オーディナリー・ライフ

阿紋

着替えて、カーテンを開け、外を見る。

昨夜うるさいほど吹いていた風と、

窓を叩いていた雨は止んだようだ。

窓を開けると、むせかえるような湿った空気が、

部屋の中に流れ込む。

ふと、置き忘れられたような暖炉を見て、

寒かった冬の日々を懐かしく思う。

机の上の書きかけのノート。

殴り書きされた文字は、

時間がたつごとに、

書いた本人でも判読不能になる。

そうならないうちに、パソコンに入力しなければならない。

少し考えて、机から目を離し、

窓の外の遠い景色を見た。


いつもと変わらない日々。

自分は変わることを望んでいるのか。

どうして自分はここにいるのだろう。

男は考える。

人の来る予感がする。

この予感は、あまり当てにはならない。

パンを焼こう。

パン焼きはかなり上達した。

焼きたてのパンに、

野イチゴのジャムをつけて頬張る。

牛乳からバターも作ってみたい。

そうか、粉が心許ないんだ。

「出かけるしかないのか」

男は思わず声を出てしまう。

「その前に」

朝食の準備をしよう。

ハムエッグを作って、

牛乳を沸かし、

その中に昨夜の食事で余った雑穀を入れる。

味付けは塩コショウ。

雨上がりの道はぬかるんで、

車輪のついたバッグは使えないから、

あまり重いものは買えない。

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