。


「おい、あんた大丈夫か?」


「えぇ助かったわ。でも足を怪我してて...」


 女冒険者に大丈夫かどうか聞くと足を怪我しているらしく足首が青あざになり大きく腫れていた。


「しょうがないな...」


 収納の指輪からポーションを取り出して女冒険者の腫れている部分へとかけるとみるみる腫れが引き元の綺麗な足首になる。


「えっ,,,ポーションなんて高いものいいの?払えないのだけれども...」


 本来ポーションというのは高価な物であり女冒険者もコウにかけられ足が治ったのはいいがそれよりも何を要求されるか心配のようだ。


「気にしなくていい。それよりなんでオークがこんな所に?」


 気にしなくてもいいと言われホッとしたのか女冒険者の表情が和らぐがすぐにオークの事を思い出し事情を話し始める。


「私はパーティでこの森にワイルドボアを狩りに来たのだけれども中層でオークが集落を作っていたわ...でも私達はオークにバレて私が殿をしたの。パーティは無事に逃したけど...」


 女冒険者の見た目はシーフのようで殿するのには丁度よい人材だったのだろう。

 

「大体事情は理解した。あんたはギルドに戻ってこの事を伝えろ。どうせまだオークはあんたを追ってるはずだ」


「でも...あなたは?」


 ギルドにさえ伝えれば冒険者を集め討伐隊が結成されてすぐにでもここに来るだろう。


 そして話を遮るように近くの茂みがガサガサと揺れるとオークが3体ほど現れる。


 どうやらこの女冒険者の匂いを追って来たらしい。


「早く行け!」


「死なないでよね!まだお礼をしてないから!」


 女冒険者はコウに早くいけと言われたのでこの場から離脱して急いでローランにあるギルドへと向かい走り出す。


「さぁ~てお前らの相手は俺だ。悪いなお前らの好きな女じゃなくて」


 オーク達は女の足が怪我をしていたのを理解していてようやく捉えられると思ったのだが、目の前の男が女を治して逃したことによって怒り心頭のようだ。


「ブモォォォォォォォ!」


 怒りに狂ったオークはコウへと威嚇し、此方に向かって走ってくる。


 コウはサンクチュアリを構え、夕日が沈む中で3体のオークとの戦いが始まるのであった...。




ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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