第36話 フェノンの幼児退行(物理)
お母様が馬車に風魔法をかけて加速させ、馬が疲れたら回復魔法で蘇生というのを繰り返した結果、2日で屋敷にまで帰ってきた。
ちなみにわたしが馬車から降りた時のお馬さんは今にも死にそうな顔をしていた。
「ナタリー、帰ったよ!」
「お帰りなさいませフェノン様」
「随分嬉しそうな顔をしてるじゃないか」
ナタリーがわたしを抱っこするとクルミさんが隣に居た。
もの凄い甘えん坊で笑顔なところを見られてしまったと思うと恥ずかしくなって顔が赤くなる。
「うむ、それでこそフェノンくんだ」
クルミさんはナタリーに抱っこされたわたしを撫でると、後から来たクラスメイトたちと目が合った。
「田村!? お前生きてたのか!」
「王都では私が火葬されてるらしいが、王都の外ではこの通り生きてるよ」
「ややこしいことを言うな。でも生きててよかった……お前が死んだって聞いてみんな悲しんでたからさ」
それからクラスメイトたちが再開している間にわたしは外に出て「お団子屋さーん!」と叫ぶと一台の馬車が到着した。
これができるのはツバキさんが持つ馬車の専用魔法があるかららしい。具体的な原理は知らない。
「リア、久しぶり」
「お前聞いたぞ? 王子にヤられたんだって?」
思った以上に情報の拡散が早いお母様で少し困る。わたしはリアの頭を叩いて否定する。
「ヤられてないから。ほら、中に入ってよ。ツバキさんもどうぞ。よかったら泊まっていってください」
最近、わたしの腕がリアの頭に届かなくなりつつあることに少し苛立ちを覚える。
「じゃあ今日は泊まらせてもらおうかな~」
かなり多くの人数を泊めてるにも関わらずまだ部屋が余っているというウチの屋敷の余裕っぷり。普段どれだけ部屋を使ってないのかがよくわかるお泊まり会だ。
「ほらリア、入って入って」
「お、おい」
わたしはリアの手を強く握って逃げられないようにしつつ屋敷の扉を開けて、クルミさんにリアを渡す。
「おいフェノン!?」
「ナタリー、行こ」
リアが犠牲になってる間にわたしはナタリーに抱っこしてもらって部屋に戻り、制服から袴に着替えてリアを助けに向かった。
「お前うんこ漏らしだったのか」
「あうっ!」
わたしは唐突過ぎるセリフに腹を抉られ、階段から足を踏み外し、そのまま落ちた。
リアに向けて発した言葉だと理解したのは階段から落ちた後のこと。
「フェノン様大丈夫ですか!?」
「いたいよぉ……」
ナタリーは涙目になっているわたしの頭を優しく撫でながら抱っこする。
クラスメイトたちはわたしのことをジッと見つめてくる。
「フェノンさんって、子どもなのか大人なのかわからなくなるよね……」
「なたりぃ……」
ナタリーは「よしよし」と言って涙目で今にも泣きそうなわたしをあやす。
普段殴られたりしないので、わたしは物理耐性が殆ど無い。よって今回の階段から落ちた衝撃はとても痛く、泣きそうになる。
「いや、どうみても子どもだろ」
「そうね……」
ナタリーはわたしを抱っこしたままわたしの部屋に戻る。
「ふぇっ……」
「フェノン様、泣かないでください。よしよし、いいこいいこ……」
今にも泣きそうなというか若干泣いてるわたしをあやし続けるナタリー。ここまでナタリーがわたしをあやしたのは初めて。
それからしばらくしてようやく落ち着いたわたしはそのまま疲れて眠ってしまった。
「フェノン様、しばらく見ない間に子どもっぽくなりましたね。さて、着替えさせないと━━━━」
それからしばらく経ち、わたしは夢を見た。
『ようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょようじょ
よ~うじょ~♪ さ~い~こ~う~♪』
「うひゃあっ!?」
わたしは恐怖のあまりに目を覚まし、勢いよく起き上がった。
「はあ、はあ……ゆめ……?」
わたしはその場で大きくため息をつくと、股の辺りがやや生暖かいことに気づいた。
「あっ……」
「フェノン様起きまし━━━━おねしょしちゃったんですね。ふふっ」
ナタリーがわたしのおねしょを見たら何故か笑われた。
わたしは涙目になりながらも、ほっぺを膨らませてナタリーを睨む。
「フェノン様のおねしょの処理なんて久しぶりですね。まずはお着替えしましょうね」
ナタリーはわたしの服を全て脱がし、軽く湿らせたタオルで綺麗にした後、綺麗な服を着せてシーツと布団を取りかえた。
全てを終えたナタリーはわたしをお風呂で髪も身体も綺麗に流してお風呂に浸からせた。
濡れたシーツと布団は今頃ディアナが処理をしてるだろう。
「ん? こんな時間に洗濯かい?」
「はい、フェノン様が粗そうをしてしまったので」
何か怖い空耳が聞こえてきたような気がして鳥肌が立った。
わたしは何度も左右を確認するけど、お風呂場にはナタリー以外誰も居なかった。
「な、なたりぃ……」
「どうしました?」
ナタリーは至って普通の反応だった。
おそらく気のせいだと思う……というか気のせいだ。気のせいに決まっている。
「もう上がられますか?」
「うん……」
わたしはナタリーに連れられてお風呂場を出た。
「クルミさんだったね? どうしたの?」
「エマさん、フェノンくんの部屋で面白いことがあったらしいから映像を見せてくれないか?」
「いいけど……何があったの?」
「見ればわかるさ」
怪しげな変態二人はわたしの
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