第37話 災厄のはじまり
現在わたしたちはリアとクラスメイトたち全員と一緒に山の奥へ向かっている。
というのもお母様の結界魔法が何かを感知したらしくてその調査をするのだが、屋敷の食料も不足していたので、ついでにその辺の動物を狩ることにしたのだ。
「……あそこに誰かいるな」
リアのセリフで全員が止まって草木に隠れてリアの指さした方向を見ると黒いローブを着たいかにも怪しい男たちが魔方陣を囲って何かしていた。
「なにしてんだ? フェノン、あれって何の魔方陣だ?」
リアはわたしに聞いてくる。少しは自分で勉強しろとしか思わないけど、どうみてもその魔方陣は召喚魔法の魔方陣だった。
「召喚魔法だね……けど何かおかしい……」
召喚魔法はモノを持ってくる魔法のはずなのに黒いローブの男たちはその魔方陣の上にモノを置いているのだ。
このまま魔力を流せば召喚魔法は成り立たずに小さく爆発するはず……そんなことをして何になるのだろうか?
「ようやくだ……我々の悲願が叶う……!」
「やっとだ。やっと地球に帰れる……待っててくれ、白雪……」
「「「ーーーーっ!!!?」」」
彼らの会話は明らかに地球に帰るという内容のものだった。そして全員が驚いた。
石塚くんが出ていこうとしたけど、わたしとクルミさんがそれを止めた。
一応彼らは勇者である。そんな人たちが地球に帰る手段を持つ人に接触したら横取りされると勘違いして、面倒ごとになりかねない。ここは黙って見過ごすべきだ。
「最後の実験だ。やるぞ……」
「ああ、数十年間かけた俺らの血と涙と汗で出来たこの魔方陣ならやってくれるはずだ……!」
彼らは魔方陣に魔力を流すと魔方陣の上に乗っていたたくさんの木箱が消えた。
「反応はどうだ!?」
「魔力探知機の反応がこの世界から消えた……成功だ!!」
「「「うおおおおおおおおっ!!!!」」」
そして3人の男たちは魔方陣に乗ると魔方陣は光出した。
「な、なんだ……!?」
空間に無数の亀裂が走る。おそらく無茶な魔方陣を使った影響なのだろう。空間が歪み始めている。
すると無数の空間から大量の魔物たちが出現した。
「まずはアイツらの救出、次に一時撤退だ。ここだと場所が悪すぎる」
「「「おう!」」」
「「「わかった!」」」
勇者たちの連携プレイは抜群でわたしやリアの入る隙なんてなかった。あるとすれば魔力の壁を作って逃げやすくすることぐらい。そしてすぐにローブの男たちを救出して一緒に逃げる。
わたしはクルミさんに抱っこされながらクラスメイトたちの最後尾を走る。
「魔力障壁って便利だけど、空からはね……」
ゴブリンやオークなどには有効なのだが、空を飛べるワイバーンやグリフォンは魔力の壁を無視できる上に速いので先回りされやすい。
今はまだクラスメイトたちが上手くやってくれてるから大丈夫だけど、走りながら魔法を放つと考えればそんなに長く持たないだろう。
「もうすぐ山を出るぞ!」
「お団子屋さーーん!!!」
わたしは山を出る直前にお団子屋さんを呼ぶとツバキさんの馬車が目の前に止まる。
「急いで乗って~!」
全員でツバキさんの馬車に乗り込む。かなりキツイけど、ツバキさんの魔法があれば馬の速さは魔物の速さの比じゃない。すぐに免れるけど、この山の近くには4つの街がある。
あまりモタモタしてる暇はない。
「とりあえず4つにグループを分ける。みんな必ず生きろよ!」
そして各10名ずつにグループ分けをしてツバキさんが馬車でそれぞれの街まで送ってくれた。
わたしは最後のグループだったが、街に着いた頃には既に魔物たちの先頭集団が見えていた。
「一気に凪ぎ払える人お願い!」
「「『エクスプロージョン!!』」」
わたしが頼むと二人の女子生徒が魔法を放つ。
かなりの数を撃退したが、それでも空間の亀裂から魔物が溢れているのかまだまだ大量にいる。
「わたしが街を守るからみんなは魔物をお願い!」
わたしは街の中に戻って、吸魔石を投げ捨てて街の周りに魔力を多重に漂わせる。そして魔力を切り離す。
すると魔力は宝石へと変わり、街を囲む多重大結界へと変わった。
「これでしばらくは大丈夫なはず……」
わたしが吸魔石を拾うとわたしの身体は小さくなってしまった。
どうやら魔力を使いすぎたみたいで、視界が安定せずに倒れそうになる。
「フェリナスちゃん!! 大丈夫!?」
倒れそうになったわたしを支えたのはエリーだった。
ここはどうやらエリーの家がある街だったみたいでわたしはその場で意識を失った。
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