第24話 道中

「小太郎‥‥無事か?」


「主ぃ!ひどいよ!」


「お!普通に戻ったな。」


「あ、いや、これは‥‥」


「小太郎、そんなに畏まるな。それと、今迄情けないご主人でゴメンな。」


「主、そんな事は‥‥」


「俺は反省したんだよ。今までの態度は情けなさ過ぎたってな。小太郎の気持ちも分かるんだよ。自分がしっかりしなきゃ!って思ってくれたんだろ?その気持ちは嬉しいぞ。今まで、日本での生活はどうだった?俺はあの頃と変わらないぞ?今でもお前は、小太郎は俺のワンコだからな。フェンリルだろうが、犬神だろうが、小太郎は小太郎だろ?嫌ならそう言え?俺は止めないぞ。」


「主、いえ、コウ様。そう呼ばせて下さい。僕は、焦ってたんです。コウ様を巻き込んで、この世界に帰ってきました。巻き込んだ以上、幸せにしなきゃって、立派になってもらわなきゃって、焦ってたんです。キツネたちの話はコウ様の力を示すのにちょうど良いと思ったんですが、空回りして逆にご迷惑を掛けてしまいました。でも、もう迷いません。僕はコウ様と生きて行きます。嫌だと言っても離れません。だって僕はコウ様のワンコです!」


「お、おう!小太郎ヨロシク頼むな!」



 ~~~雅、心の声~~~

 抱き合って小太郎様の頭をガシガシ撫でてますが、オス♂同士ですよね?

 それに、ワンコって、ワンコイン?じゃなくって、犬の事ですよね?

 良いんですか?犬神様をワンコ呼ばわりで?

 でも、彼らは信頼できそうです。この流れに乗って行きましょう。


「あ、あの、主様?小太郎様?宜しいでしょうか?」


「ああ、雅、放って置いて悪かったな。」


「そんな事は構いません。あの、私もお仲間に加えて頂けませんでしょうか?まだお会いしたばかりですが、お二方の絆に加えて下さい。」


「みやび、心配しなくても僕らは仲間だよ。」


「ああ、小太郎の言うとおりだ。雅はもう仲間だから心配しなくて良いぞ。」


「そしたら、私も、コウ様とお呼びしても宜しいですか?」


「ああ、全然構わな‥‥「それはダメ!」」

小太郎が思いっきり被せて否定した。


「小太郎様!何でですか!?」


「僕が何年一緒に居てコウ様と通じたと思ってるんだよ!昨日来ていきなりコウ様呼びなんて駄目だよ!」


「小太郎様!」


「おいおい、小太郎?そんくらい良いじゃないか?」


「コウ様ダメだよ。父様だって母様だってコウ様呼びなんだよ?それだけの人なんだから、少しは威厳を持たなくちゃダメだよ!」


「い、犬神の大神様たちでさえコウ様呼び!!そ、それは恐れ多いです。」


「それは凄い事なのか?」


「うん。父様と母様はここ等辺の頂点だからね。そんな方が様付けで呼ぶんだよ?だから僕もご主人様呼びだったんだ。」


「そう言う訳か。でも、直属の従者なら構わないんじゃないか?」


「従者は従者で対等な呼びなんて以ての外ですよ。側室に召されるなら良い?かなぁ?」


「「‥‥‥‥」」


「後はこの先のみやび次第だよ。だから今はまだ駄目だね。」


「はぁ~、呼び方一つで難しいもんだな。」


~~雅、心の声~~

「側室‥‥側室になったら、いいえ九尾様を継ぐには、でも、女の幸せは‥‥

いいえ!九尾様を継ぐと誓ったじゃない!それを簡単に捨てるなんて!

でも、でも、相手は大神様さえ様付けで呼ばれるお方‥‥それも九尾様より格上になるお方‥‥」


「雅‥‥心の声が駄々洩れだぞ‥‥‥まあ、深く考えるな。取り敢えず帰ろう!」


「「はいっ」」


 まぁ二人とも、多少の本音も聞けたし、この先は平穏無事に行きたいもんだね!雅が採って来てくれたキノコや木の実を集めて収納してから歩き出す。


「主様?」


「なんだ?雅。」


「かなりの量の食物を集めていますが、戻ったら狼たちに分け与えるのでしょうか?」


「ん?そんな事、気になんのか?」


「はい。主様ほどのお方が食料集めなど、こう言う事は下々に行わせれば良いのです。」


「ああ、そう言う事? この集めてる食料は、基本的に俺たちが食うものだよ。狼たちは毎日、自分たちの食い扶持は持ってくるよ。風神雷神様たちの分もね。ただ、あいつ等は料理が出来ないから、その辺りは俺が手を貸してやってるな。」


「‥‥そうなのですね。‥‥料理?  えっ?主様が狼たちに料理を振舞ってるのですか!?」

 雅の尻尾がピーン!と伸びて、膨らんでるのが愛らしい。モフモフしたいぜ。


「そうだな。狼たちは火が使えないだろ?だから俺が色々作ってやったりしてるよ。」


「な、なんという事でしょう。。。。。」


「ん?雅?どうした?」


「分かりました。先ずは狼たちの教育からですね!!」


「はっ?狼たちを教育するの?‥‥あいつ等かなり賢いぞ?」


「主様!だからですよ!我等九尾様に仕える者たちだって、人化して料理位作れるのです!狼たちに出来ない訳在りません!!」


「そ、そうか。まぁお手柔らかに頼むよ。」

 ‥‥小太郎は聞いてない振りをしてるな?分かりやすい奴だ。


「おーい!小太郎!」


「はい!コウ様、何でしょう?」

 分かりやすいねコイツ!


「今、狼達って何頭いるの?」


 ん~?と上を見ながら考えている。狼状態だと、この顎のラインが可愛くて撫でたくなる。

「今は、200と数十頭という所でしょうか?正確に把握して無くて申し訳ありません。」


「うん、その中で人化出来る奴ってどんだけ居るの?」


「えっ‥‥‥」

 あぁ、固まっちゃったよ。まぁ、予想通りだけどな。


「ザっとでいいよ。10とか20とか?20~30くらいは居るのか?」


「は、はい。そのくらいは‥‥ただ!それについてお話が有ります。」


 この時はまた、小太郎の言ってなかった系の話かな?と思って軽く考えてた。

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