第53話

 次の日コウはローランへと帰る準備をしていると村長に話しかけられる。


「お帰りになられるのですか?」


 本来なら女子供を送り届けたらコウは少し村を探索したらすぐにローランへと帰る予定だったのだがワイルドボアの討伐などをして村長の家のベッドですぐに眠ると夜は明け1泊していた。


「そろそろ俺もローランに帰って冒険者としての仕事をこなさないと金が無くなるからな」


 コウとしてもお金はそれなりにあったのだが、王都に行ったお陰でそれなりの出費があったため危機感を覚え早く依頼を受けお金を稼がないといけないと思っていた。


「私共は色々とあなたに救っていただけました...更に食べ物まで...。我々はお礼を出来ませんでしたが何かあれば協力いたしますぞ!」


 コウは盗賊から奪った食べ物を村へと寄付していた。


 この先何があるかわからないが協力者が増えることは現在人脈が全くと言っていいほど無いコウにとってはプラスだろう。


 村の入口へと行くとそこには馬車が止まっており、どうやら昨日の御者がニコニコとした表情で待っていた。


「ローランへ行きたいんだろ?乗せてってやろうか?」


「...そうだな。ローランまで頼む」


「おうよ!快適な旅を提供するぜ!」


 コウとしてはここからローランへ走って行けなくもないがわざわざ疲れる意味もない。


 ただこのがめつい御者へと金を払うのはなんとも言えないがコウは御者へとお金を払うと御者はまいどあり!と言いニコニコしている。


 コウは1人と1匹では持て余してしまうような広い馬車の荷台へと乗り込んでいくと村の入口には人が集まってきており、コウを見送りに来てくれたようだ。


 馬車は少しずつ前へ進むと後ろから感謝の言葉や中には聖人様と言われたりして馬車の進む速度が上がるに連れて声は小さくなっていく。


「ローランへはどれくらいで到着するんだ?」


「このペースなら大体昼頃には着いちまうよ!」


 ガラガラと進む馬車の中から大きな声で御者へとどれくらいでローランに着くか聞くと御者は昼頃には到着すると聞きコウは予想よりは早いなと思う。


 昼頃に着くならばギルドへ顔を出し何か依頼が無いか確認ぐらいはしても損は無いだろうか。

 

 依頼が無いなら無いでそのまま食べ歩くなり宿でゆっくりするなりして次の日の朝にまたギルドへ顔を出せばいいのだ。


「それにしても平和だなぁ」


 そんなことを呟きながらコウは揺られながら快適な馬車の旅を過ごすのであった...。


◾️

 太陽は空の真上に位置しており、昼頃になっていた。


 コウはローランへと無事何事も無く到着し馬車と別れ4日ぶりのギルドへと歩いて両手にはそこらの屋台で買ったばかりの串肉を手にして美味しそうに食べ歩く。


 周りの人達もコウが美味しそうに食べているのを見てか近くにある串肉を売っている店が一時的に売り上げが上がったのは後の話である。


 ギルドに到着すると昼頃で多くの冒険者は依頼中なのかそこまでギルド内に人はおらず忙しそうな雰囲気はなかった。


 掲示板を見ると案の定、美味しそうな報酬の依頼はなく残りは駆け出しの冒険者がやるような依頼と難易度が高い割には報酬に旨味がない依頼が貼られていた。


「えっとコウ君よね?久しぶりかしら」


 掲示板を見ていると後ろから声をかけられる。


 後ろを振り返るとそこにはサーラと同期のミラが立っており、多くの書類を抱えていた。


「あぁえっと...ミラだったけ?久しぶりだな」


「あら?一度しか名前を言っていないのに覚えてくれていたのね」


「偶々だよ偶々。ところでその抱えているのは依頼書か?」


 ミラは名前を覚えていてくれたことがどうやら嬉しかったらしく機嫌が良さそうにする。


 コウはミラの抱えている紙の束を依頼書かどうか確認すると今日追加の分の依頼書らしく今から掲示板に貼る予定だったらしい。


「ラッキーだな。なにか良さげな依頼はないか?」


「ん~これとかどうかしら?」


 ミラへと依頼書の中におすすめはないかどうか聞くと中から1枚の依頼書を手渡される。


 依頼の内容はローランからそこまで遠くはないが北にある森で木の伐採という依頼で木の本数は持ってこれるならいくらでも欲しいらしく木1本に対して銀貨1枚という内容だった。


 コウへおすすめされた理由としては収納の指輪持ちということであり、切った木を一気にローランの街へと運ぶことができるためだ。


 わざわざ運ぶ人員を揃える必要もないためコウにはもってこいの依頼だろう。


 しかも木ぐらいならコウのサンクチュアリでスバスパと豆腐のように切れるため問題ない。


「なかなか良さそうな依頼だな。これ受けてもいいか?」


「いいわよ~コウ君なら任せられるわ~」


 コウとミラは受付まで歩き手続きを済ませてもらう。


「あぁそういえば切った後の切り株はどうすればいい?」


「ん~できれば放置せずに切り株も掘り出してほしいわ。そのまま放置するのもあまり良くはないし...」


 切り株はどうすればいいかどうか聞くと余り放置せず掘り起こして欲しいらしい。


 まぁ掘り起こすぐらいなら少し手間は掛かるだろうがコウには問題ないだろう。


「わかった。じゃあ行ってくる」


「気をつけてね~」


 手を振りながら受付から見送ってくれるミラを後にし、コウはギルドを出てフェニとともにローランの北にあるという森へと向かうのであった...。




ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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