第9話

「よし...大体は家の部屋は把握した。最後に残ったのはこの地下への入口だけだが...」


 コウの目の前には木の階段で出来た地下への入り口があり、昼前だというのに暗くヒンヤリとした空気が流れてくる。


 まぁ地下の部屋は自分が入れられていた培養槽がある部屋だと直感的なもので何となく想像ができてはいた。


「地下はまぁいいか...どうせ俺が作られた場所だろうからな」


 自分が作られた部屋をきっと見てもなんとも言えない気持ちになるだけだろうし、特に見る必要もない。


 地下への入口の前でそんな事を考えていると昼時だからだろうか、お腹が何か食わせろと文句を訴えかけてきた。


「そろそろ昼飯でも作らないとな。というかなんの食材があるんだろうか?」


 コウ自身料理は別に得意ではないが親の手伝いをしてたこともあるので多少は料理の心得はある。


 ただ多少料理ができるということなのだが、そこまで凝ったものを作れるわけでもないのでとりあえず今ある食材を確認するためにリビングへと戻る。


「棚にあるのはパンと肉...あとは見たことのない野菜だな」


 フランスパン並に固い丸いパン、漫画で見るようなベーコンやハム、そして色とりどりな野菜があり、棚の中には1人だったら5日は持つぐらいの食料がたんまりと詰まっていた。


 そして台所の下にある収納場所の中は冷たく、冷蔵庫の様な感じで保存がされているので食料の中に腐ったりしてるものはないようだ。


「まぁ適当に焼いたりして食べればいいか」


 コウは適当に近くにあるナイフでベーコンや野菜を切り分ける。


 台所の下にある収納場所の近くにはかまどがあり、男が要領よく魔法で火を付けていたのを思い出す。


 そういえばコウは水系統に適正があると言われていたが、その逆の火系統への適性はどうだろうとふと疑問に思う。


 竈によく乾燥された薪を積み重ね、火のイメージをしながら残り少ない魔力を指先から流すと蝋燭のような火が指先から出てきたのであった。


「いやこれ火の魔法かなり燃費悪いぞ...」


 残り少ない魔力がガンガンと減っていく感覚がするが、とりあえず着火剤などは無いため火種になりそうな薪の破片に向かって火種を作り出す。


 そしてようやく薪に火が移ったので魔力を流すのをやめ、フライパンを置いて近くにある容器を確認すると油だったためフライパンの上に敷いていく。


 フライパンがある程度温まったら適当に切った野菜やベーコンをまとめてぶち込み、炒めていく。


 男だからこその適当な野菜炒めであり、見たことのない野菜もあるため味は全くわからないし保証もできない。


 また調味料などもなかったので野菜や肉本来の素材の味だけとなっているが匂いだけはかなり良い。


「まぁいいだろ適当で」


 皿の上に作ったものを乗せて保存庫からパンを出し、机の上にある程度の料理が出揃った。


 椅子に座りフォークとナイフを持ち「いただきますと」といつもの様に手を合わせ、先程作った料理に手を出していく。


 実際に食べてみると自分が作ったにしては上手く出来ており、調味料などを入れなくとも味は良かったので素材自体が良いものだったのだろう。


「ちょっと作り過ぎたかも...」


 しかしそこそこの量を作ってしまい今となっては小柄な体型のコウには食べ切ることができなかったため、夜作らなくても良いようにとりあえず残しておくことにしたのであった...。


 昼ご飯も食べ、お腹が膨れ自分の部屋でダラダラしていたコウはすることがなく暇を持て余していた。


 前の世界ではゲームや漫画などがあったが、この家には一切無く、暇つぶしとして使えそうな物は高く積まれた本や謎の資料などがあるだけだ。


 ただし本の中身を見ても文字は読めず、また謎の資料などを見ても理解できないので暇つぶしにもならない。


「暇だ...することが無い。黒い柵の外に出なければ家から出てもよくないか?」


 黒い柵がこの家の結界の役目をしているため、黒い柵の外に出ない限り魔物にも見つかることもないだろう。


 ただ家の中ですることもないし、退屈の中でダラダラしても仕方ない。


 黒い柵の外に出なければいいだろうと言い訳をしながら外に出ると、まだ昼間のためか空からは太陽の暖かな光が降り注ぐ。


「多少休憩したお陰で魔力は回復して身体は楽になったな」


 昼飯も食べて休憩したおかげなのか身体の重さが多少なりとも楽になったので、魔力が少しでも回復した証である。


 魔力が回復したおかげでまた魔法が使えると思いコウはルンルン気分で少し前に男と練習した場所で再び少し魔法の練習をしだす。


 遊べることがない分、暇つぶしには丁度いいのかも知れない。


 といってもあまり魔力を使いすぎても枯渇してしまうので注意は必要だけども...。


「水球はもう良いかな。槍とか水で作れないだろうか?」


 コウは魔力を手のひらに集め、まず水の槍を作り出してみると手に集めた魔力の先端が渦を巻きながら細長い水の槍の様なものが出来た。


「おぉ...案外出来るもんだな。次は温度を変えることが出来るだろうか?」


 まず熱湯になるように熱いお湯を想像すると水の槍がブクブクと沸騰しだした為、想像によって温度が変えられるらしい。


「熱湯だな。次は冷やしたら氷になるのだろうか?」


 逆に温度を冷たい水を想像するとシャーベット状の槍になり、さらに氷の状態を想像すると氷の槍になる。


「水系統は氷の系統も使えるようになるんだな」


 コウは自分が使える魔法は水だけだと思っていたが、実際には氷などの派生も使えるということに気づけたのであった...。


ここまで見てくださってありがとうございます!


そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m

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