第13話 収納魔法

「ちょっと待ってろ‥‥」


 アイテムBAGの話をしたら雷神様が席を外した。

 はて?持ってるとかそんな流れか?

 風神様を見ても黙って目を閉じている。


 そのまましばらく時は過ぎ、眠くなって寝ようかな?って時に雷神様は戻ってきた。

 口には朽ち果てたカバンをぶら下げて‥‥


「在りましたか‥‥」


 風神様が呟くと、雷神様は「うむ」とカバンを渡した。

 風神様は暫くカバンの中を覗き込んでいたが、こちらに向き直り、


「コウ様の仰るアイテムBAGというのは、マジックBAGの事ですか?」


「あ、はい。そうですね。マジックBAGって言うんですね。」

 アイテムBOXとごっちゃになっていたな。


「ここに古いマジックBAGが在るのですが、ご覧のように既に使い物にはなりません。」

 かなりボロボロだもんなぁ‥‥


「そうですか~。やはり貴重な物なんですか?」

 買えたりはしないのかな?


「はい。人間では作れる者も殆んど居りませんので、殺しても奪い取ろうとする輩も居る位ですね。」

 怖っ!そんだけ有用なアイテムって事だけど、使用者制限とかも無いのか?


「はぁ~。やはりそうそう上手くは行かないですね。修繕とかは出来ないのですか?」

 別のカバンの中に縫い付けて使えたりはしないかな?


「流石に私たちには、人型になってもそんな技術は在りません。修繕するならコウ様が成された方が確実ですね。」

 そりゃそうだね。裁縫する風神様とか、着物を着て正座してやって欲しいね、惚れそうだけどな。


「そうですか。それじゃあ、何とか修繕して使えるようになるかやってみます。」

 やはりカバンINカバンが最善かな?


「そこでコウ様に提案があるのですが‥‥」


「提案?」


「はい。マジックBAGは魔法陣と持ち主の魔力によって維持されています。当然、魔力の無い者には使えません。しかし、この魔法陣を体に刻み付ければ、微量な魔力でも維持する事が出来ます。‥‥どうでしょう?魔法陣を刻み込んでみませんか?」


「へ?‥‥それは、刺青をしろと言う事ですか?」

 おいおいおい!何を言い出すんだよ?


「イレズミ?というのは分かりませんが、身体に魔法陣を刻むというのは、身体に魔法を覚えさせると言う事です。外から見ても分かりません。」


「身体に覚えさせる?‥‥具体的にはどうするんですか?」


「身体の場所は何処でも良いのですが、腕や足に刻むと万が一欠損した時に魔法陣も失われます。ですから胴体に刻む事が多いです。主に背中ですね。ただ、これも裂傷などを負ってしまうと魔法陣が切れてしまうので、首や頭に刻む人も居ります。如何致しますか?」


「う~ん‥‥それによって起こるデメリットってあるかな?」


「デメリット?ですか?」


「あ~、それによって起こる悪い事?不自由な事?制限とか?」


「ああ、そうですねぇ‥‥身体に刻むと、マジックBAGでは無くアイテムBOXと言う収納魔法になります。制限というか、容量はその人の魔力量に左右されます。それと‥‥刻むのに苦痛を伴います。」


「お~ぅ。」

 やはり苦痛を伴うのか。

 聞いてみると、まんまイレズミじゃん!

 透明な魔力で刻む刺青って事か‥‥


 ‥‥それでも収納魔法は欲しいな。

 今後の利便性は計り知れないし、万が一にはハイエースすら収納出来るかも知れない?‥‥まぁ、容量は保有魔力次第と言う事だが、数値化されてないからどんだけだかサッパリ分からないな。

 あ!あと、これも聞いておくか。


「あ、すいません。ちょっと考え込んでしまいました。」


「いいえ、大丈夫ですよ。何か他に聞きたい事が在りましたか?」


「はい。まず、書き直しは効きますか?例えば、背中に書いて裂傷を負ってしまったので、別の場所に書き直しって出来るもんですか?」


「‥‥‥‥裂傷にも依りますが、剣などで切られた場合は修復できます。爪などで抉られた場合は、一旦魔法陣を消して書き直しです。これは2重に苦痛を味わう事になります。書き直しと言う意味では出来るでしょう。」


「あぁ~‥‥出来るけど、それなりのリスクが伴う訳ですね。他には、幾つか複数の魔法陣を同時に刻む事は出来ますか?」


「‥‥はい。出来ますが、同じ場所に刻む事は出来ません。それと、苦痛はかなりの物です。最大でも3個以上の魔法陣を同時に刻む事は行いません。多分‥‥身体が持ちません。」


 あ~!体力的身体的、精神的にも持たない感じなのかな。

 それだけ大きな苦痛って事か。

 刺青入れると、かなり高熱を出すって言うし、時間かけてやるみたいだもんな。


「分かりました。お願いしたら直ぐに出来るもんですか?何か準備とか必要な物は在りますか?」


「特に必要な物は在りませんが、一番重要なのは安全な環境ですね。」


「了解しました。今晩考えて、明日にどうするか?決心します。‥‥‥例えば3っ魔法陣を同時に刻む事にして、収納魔法の他に鑑定魔法と千里眼のような魔法は可能ですか?」


「ああ‥‥やはりそんな魔法を希望しますか?‥‥」


「はい。‥‥何か問題ありますか?」


「いえ、このマジックBAGの最初の持ち主も同じ魔法を希望しました。」


「えっ!その方は?‥‥BAGの具合から見てかなり昔の方ですか?」


「‥‥‥‥」

「そいつは初代勇者様だ。」


「ライ‥‥」

「昔の事だ。コウ様の気にする事じゃねぇ。」


「昔に‥‥勇者様が召喚されたって事だな?」


「ああ。そんな戦乱の時代が在ったんだ。もう、昔の事だ‥‥」


「そうか。」


 それ以上は聞けなかった。

 簡単な話じゃなかったんだろう‥‥無表情に平静を装っている様だが、悔しそうな顔は隠しきれていない。


 いつもなら熾火を落として寝るところだが、今日はそのまま車に入って寝た。

 その代わりと言っては何だが、風神と雷神の間に日本酒を置いてきた。

 今日は、そんな日だよな‥‥

 おやすみ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る