第6話
家の外へ繋がるドアが開き男の背中に付いてくと空から太陽の光が差し込み目を細める。
この世界に来て数時間、コウにとっては初めて家の外に出るということになる。
ドアを抜け最初に見た外の光景はテニスコート2個分ぐらいの広めな庭であり、隅っこには耕された小さな家庭菜園もあった。
そして次に視界に入ったのは、家を囲むように黒い柵が設置されており、その黒い柵は上まで続いて囲われているのでまるで鳥かごのようだと感じる。
「さぁ魔力をまず感じないと魔法は使えない。誰しもが魔力を持っているけど少量しか持っていない人は魔力をまず感じるのが難しいんだ」
そう言いつつ男はコウへと丸い水晶を手渡してきた。
重量はそこまで重たくはなく大体ペットボトル150mlぐらいの重さとなっており、見た目と違って案外軽いものとなっている。
「といってもコウは魔力が多いからすぐに魔力を感じる事ができると思うよ」
見た目はただの丸い水晶で何故、渡されたのかはわからず。きっと何かしらに使うというのは分かるが何に使うのかまではわからない。
「これってなんだ?」
「とりあえずその水晶は両手で持ってておいてくれ。それは持っていれば本人の魔力を引き出して使える魔法の系統をわかりやすくしてくれる魔道具だよ」
男に言われたままコウは水晶を両手で持ち続ける。
そして2~3分ぐらい経過しただろうか?水晶の中心が青色に色付いていく。
色がついてくるに連れて自分の手のひらに冷たいものを感じる。
まるで水晶から水が自分の手のひらから溢れ、じんわりと濡れていく様な感覚だ。
そして、その冷たさは手から腕へと伝わり最終的に胸の心臓がある位置まで冷たさは伝わっていく。
「コウは青色か...だとしたら水魔法系統に適正があるんだね。水魔法系統はなかなかに便利だよ。飲水に変えたりお風呂のお水を溜めたりね。勿論、戦闘に関しても便利だから安心してくれ」
水系統と言われコウは少しなんとも言えない気持ちになった。
海に落ちたから水系統になったのかそれとも元々海の近くに住んでいたからなったのかはわからない。
まぁ飲水に困らないのは良いことだろうとコウは納得する。
「このひんやりとした冷たい物が手の上にあるんだがこれが魔力なのか?」
コウは魔力というものがどの様な物かはわからないが先程まで無かった感覚が手のひらの上にあることに気づく。
「うーん人それぞれ魔力の感じ方は違うんだけども、きっとそれがコウの魔力だと思うよ。私の感じ方は温かいものが身体の中心から溢れ出るような感じだし。とりあえずは魔力を感じれたみたいだね。さぁ水晶はもう地面に置いてもいいよ」
コウは水晶を足元の地面に置き先程、手のひらにあった冷たい感覚を思い出す。
「これが魔力か…」
思い出すと同時に胸から冷たい感覚が溢れ出し手の先まで伝わり、コウはこれが魔力だと再確認する。
例えをいうならば冷たい流水が腕の上を通って手の先から外へ出ていく感じだ。
しかし出せるようになったのは良いのだが、止め方が分からずにずっと垂れ流しの状態ではある。
「魔力の出し方はわかったかな?次は魔力の操作といこうか。手の先に魔力を集められるかい?」
言われたとおりに手の先に集めようとするがどうしても手の先へ集まらず指先から外へ流れていく感じがする。
目の前の男からはコウは魔力自体は多いとの情報を得ているのでいくら垂れ流しても体調に変化はない。
「難しい...」
魔力の出し方は案外簡単にできるようになったので、もしかしたらこのまま簡単に魔法が出せると思ったが実際はそうでもないようだ。
「まぁ最初からは誰しもが出来ないから心配しなくてもいいよ。私も昔は苦労したなぁ...アドバイスをするとすれば想像力を働かせることだね。どうすれば手の先に集められるか考えると良い」
男はニコニコした顔で言う。
この男も昔は苦労したらしく今、現在同じくコウも苦労している姿を見て昔の自分の姿を重ねたのか笑顔になっているようだ。
(なんか腹立つな...何かないか?想像で手の先で集められるものは...?)
コウは顔をムッとしながらも手の先に魔力を集められる方法を考える。
(指の先から全部漏れてる...蛇口みたいな感じで閉める感じはどうだ?)
蛇口を想像する。
指の先から漏れているのならそこを閉めればいいのだろうと...実際やってみたら少しずつ魔力が指の先から漏れが少なくなってくるのがわかる。
そして最終的に魔力は手の先にずっと留まるような状態となっていた。
「よし...!出来たぞ案外簡単じゃないか!」
コウは余裕そうな顔で男に向かって笑顔で話しかける。
実際に蛇口を閉めるという想像は地球での記憶があるコウにしかできない想像だろう。
「凄いな...もう出来たのか。私は1週間はかかったけどなぁ」
頭をポリポリとかきながら男は呟く。
男はコウが手の先に魔力を集めるのを時間が掛ると思っていたがすぐに出来るようになったのに少し悔しさを覚えたのだろう。
「よし、じゃあ次は魔法を出してみようか。こっちはもっと想像力が必要だからね。例えば火球を出すとすると手のひらに魔力を集め、丸い魔力想像する。次にそれが燃えてるのを想像するとこのように火の玉が手のひらに出る。不思議なことに自分の出した魔法は熱さや冷たさを感じないから安心して出すと良い」
男は説明しながら手のひらに火の球を出す。
そしてコウは水系統と言われたので水球を出すことに決めて考える。
(手のひらに丸い魔力を作って...水を覆わせる...)
手のひらに丸い魔力を作ることには成功したが水を纏わせることは出来ておらず、手のひらから水がポタポタと溢れ出す。
他に方法は無いかと考えると1つだけ思いついたようで今度は指の先に硬式球より少し大きいぐらいの大きさの丸い魔力の球を作り出す。
(今度は蛇口から水を丸い魔力の中に入れるような感じはどうだ?)
そうするとコウの指先から水が出て、まるで水風船を作るような感じで丸い水の球が出来ていくのが確認できた。
「できた...これが魔法...」
初めて魔法を使えたことに感動し、作ることの出来た水球をまじまじと見てしまう。これぞまさに異世界ならではの感動だろうか。
水球はくるくると回っており、まるで海王星に似ている。
ただ指の先にできたこの水球をどうすればいいか悩み助けるように男へと視線を送る。
「これどうすれば良いんだ?」
「あ~まさかここまで出来るとは...そうだね取りあえずは指を振ってごらん。そしたら振った方向に真っ直ぐ飛ぶはずだからね。畑の側に木があるだろう?そこに振ると良い」
男に言われた通り畑の側に木があるので木に向かって指を振ってみる。
そうするとコウの指先から水球がそこそこの速さで離れていき、木に当たるとズドン!と音を出し木が抉れているのが確認できた。
「エグいな...」
木に当たったら水が弾けて木が濡れるだけで終わると思っていたが抉れた木を見て実際の想像とは違いコウは苦笑いするのであった...。
ここまで見てくださってありがとうございます!
そしてブクマや星やハートをくださる方もいつもありがとうございますm(_ _)m
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