第2話 お兄ちゃんは眼鏡とスーツが似合う『誘い受け』

 でも、だって、お兄ちゃん、ずっと決まった彼女いないんだもん!

 中学から目白の男子校に通ったせいか女の子の友達も少ないし、それよりなにより大学時代の友達、浅倉さんとすごく仲がよかったんだもんっ!

 ほとんど半同棲状態だったしっ、お兄ちゃんお料理できないから浅倉さん手料理つくってあげてたし、一緒にバイトもしてたし!

 お兄ちゃん、色白で切れ長の瞳が妙に色っぽいし、ピアノ習ってたせいか指先まで綺麗だし、あたしと違って頭の回転はやくて俺様でちょっと意地悪だし。

 絶対にもてると思うのに、ずっとずうううっと、ちゃんとした彼女、いないんだもん! 

 その時々には、女のひとの影があるの。

 でもね、それってこう、ステディっていう感じじゃなくて、いわゆるアソビ、みたいな。なんていうのかなあ、向こうから連絡とってきてお兄ちゃんがそれに付き合ってあげてるっていうの、わかるの。

 それなのに、こないだ浅倉さんに再会してからはいそいそ一緒に出かけるし、頻繁に自分からも連絡とってるし!

 お兄ちゃん、ストイックな眼鏡とスーツが似合うから『誘い受け』っぽいし、浅倉さん、細いのに肩幅あったりして、たまにドキってする切ない表情みせたりするんだもん。

 それにね、浅倉さんが靴を脱ぎっぱなしなのを見たお兄ちゃんが、きちんと揃えろよなんていって、浅倉さんが律儀に直すのみたりすると妄想モード入るよね?

 ってことで、


 あたし、


 書いちゃったの。


 ふたりの恋愛話を。


 もちろん、そういうシーンも入れて。


 ……


 どうやら、


 それを、


 お兄ちゃんに読まれてしまったみたい、なの、よ。


 ……


 ……えっと。


 でもね、


 お兄ちゃん、


 フランス文学なんて専攻してたくらいだから、男同士の行為くらい、べつに、たぶん、そんなに驚いたりしないと思うの。

 ほら、ジャン・ジュネとか? 

 ああいうの、原文で本棚にずらっとあるし(お兄ちゃん、フランス語も英語もドイツ語もペラペラなんだよ。凄いでしょ~)。

 それに、あたしが腐女子だってことも知ってるしぃ(少女小説ばっかり読んでたら、いつの間にかこんなになっちゃったんだもん)。

 というより、あっさりばれてるしい~(隠してても、わかっちゃうものよね)。


 うん。


 うん。


 だいじょぶ、ダイジョブ。


 あ、それとね、実はむか~し、浅倉さんに、お兄ちゃんがゲイじゃないかって尋ねたことあるの。浅倉さんはあの調子で否定したけど、あたしはまだ疑ってる。


 好きなひといないのかお兄ちゃんに尋ねたら、いっこ上の女の先輩の名前いったから。


 深町姫香さん。




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