第15話 フェノン、寮に行く
今日は遂にこの屋敷を出て寮に行く。
「フェノン、お前よく和室ごと持っていこうとするな?」
「でも入るならいいじゃん。どうせ減るもんじゃないんだし」
「いや、俺の魔力がごりごりと減っていくんだが……」
わたしはリアの空間魔法に入る限りのものを詰めていったが、和室の畳全てを入れたところでリアの魔力が底を尽きたので、これ以上入れることが出来なくなった。
空間魔法は入れる度にその大きさに比例して魔力を消耗するらしく、数日間に分ければいくらでも入れることが出来るらしい。
ちなみにリアの適性魔法は空間魔法と水魔法とか言ってたけど、絶対に何か隠してる。どうせチートな何かだと思う。
「フェノン、お前魔法使えないのに魔法学園行くのか?」
「うるさいなッ! わたしだって気にしてんのッ! だまっててよッ!!」
「あっ、はい。すいませんでした……」
リアは魔力が尽きて動けないので、抵抗することもなく謝った。
わたしはそんなリアを背負って、部屋を出た。
「ナタリー、長期休みになったら帰ってくるからね」
「はい、お待ちしてますよ。お気をつけてくださいね?」
「うん、わかってるよ。おかあさま、いってきます」
お母様はツバキさんと一緒に抱きしめあって、涙を流していた。
「ツバキ! フェノンがいっちゃうよ!」
「リアもだよ~!」
「どうしよう! 私を罵ってくれる人が1人減っちゃうよ!!」
もういいや、この二人は放置しよう。
「ディアナもいろいろ教えてくれてありがと。ヒツジ、おかあさまをよろしく」
「何かあったら頼ってくださいね」
「エマ様のことはおまかせください」
二人にも見送られたところでわたしはリアを背負ったまま屋敷を出た。
「なあ、フロウとかいう人に挨拶いいのか?」
「いいよ。フロウだし」
「うんこ漏らしが」
「ふり落としてほしいの? それならそうと早く言ってよ。この辺ゴブリン出るけどね」
わたしは涙を少し流しながらリアに言った。
「冗談だからそれは勘弁してくれ。ゴブリン堕ちだけはイヤだ」
リアは心底イヤそうに答えた。
……つまりそれ以外ならなんでも良いというわけかな? 奴隷商にでも売り飛ばしてやろうかな? 空間魔法からわたしの荷物取り出したあとで。
そんなこと考えてると前からゴブリンが来た。それと同時に左右と後ろからも魔力の気配がした。
「……囲まれた」
「マジ? お前剣とかは……持ってなかったな」
「それどころか扱えないよ」
「お前弱いな。お母様見習えよ」
少し上から目線にバカにされた感じがムカつく。コイツ本当にここに置いて行こうかな? あっ、でも荷物が……仕方ない連れて行こう。
「全速力で走るから掴まって」
「お、おう」
わたしは全身に魔力を流し、身体強化をする。すると全身が青白く光った。
そしてわたしは全力で地面を蹴り、ゴブリンたちの隙間を通り抜けてその勢いで街まで着いた。所要時間たったの5秒。普通の大人だと30分掛かるらしい。
「着いたよ」
「し、死ぬかと思った……」
まあ、空気抵抗えげつなかったからね。わたしは身体強化で大丈夫だったけど、リアは身体強化無しだから生きてるだけ凄いと思うよ。さすがエルフとドワーフの間の子。
ちなみにツバキさんはエルフでその旦那さんがドワーフらしい。ドワーフの旦那さんは冒険者学校の校長をやってるんだとか言ってた。
「じゃあ学園目指してズバッと行くよ!」
「ゆ、ゆっくり歩いてくれ……」
それからわたしはリアを背負ったまま学園の寮へと向かっていった。
「ジョシリョウキレイダナー」
「男子寮との差がひでぇな」
学園に着いたわたしとリアは男子寮と女子寮を見比べていた。
女子寮はこの前お母様が時間を戻したので新築みたいになってるけど、男子寮はそのままなのでボロボロで今にも崩れそう。
そしてわたしはリアを背負ったまま女子寮に入り、指定されてる部屋(前回の部屋)の前に立ち、ドアノブに手を置いた。
「おいノック」
「……」
前回誰も居ないのにノックした羞恥心が蘇ってくる。わたしの顔が少し赤くなり、その状態でノックして、前回同様「失礼します」と言って部屋に入る。
「また誰も居ないよ! ふんっ!」
「のわっ!?」
その場で少し拗ねる。そのついでにリアを投げ飛ばして二段ベッドの下の段に放り込んだ。
「フェノンきさま……」
「リアが悪いんだよ。それより早く荷物出してよ」
「魔力が無いから空間魔法が開けねーよ」
じゃあ必要な魔力量まで自然回復するのはざっと計算してだいたい1時間ぐらいかな? それまですることも無いし、とりあえず洋服に着替えよ。
わたしの洋服は着替えやすいワンピースなどのスカートが多く、逆にズボンはショートパンツ1枚しかない。これも全部ナタリーのせいである。
そしてわたしは洋服に着替えてリアが投げ飛ばされたベッドに座るとノックも失礼しますもなく部屋に入ってきた金髪縦ロール。間違えなく異常者。
「なんですのこの雑種どもは? わたくしの部屋は一人部屋なのではなくて?」
「申し訳ありません。ただいま手配致します」
「当然ですわ。こんな汚ないモノたちとわたくしを一緒にしないでくださいませ?」
執事みたいな人が手配するとか言って消え去った。それからすぐに執事が戻ってきて異常者は消え去って行った。
なにこの異常者ッ!? もしかしてよくある領主の娘的なパターンのヤツ!?
「ま、まあ、邪魔者が消えたと考えればいいな」
「そ、そうだね……」
確かにこれでこの部屋は3人部屋。最後の人が優しい人であることを祈るばかりである。
そんなことを考えてながら部屋をうろついていると最後の1人がやって来たのか扉がノックされた。
「きゃふっ!?」
そして次の瞬間勢いよく扉が開き、扉による攻撃を受けたわたしはその場で倒れた。
「し、失礼します!」
「きゅうぅ……」
「あれッ!?」
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