【12】神誕生

 ルドラは思ってる以上に有能であった。

 移動速度は申し分ない。

 まぁテレポートに勝るものはないが、チート能力抜きにした考えを捨てれば、この世界では最高の移動手段かもしれない。


 更にこいつは頭がいい。

 まぁそのように改竄したんだけどね。

 ソールにも見習ってほしいものだ。

 ソールの偏差値が【2】としたら、こいつは【90】は軽くあるな。


 何がいいって、北の山脈はゲロ寒いらしい。

 こいつは結界を背中に張り冷暖房完備のような状態にしてくれている。

 乗り心地はふっかふかの羽毛布団のような感じ。

 普段は鱗に覆われてるのでガッチガチだが、俺の為にやってくれている……完璧な奴だ。


『殿、そろそろ着きます』


『着いたらお前は竜人になれ。俺は中に入る。

 恐らくお前は入れない仕組みと思う。

 外で待ってろ。暇なら狩りでもしてていいぞ』


『御意!』


 到着したので健汰は扉に向かった。


『開いたと仮定しても変なじじぃがいる予感がするのは俺だけだろうか?

 まぁいいけど、どうやったら開くとか知らんけど、敢えてここはベタに、ゴホン……開けーごま!!』


 …………シーン…………


『……でしょうねー!!誰もいねーけど、恥ずかしいわ!え?これ普通に名前言ったら開くとか、触れたら開くとかかな?

 じゃー戸河健汰。』


 …………シーン…………


『はいはい……触れるパティーンね!』


 軽く触れたら眩しい光に包まれて扉が開いた。


『はい!ファンタジー!ん?転移装置か?ここは素直に乗ってみよう』



 健汰は転移装置に乗り最深部に来ていた。


『目的地か……ってか、また扉かよ!うぜーなーいい加減……』


 同じ流れで開けると……


『やっと、来おったか!健汰様!遅いわい!

 もう、わしの寿命が終わる所だったぞ!』


『何だよ!いきなり!初っぱなから、うるせーな!』


『すげー待ったんだぞ!かれこれ半年も!』


『そんな、待ってねーじゃねーか!つーか誰だよお前!』


『あーわし?ゲイトってじじぃだよ。神じゃないよ』


『じじぃは見りゃわかるし、神じゃねーのもわかるわ。

 何してんだここで』



『お前さんがここに来るまでの門番じゃよ。

 それと、伝承の継承じゃよ』


『あー多分、継承は終わってると思う。

 俺の能力の全てが意味わからんレベルで高いから』


『え?そうなの?

 あと、わし代々神に仕えて来たのじゃが最後に仕えた神に言われたことがあってな、次に神になるものがいたらその者がこの世界の最後の神になるかもしれんと』


『は?

 ……まぁぶっちゃけ俺も、そこら辺の事を詳しく聞きたいんだがな。

 俺は何故このタイミングでこの世界に来たのかだ。

 チートの能力を持ってる理由は、あんたと話して理解は出来た。

 もしかしてだが最後の神が死んだのは半年前か?』


『その通りじゃよ。

 ただ今までの神に従うものは誰もいなかった。

 理由は神とは本来干渉しないものだからと言って、神自信が無関心だったのじゃ。それと最悪をもたらしたのも神じゃったからの。

 このまま争いが続けば、1つの種族の総取りになり他の種族は奴隷になるか滅ぼされるかじゃ。

 そなたはどう考える?』


『まず、話の流れからして、俺が神になるのは確定事項のようだな。それであれば俺が取るべき方法は3つある』


【1】<話し合いによる共存>

 口約束と書面で交わしても時間が経てば風化するので、神に従属した各種族の代表を眷属にして王にする。

 眷属であれば大きな問題は起こらない。


【2】<話し合いに応じない種族は滅ぼす>

 その後に眷属で不可侵領域を広げ、争いの種を消す。


【3】<全ての種族を消す>

 今の俺の能力なら種族別に一定数を召喚して配置できるからな。


『なるほどな、可能なら皆仲良くがいいけども、そうはならんじゃろうなー』


『俺もそう思う。

 最近考えていた事に何となくではあるが確証が出来た』


『確証?なんじゃ?』


『ゲイトって種族ドワーフだよな?』


『そうじゃが、それがなんだと言うのじゃ?』


『だよなー……

 俺はもうこの時より神になるとして、色んな部族の所で聞く話……

 あと、モンスターって言い方をしてその討伐を是としている状況を考えると……

 んー結局の所この世界に人間って必要なんか?』


『早くもそれに気付いたか。奴等は元々存在しなかったんじゃよ。

 この世界の神は歴代で6人いたんじゃ。

 本来この世界の神とは神の死に際に御告げの言葉があり次の者がわかるのじゃ。

 5番目の神が貴方様と同じ別の世界からの転生者だったんじゃ。

 彼は神の権限で人間を生み出してしまったんじゃ。

 人種はどんどん数を増し勢力も大きくなり、王を抱き王の統治で文明が発達し多種族を侵略し捕まえたものは奴隷にしたんじゃ。

 今では同族でも奴隷にしているとか。

 6番目の神が状況の修正をしようとしたが、人間には手を付けなかったのじゃ。

 前の神が創造した産物だからと』


『それって……自分が手を汚したくなかっただけじゃねーか。

 5番目も問題かも知れんが、6番目が1番クソじゃねーかよ!

 それでなにか?最期の御告げで俺に丸投げってか……

 クソ野郎はどこの世界にでもいるもんだな!

 ゲイト、安心しろ!

 俺がこの腐った連鎖を終わらせてやる!

 ゲイト、これより俺の供を許す!』


『ははっ!!

 それでは早速では御座いますが、神の種を食ってくだされ食べていただきますと、この世界の者全てに新たな神の誕生が知らされます。

 名前は隠しますがよろしいでしょうか?』


『構わん持って参れ。

 結局は人間の欲深さか……』



 健汰はどちらの味方になるつもりはなかったが、この状況を打開する方法は見えてきた。

 すごく長い道のりになる予感がしていたが健汰が種を食しこの世界に新たな神が誕生したのである。


『と、なればゲイト。

 ここに用はないが誰も入れぬ様に多重結界攻撃型を組み込む。

 さて、ゲイト俺は城に戻る故、共に参れ』


 健汰は脳内に語りかけた。


【通信】

『ルドラ聞こえるか?戻って参れ』


 ルドラはドラゴンの姿で戻ってきた。


『お待たせ致しました!神様!』


『ルドラ……いつも通りでいいぞ。さて、城に戻ろう』

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