味噌っかすな私をなぜに隊長が溺愛するのでしょうか
はねうさぎ
第1話 私は特殊部隊所属、ジュエリー・アーカントです
私、ジュエリー・アーカントはリンジス王国の王室の特殊部隊に所属しています。
ここは王室の直属の隊だから、かなりのエリート集団なんですよ。
頭もそれなりに切れなくてはいけませんし、外見も重視されます。
そして何より強くなくてはいけません。
でもその特殊部隊の中で、私は味噌っかすなんです。
先輩たちは皆、ブロンドとか鮮やかなレッドなどの艶やかな髪なんですが、
私の髪は冴えない黒髪なんです。
他の方は皆スラっと背が高く、とてもスタイルがいいのに、
その中で私は一番背が低く、ちまっとしているとよく言われます。
皆さんとっても麗しい容姿をなさっておりますが、
私は目ばかりがギョロギョロと目立ち、全然パッとしない顔をしています。
未だに、なぜ私が王室の特殊部隊に入れたのか分かりません。
それでも皆さんは、私を気にかけ、庇ってくれます。
私はとても幸せ者です。
皆さんは私の事を親しみを込めて、エリーと呼んでくれます。
そうそう、言い忘れていましたが、
私達の特殊部隊は、別名家政婦部隊とも言います。
王家の皆様や、近衛騎士団、兵士上官の方のお世話をするのが本来の仕事です。
残念ながら、兵士の方以下の人には付きません。
皆さんが通って来た道です。
私達がお世話できるよう、頑張って下さい。
さて、お世話と言っても色々な物が有ります。
平常は洗濯、料理、掃除それぞれ係がいますが、
私達は騎士の方の身の回りの世話が主な仕事です。
私の担当は、第一部隊の隊長さんと、副隊長さんです。
なぜ新米の私が隊長さん達の担当になったのか、物凄く謎です。
でも、担当になったからには、誠心誠意お世話をさせていただきます。
隊長も副隊長も、とてもイケメンで、頭良し、スタイル良し、高身長、
つまり言う事の無い好男子です。
ただ、隊長はブロンドで、副隊長がシルバーブロンドです。
あとは隊長の方が、ほんのちょっと背が高いかな?
「隊長ー、お洗濯物は、これで全部ですか?」
今日も私は朝一番のお仕事を済ませた後、昨日の洗濯物を洗濯係に運びます。
隊長は朝シャン派なので、洗濯物は朝回収です。
「あぁ、すまない。
重くないか?」
「重くなんて有りませんよ。」
たかだか1日着ていた下着やアンダーシャツやタオル程度、
たまに隊長達の制服も洗濯しますが、よっぽどの事が無い限り、
それは隊員さん達がお休みの日の作業です。
ですから平日の洗濯物は大した量では有りません。
でも、それ以上に洗濯物がちょっと少ないんです。
「隊長、どうせ没収されるんですから、諦めて出して下さい。」
すると隊長が、顔を染め、諦めた様子で1枚の丸めた布を差し出してきた。
パンツです。
「もう、いい加減に諦めて、パンツも他の物と一緒に出して下さいね。」
なぜか隊長は、洗濯するパンツをなかなか出してくれません。
だから私はいつも実力行使でパンツを探しまくります。
結構大変なんです。
「エ、エリー、女の子がそんな言葉を人前で言ってはいけません。」
パンツって言ったらダメですか?
それなら何て言ったらいいんでしょう。
パンティーですか?ブリーフですか?さるまたですか?
「隊長、朝食はお部屋で取られますか?食堂に行かれますか?
