第14話 Yes ジャパニーズ Noピーマン
あれから2年が経ってわたしは7歳になった。そしてリアは時々屋敷にやってくるようになって、徐々に仲良くなっていった。
そんなある日のこと。わたしは夕食のパスタで、ピーマンを残してごちそうさまと言おうとするとナタリーが止めてきた。
「フェノン様……ピーマン、食べましょ?」
「いや」
ナタリーがわたしにピーマンを差し出してくるのをわたしはそっぽ向いて断る。
「食べないから身長が伸びないんですよ。リア様と比べるとかなり小さく見えますよ」
「ピーマンは関係ない。リアが大きいだけ」
「フェノン様、正直に申しますとフェノン様の身長は110cmぐらいですので、だいたい5歳児の平均と同じぐらいなんですよ」
近くにあった鏡を見るとハーフエルフであるわたしの耳がしょんぼりしてるのがよくわかった。
「ピーマン食べれば大きくなれますよ。はい、あーん」
「あっ……」
ナタリーがわたしの口にピーマンを押し込んできた。
「にがいよぉ」
「我慢ですよ! それを食べれば大きくなれますからッ!!」
しかし、この時わたしやナタリーを含め、全員が気づかなかった。
わたしの成長が遅いのはヒトとエルフの間から産まれたハーフエルフということが原因だったということに━━━━━━
「フェノン、あなたも
この世界では7、8歳の子どもは魔法学園という場所に最低3年間通わないといけないらしく、おまけに全寮制で食事をする際には学園にある食堂を利用しなければならないので、好き嫌いはなるべく無くした方がいいらしい。
けど、わたしはピーマンが嫌いなのであって、他の野菜が嫌いなわけではない。ゴーヤやトマト、ナス、きゅうり、玉ねぎは無理だが、キャベツやレタス、大根などは大丈夫である。
そして来週にその魔法学園の入学式があるので、少しずつ準備をしている。
「これで最後ですよ。あーん」
「んいっ!」
わたしはそのピーマンを目を瞑って口に入れ、水を飲んだ。
「はい、よくできました。では少し休んだらお風呂にしましょう」
「うん。おかあさま、ごちそうさまでした。失礼します」
「うん、じゃあね。お風呂入ったらすぐ寝るのよ。おやすみなさい」
「うん、おやすみなさい」
わたしはナタリーと食堂を出て、部屋に戻った。そして部屋にある5畳の和室に横になった。
「ナタリー、寮ってどんな感じなの?」
「そうですね……聞いた話だと四人一部屋で二段ベッドらしいですね。頑張ってお友達をたくさん作ってくださいね?」
オトモダチ? ナニソレ?
「リア様とお友達になれたのですから大丈夫ですよ」
ナタリーがわたしの頭を撫でて言ってきた。
でもそれはリアが女の子という部類から程遠い存在……前世の親友みたいな猫拾ってる優しいヤンキーみたいなヤツだったから仲良くなれただけで、一般人とは仲良くなれんよ。わたしは優しい不良としか友達になれない体質らしいから。
「そろそろお風呂にしますか?」
「うん、そうだね」
わたしはお風呂に入り、髪を乾かして和室に布団を敷いて寝た。
やっぱり和室は最高だぜ!
翌日、わたしはリアとお母様、ツバキさんと寮の内装を見に来ていた。
ちなみに寮は今日から使用することが出来るらしい。
「この部屋みたいね。フェノン、入る時は誰かいるかもしれないからノックしてから入るのよ」
「うん」
わたしは扉に3回ノックをして「失礼します」と言って部屋に入るが、まだ誰も居なかった。
……これ冷静に考えたら凄い恥ずかしいことじゃないッ!? だって朝一で来てるのにもう寮に入ってる人なんているわけないじゃん!! というかこの寮にいま居る人なんてわたしたちだけだよッ!? なんでノックしたのッ!?
「顔を赤くしてるフェノンも本当にかわいい……これがしばらく見れなくなるなんて……寮壊してしまいましょうか?」
「私もリアとは離れたくないけど~ここは親として見送るんだよ~」
「そ、そうね。我慢しないといけないわね」
部屋に入って内装を確認すると、部屋の内装はやや古く、二段ベッドなども木が傷んでいたり、クモの巣があったり、釘が錆びていたりと今にも壊れそうな感じだった。
「やっぱり~壊しておかない~?」
「そうね。こんなところでフェノンを生活させたくないわ」
「なら掃除すればいいだろ!?」
リアのツッコミに「それだ!」となる二人のおばさん。むしろその発想がないこの二人は相当ヤバイと思う。
「じゃあ綺麗にしちゃいましょう」
お母様とツバキさんが何か魔法を使ってベッドなどを新しく作り直そうと、全てを崩し、壊し、爆発すると━━━━━━
━━━━━━寮が滅んだ。
「おいっ!?」
「た、たまたまよ……ね? ツバキ?」
「そうだよ~たまたまだよ~?」
絶対途中でめんどくさくなったよね。途中までは1つ1つ壊していたのにいきなり爆発魔法使ったもんね? 周り見てみなよ。更地だよ。
「時間魔法で戻したら~?」
「そ、そうね……」
お母様の時間魔法で寮が出来立てホヤホヤになるまで戻した。
なんで最初からこの魔法使わなかったんだろ?
「フェノン、お前のお母様、マジヤバいな」
「全魔法適性だって」
「……チートじゃねーか」
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