第28話 環境作り

 人間に対して散々ネガティブキャンペーンをしてしまったお陰?で狼たちの人間に対する警戒度は上がったようだが、俺に対しても若干警戒をする者たちが居て、狼たちの中では賛否両論。


 あ~‥‥余計な事したな。という感情がむくむくと起き上がって来たが、もう今更だし後悔先に立たずと言う事で、その内に信用して貰えるだろうと気にしない事にした。


 俺の気持ちとしては、人間は怖いと思って欲しかったんだが、今迄の歴史を鑑みればそんな事は100も承知な訳で、ダメ押しで俺が余計な事を言いました。

 改めて考え無しな自分の行動に嫌気が差します。



 小太郎は、主の考えは分かりますよ!と言いたげにニコニコしてるし、雅はしょうがないですねぇ~。とため息を付いている。

 二人共、大して問題無し!って感じと思って良いかな?



 人化した狼たちは雅が呼んだキツネたちの指導の下に自分たちの家を作るようだ。

 不慣れな、と言うか人化すら初めての狼達の指導に、九尾の所から何匹かキツネたちが指導に来て色々指導してくれるんだが、狼達も若干プライド?があって素直に訊ける奴と聞けない奴が居ると。


 キツネたちの監督の下に九尾の所の様なキツネ御殿?を犬神御殿として建てるのが目標の様だが、色々勝手が違う様だな。


 ただ、雷神様が先頭に立ってキツネたちに色々聞くもんだから、キツネたちの方がタジタジになってて、上手く回るなら良しって感じ。


 まぁ口出しはしないので、上手くやってくれ。

 その間にハイエースの燃料を入れて周辺を走り回って見たんだが、なんせ道が無い。

 川沿いに下流は湖までと、上流は滝までなのでインフラ整備は必要だなと思っている。


 狼達やキツネたちが使う道は所謂獣道なので、現代の車が通れる訳が無い。

 最低でも幅2mで、長さ5mの箱が曲がっていけるだけのスペースが必要である。


 こんな感じの広さが必要だと皆の前でやって見せたら、直ぐに理解して貰えた。

 それから森の中に獣道じゃない道が出来た。


 どうやら俺の言う事を逸早く理解できた狼が偉い立場の様子なので、曲道のスペースを理解した狼にはマガリという名を付けた。


 彼はその後も参謀として、その柔軟な頭脳を駆使してくれる様になる。


 そのマガリと共に作った道だが、基本的には直線に作って途中途中で木の実や果物を収穫する様に寄り道する構造である。

 直線部分には藪などを置いて真っ直ぐ行けない様にして、迂回路に行くと様々な果実に遭遇するようになっている。


 しか~し!それでは野生動物を餌場に誘導している様なモノなので、堀や柵など色々考えた。柵は壊すのは簡単だろう。堀は?地面を掘ってしまうので根を傷付けたくないし、成長を阻害しても嫌だなぁと思った。


 結論としては、果実のなる樹の周囲に監視小屋を作った。

 相手は野生動物や魔物である。

 人間の匂いには最大限に警戒するし、追加で雷神様におしっこして貰った。


 これが覿面!!魔物どころか野生動物も一切近づかなくなった。

 縄張り表示のおしっこだが、雷神様の匂いがすれば誰も近づかない。

 畑や他でも利用できそうである。


 逆に風神様の匂いだと、いらん災いを呼び寄せそうだし、何より女性にそんな事頼めません。


 匂いを付ける事に関して小太郎はやる気満々だったが、雅は嫌がった。

 そこに♂男と♀女の差があって、そういうモン何だろうなと思う。


 取り敢えず、ただ監視小屋を作って、周囲に雷神様の匂いを撒く?

 それじゃ芸が無いし、不潔感も半端ない。


 そこは雅たちキツネたちがそれはダメだと強く進言があった。

 だから監視小屋の裏に男性用小便器を設置した。

 もう一つ、女性用、男性用兼用で小屋の中にも一つ設置した。


 それなら、まぁ何とかとお許しがもらえた。

 しかしキツネたちはそれだけで収まらず、アレがこう、ソレがこうと監視小屋の改造を始め、いつの間にか宿屋の様になっていた。

 誰が泊るんだよ?ココに?


 そんな監視小屋が等間隔に設置され、木の実や果物の収穫に大いに役立ったのは言うまでも無い。

 そんな監視小屋周辺に河童たちが畑の開墾にやって来て、川沿いの今迄道になってた部分は全て畑に姿を変えた。


 河童の久太郎の親族から始まり、河童の一族を上げて俺の所に挨拶に来た。

 風神、雷神様は河童たちに、遊行寺功に忠誠を誓うなら良し!

 として河童たちを受け入れた。


 そこから川沿いの一大開墾作業に発展するのである。

 キュウリ、瓜から始まり、スーパーでお目にかかる野菜はほぼ植わっている。


 それと、予定外に嬉しいことも在る。

 確かに野菜は嬉しいが、狼たちやキツネたちにとっては無くても良い物。

 河童たちは川と畑の合間に池を作って行った。


 そう、魚の養殖池を作ったのである。

 川に居る魚たち、イワナ、ヤマメ、ウグイ、オイカワからウナギやナマズ、ザリガニやモズクガニもそれぞれの池に集められた。


 清流でも淵には沼などから流れ込んだウナギやナマズも居る様で、かなりの数を集めていた。さすがカッパだな!


 養殖池と言っても、川から流れ込んで川に戻って行くだけの池を連ねているだけなので、大雨などで増水したらみんな流れてしまうだろう。

 しかし、行先は湖なので大した問題じゃ無いそうだ。


 どうやら下流で人間たちが池を作って魚を育てて、大きくしてから食うと言うのを見てたらしく、それを真似ただけだと言うが、さすが!久太郎!真似を出来るって凄い事なんだぞ!!と、褒め称えてやった!


 そんな事もあって久太郎の河童部族内での地位も鰻上りの様だな。


 養殖池を順に眺めて行くと、上流は渓流魚たちでヤマメ、イワナが大きさ順に集められている。大きい池で孵った子供たちはまた上流の池に戻される。

 たまに違う魚が紛れ込んでるのはご愛敬だな。


 下流の方に行くと、サンショウウオ池やモズクガニ池、ザリガニ池、サワガニ池と浅めにして隠れ家沢山の池だったり、カエル池やメダカの学校や昆虫池まであった。


 彼らには魚たちがどんな所に住んでるかをよく考えて池を作ってやれと言ってるので、それぞれの住処に適した環境を作ってるのは流石!としか言いようが無いが、この虫たちはどうするの?食べるの?


 タガメ、タイコウチ、ミズカマキリ、コオイムシ、ガムシ、ゲンゴロウ‥‥‥

 よくぞこんなに集めました!

 あ、食べるんですか?食べるんですね。

 ボリボリと‥‥歯応えのあるのが好みの様ですね。


 ん?僕ですか?ありがとう。でも遠慮しておきます。






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