副隊長はどうなさいますか?」
いつも食堂に行くと分かっているけど、取り合えず聞くのが決まりです。
「食堂に行くよ。」
私達の話を聞いていた副隊長が、くっくっと笑いながら答えた。
いつも思うけど、副隊長さんは笑い上戸の気があるようです。
騎士団の方達は、訓練兵、下っ端、兵士、騎士、といる中で、
騎士だから偉いんだぞ~、などと胡坐をかいている訳では無く、
任務の無い日は、厳しい訓練が有ります。
何と言っても兵士の頂点に立つ方です。
努力した結果騎士になられたのです。
それは今も変わりません。
その上隊長達は、その合間を縫って、会議や定時連絡も有ります。
つまり他の騎士様以上にとても忙しいのです。
私達と言えば、その間は暇かと言えば違います。
城の中の仕事には、色々な専門職が有りますが、
特殊部隊はそれらを全てこなさなければならない能力が必要とされます。
「ルビーお姉さま~~。」
「まあ、エリーちゃん、あなたにはそれはまだ早いわ。
火力魔法ではなく、風属性を使いなさい。」
そうか、だから焦げてしまったんだ。
今、私は洗濯物を乾かす訓練をしています。
お姉さま達は手早くこなしていますが、新米の私はそうもいきません。
全て1から習うので、覚えなければならない事が満載です。
するとエミリーお姉さまはから、違う気配がします。
あれはきっと風ではなく、温度を調節する魔法ですね。
あっという間に洗濯したてのタオルがパリッと凍り付き、ピンっと立っています。
エミリーお姉さまは、一体何をしているのでしょう。
私がじっと見ていると、お姉さまはそのタオルをパンパンと思い切り振りました。
するとタオルから、キラキラ光る粒が落ちて行きます。
「ルビーお姉さま、エミリーお姉さまは一体何をなさっていらっしゃるの?」
「あぁ、あれは時短ね。
水分を凍らせて叩き落とし、ある程度水分を飛ばしてから乾かすのよ。」
成程時短ですか。凄いです。
さっそく私も挑戦してみましょう。
タオルを凍らせればいいんですね。
私はタオルの両端を持って、氷、氷とイメージしてみました。
タオルはぱりぱりと音を立てながら、凍っていきます。
よし、成功だ。
そう思っていたんだけど、タオルは留まる事無く、凍っていきます。
「ひっ………。」
「エリーちゃん!」
ルビーお姉さまが、慌てて私から凍ったタオルを取り上げ、投げ捨てる。
「フーッ、助かった。」
「じゃないでしょ!
ほら、エリーの可愛いお手々がこんなに赤くなってしまって。」
しもやけですね。
「何をのんきにしているの。」
そう怒って、ルビーお姉さまが、私の指に治療魔法をかけてくれました。
「ありがとうございます。
良かった、証拠隠滅。
隊長さんにバレずに済んだわ。」
隊長さんは、凄く心配性なんです。
「あなたの主人には報告をしておきますからね。」
…逃げられなかった。
「とにかく新しい魔法を使う時は、誰かの見ている前でする事。
いつも言っているわよね?覚えていなかったのかしら?」
「すいませんでした………。」
さて、何故お姉さまたちが、洗濯から治療、
色々な事に、こうもパーフェクトなのか疑問でしょう?
それは騎士団の特殊部隊だからです。
あ~~~~、ちゃんと説明しますから、そんな目をしないで下さい。
つまり、私達特殊部隊の主なお仕事は騎士様が遠征や出張などに行く時に、
一緒に付いて行き、お世話をするのが仕事なのです。
それが私達特殊部隊です。
当然お世話する方達の身の回りから、共同で行う食事の支度。
(どこかのお屋敷に招かれた時などは免除されます)
それから武器のメンテや、繕い物、治療まで、
ありとあらゆるお世話が仕事なんです。
それから特別訓練も有ります。
担当する騎士様は、戦いや仕事で忙しいですよね。
忙しい騎士様に、私達の事まで気に掛けてもらう訳には行きません。
だから私達は自分で自分の身を守らなければいけません。
その為、あらゆる訓練のその中には、戦闘訓練も入っています。
その訓練に関しては、私は優秀株です。
もしかしたら、私が特殊部隊に合格したのは、
そのせいかもしれません。
話が逸れました。
これが特殊部隊です。
ですので私達は、騎士様の訓練中は、専門職の様に仕事をするのではなく、
時間が許す限り、私達も有りとあらゆる事を訓練しなければいけないのです。
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