第6話 焼き鳥?

「ご主人、ちょっと待って。」


「ん?‥‥何かいるのか?」


 目を凝らすと、小さい方の滝つぼに何かいる。

 人型の何か?

 小太郎が警戒してたら、こちらに気づいたのか?サッと居なくなった。


「何だったんだ?今のは?」


「う~ん。もう大丈夫だと思うよ~。」


 小太郎が大丈夫だと言うなら大丈夫なんだろう。

 滝に近づいていくが、何かが居た痕跡らしいものは見当たらない。

 しいて言えば、岩の上に濡れた跡があるくらいで、それが何だったのかは分からない。

 分からないものはしょうがない。しょうがないなら気にしない。

 そう。気にしない事にした。


 大きい滝つぼは壮大で迫力がある。

 さすがにあそこで水を汲む気にはならない。

 日光の華厳の滝で水を汲むくらい難易度が高いだろう。


 小さい滝つぼの方は、富士の白糸の滝のようである。

 水はキレイに澄んでいて、岩場の下には魚もいる。

 水が飲めるかどうかは‥‥生水は止めた方が無難だな。

 腹を下すだけでなく、どんな寄生虫が居るかも分からない。

 そんなチャレンジはしたくない。


 背負子を下ろして水を汲む準備をする。

 漏斗とホースを繋ぎ20リットルボトルに差し込んで、落ちてきた水を漏斗で受けてボトルに溜めていく。

 あっという間に溜まった。

 ボトルは透明なので、横から確認すると砂やゴミは混入して無い様だ。


 背負子にボトルを括り付けてる間に小太郎が戻ってきた。

 つか、どこに行ってたんだ?


「ご主人~連れてきた~。」


「お?連れてきた?何を?」


「この子~」


「は?」


 小太郎の足元にはバレーボール位の青い半透明の物体がフルフルしている。


「お?」


 フルフルした物体はコチラを見た。

 目?のようなポチっとした点が2つ有り、こちらを観察?してるみたいだ。

 思わず膝を付き、両手を出して、お出でって言ってみた。

 少し逡巡して恐る恐るこちらに近づいてくる。

 左手の先にチョンと触れる。

 冷っとしてプルンとしている。


「やっべ~~!カワイイ!!」


 左手に触って、ニジニジと登ろうとしている。

 なんだ?このカワイイ生き物は?


「ご主人~気を付けないと溶けちゃうよ~?」


「へ?」


 左手を取り込んでムニュムニュと動いている。

 ビクッとなって慌てて左手を引き抜いた。

 表面が妙にキレイになっている。正に一皮剥けた感じ?


 あ~そういうことかぁ。

 スライムは、?を浮かべたような感じでこちらを見ている。


「小太郎、コイツなんでも食うのか?」


「食べ残しは大抵食べてくれるよ~、草や石も食べる奴が居るみたいだけど、好みみたいだね~。」


「お前、一緒に来てくれるか?」


 そう言ってバケツを出したら、素直に中に入ってくれた。

 一緒に来てくれるらしい。


「小太郎、コイツは水は無くても平気なのか?」


「ん~~?平気じゃないかなぁ?川だけじゃなくて森の中にも居るよぉ。」


 背負子に水のボトルと、スライム入りのバケツとを結んで来た道を戻る。

 車で通れそうな所を選んで、倒木なども確認しておく。


 車に戻ると、風神様と雷神様が揃って出迎えてくれた。


「おはようございます。水を汲みに行ってました。」


「うむ、フウの奴が心配してな。ちと様子を見に寄っただけだ。」


「これから頂いた鳥を料理しようと思います。是非食べて行って下さい。」


「そうか。任せよう。」


「コウ様。あなた様の暮らしてた世界と、こちらの世界では勝手が違うと思います。コタロもあなた様と暮らすと申しておりますので、私共も最大限のお手伝いを致します故、どうかコタロをよろしくお願いいたします。」


 雷神様は相変わらずだが、風神様は母親らしい気遣いをしてくれる。

 今後の事は、食事をしてから話そうと言う事にした。


 まず、スライムには鳥を解体した後の臓物などを処理して貰うようお願いする。鶏がらは出汁にするので取って置く。


 焚火を熾し、火が落ち着くまでに飯盒でご飯を炊く。

 みんながどれだけ食べるか?米を食うのか?も分からないので、1升だけ炊いてみる。


 どんどん薪をくべていって、熾火の部分をBBQコンロに移す。

 割とデカいBBQコンロなので網と鍋と両方置けるが、今回は網焼きだけだ。


 網の上に、最初はレバーとハツを並べる。

 塩コショウを振って、両面こんがり焼いてから風神雷神様に出す。


「どうぞ、召し上がって見てください。」


「うむ。」「恐れ入ります。」


「「・・・・・・・・・・」」


 あれ?ダメだったかな?

 目を見開いて無言の風神雷神様は‥‥‥


「「美味い!!!!」」


 絶叫した!

 自分と小太郎にも取り分けてたので、一口食べてみると、ジューシーな肉汁と塩加減が最高にマッチして、コクのあるレバーの味わいと歯応えのあるハツの食感がメチャメチャ美味かった!


「普段は生で食して居るが、お主の言う料理をすると全然違う物になるな。」


「ええ、普段絞めて食す時とは数段階上の美味しさです。コタロはこれにやられたのかしら?」


 いやいや、小太郎は普段こんなの食べて無いからね。

 そんなことを考えていたら小太郎が爆弾を落とす。


「これもスゴイ美味しいけど~、ご主人が毎日出してくれるカリカリもす~んごく美味しいんだ~!」


「「カリカリ??」」


「ま、まぁ、次はコレを食べてみてください。」


 懸命に誤魔化す。

 次は砂肝の塩焼きである。

 これは俺も個人的に大好きなんで、ちゃんと取って置いた。

 鳥のレバーとハツと砂肝の煮込みなんか大好きでよくやったが、さすがにここにショウガは無い。

 塩焼きで勘弁してもらおう。


「「ほう~♪」」

 お気に召したようだ。


 その後は、モモ肉の塩焼き丼にしてみた。


「この白い粒はなんだ??」

 雷神様は警戒している。


「これは?人間が食べている穀物ですか?」

 さすが風神様は博識である。


 平たいお皿にご飯をよそって、全面にモモ肉の塩焼きを並べてみた。

 それを見た感想だが、

「まぁ、食して見て下さい。後、熱いのでゆっくり召し上がって下さい。」


「うむ。」

「はい。」

 ・・・・・・・・

「「美味ぁ~~~い♪」」


 もう、彼らはすっかり塩焼きの虜になったようだ。

「小太郎、そう言えば、コレってなんて鳥なんだ?」


「ん~?これ?コカトリスだよ~。」


 ビシッと固まった!

 巨大な鶏じゃ無いとは思ってたが、ここでまたそんなファンタジーな名前が出るとは‥‥

 今更、石化してしまった。

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