第51話

「やっと街道に着いたな」


 コウは盗賊の拠点から救い出した女性や子ども達を森から抜け出しようやくコウが最初に盗賊達に襲われた大きな岩がある街道へと辿り着く。


 やはり森の中は魔物が彷徨いており、危険だったのだがフェニが先回りして雷魔法等を使い対処してくれていたお陰でスムーズに森を抜けることができた。


「それでどっちの道を真っ直ぐ行けば村に行けるんだ?」


「そうですね...多分こっちだと思うのですが...」


 村へ行く道を聞くとコウが元々進もうとしていた方向に女性は指をさす。


 このまま先に行けばローランへと続いているが途中で分かれ道があったのをコウは思い出すとローランへと行かない別の道へ行けば村へ着くのだろうと予想する。


 しかし今は日が出て明るいが女や子供の足だと村へ着くのには時間がかなり掛かることが容易に想像できた。


「仕方ない。とりあえず歩くしかなさそうだな...あんた達は大丈夫か?」


「私達は大丈夫ですが...子どもたちに適度に休憩を頂けると嬉しいです」


「ん、わかった。じゃあ少し歩いたら休憩にしよう」


 コウは勿論、子どもたちに無理はさせるつもりはなく適度に休憩をさせるつもりでもある。


 ただ時間にも余裕はないためとりあえず少しだけ歩いたら休憩することにした。


「よしこの辺で休憩しようか」


 1kmほど歩いただろうか...流石に森を抜けた後も歩き続けるのに子どもたちは疲れた様子を見せたためコウは休憩にする。


 まだ岩場地帯だが少し日陰になっている場所もあるため、そこに座り1人1人に水を配ったり食べ物を出すと同時にお腹が空いていたり喉が乾いていたのか子ども達は飛びつくように食事に夢中になる。


「すみません食事まで出してもらって。村に戻ったらできる限りのお礼を致します」


「いやまぁ別にそこまでは良いんだがなぁ...自己満足みたいなものだし」


 すると食事をしている最中に遠くからガラガラとした音が響いてくる。


 コウはすぐに自分達が来た道を見返すとそこそこ大きな馬車が此方に向かってくるのが見え、これはラッキーだと思い馬車を止めることにした。


 馬車が近づいてくるので手を振ると気づいた馬車はコウの目の前に止まってくれた。


「すまないこの馬車はどこへ行く予定の馬車だ?」


「この馬車はクルツ村へ行く予定だぞ」


 人当たりの良さそうな御者はクルツ村という聞いたことのない名前を答えコウはもしかしてと思い引き連れていた女性や子どもたちに聞くとそこが住んでいた場所だと答える。


「ふ~良かったこれで楽に連れていけるな...悪いがこの馬車に乗せてってくれないか?金なら払う」


「金を払ってくれるなら大歓迎さ。後ろに乗りな!」


 御者に8人分のお金を払い後ろの荷台へと乗り込んでいく。


 荷台の中は大きい馬車の為、広く後4人は入れるようになっていた。


「うっし全員乗り込んだか?出発するぞ?」


 全員が乗り込んだのを確認してから御者は2匹の馬へと鞭を打ち馬車が再び前へ進み出す。


 窓の外に子どもたちが顔を出し女性があれこれと子供に注意している光景が目に入る。


 しかし暫くすると最初は馬車の中で子ども達も疲れていたのか大人しくなって中には寝ている子もおり、最初は賑やかだった馬車の旅がいつの間にか静かな馬車の旅となっていた。


「お~い、そろそろ着くぞ~」


 御者からそろそろクルツ村に着くと言われ女性たちは寝ている子どもたちを起こしだす。


 太陽は既に傾いており、橙色の光が馬車の小窓から差し込む。


 窓から外を見るとのどかな草原が広がって近くには川が流れているため人が住むにはいい土地だとコウは思う。


 そして道の先にはレンガのようなもので建てられた家がそれなりにある村が見えてくと同時に馬車の中にいる者達は故郷へようやく帰れたことにより涙を流している者もいる。


 馬車が村の入口に止まると同時に馬車の中にいる者達は外に出て1人1人走り村の中へと入っていく。


 村に居た者達は何日も帰ってこない女子供を既に諦めていたが村へと戻ってきたことによって驚きそして暖かく迎えている。


「もしかしてお前さんはあの子達をクルツ村に送るために?」


「まぁそんなところだな」


 馬車の御者に女子供をこのクルツ村へと送っていたのかと聞かれコウは適当にはぐらかす。


「ったく...人助けの事情なら金はいらねぇよ!ほら!」


 馬車の御者はコウへと先程支払ったお金を投げ返してくるが少し枚数が足りない。


「少し足らないが...」


「おめーさんの料金はとるに決まってるだろ?まぁここは良い村だぜー楽しみな!」


 少し足らないお金を御者に聞くとコウは別料金だと言い笑いながら自分の馬車を動かし村へと入っていく。


「全く...がめつい御者だな。とりあえず俺らも中に入ってみるか」


「キュイ!」


 少しため息をつくが無事コウは女子供を村まで送れたことに一安心し、フェニと共に村の中へと入っていくのであった...。




ここまで見てくださってありがとうございますm(_ _)m

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