邂逅のリベリオン

砂糖かえで

はじまり

 人類が文明を発展させながら平和に暮らしていた頃、地球へ直径10メートルほどの小さな隕石が飛来した。その隕石は大気圏突入後に爆発して砕け散り運よく燃え尽きなかった破片が地表へと降り注いだ。


破片のほとんどは大西洋に落ちたが、一部は南米大陸の北部に落下した。その中でアマゾン熱帯雨林に落ちた隕石の小さな破片。その小さな破片の中には微小な生物が潜んでいた。


 その生物は透明なゼリー状の体を持ち、内部に深い藍色の核を持っていた。

 やがて目を覚ましたその生物は破片の中からゆっくりと抜けだした。

 そして近くに生えている小さな植物を取り込み、自身の体の一部とした。続けて別の植物や土や水、小さな虫を貪るように取り込んでいき成長していった。


 半日で拳大に成長したその生物は近くを通りかかった四足の動物に寄生し、ものの数分で体を乗っ取った。その生物はそこで初めて生殖というものを理解する。しかしその生物には雌雄がなく生殖器官もなかった。

そこで考えたその生物は乗っ取った動物の生殖細胞に自身の核を削って埋め込み、変化させた。そうして同種の動物だけでなく別種の動物とも交配し仲間を増やしていった。




 半年後。種類も数も爆発的に増えていたその生物はとうとう人間を取り込んだ。取り込まれたのは地元住民。

 人を取り込んだことで多大な知識を得たその生物の一個体は無我夢中になって人を襲い始めた。呼応したように他の個体も次から次へと人を襲い始める。その中で知能を高め成長した個体は得た知識を元に自らの姿を新しく形作った。


 地元住民の相次ぐ失踪に異様なものを感じた近隣都市がアマゾン熱帯雨林へと捜索隊を出した。しかし途中で連絡が途絶え、誰1人として帰ってくる者はいなかったという。

 それから数日後。ついにその生物たちはアマゾン熱帯雨林から溢れだすように周辺諸国へと進出した。突然のことに戸惑う周辺諸国。住民たちはその生物たちに為す術もなく食われ、取り込まれていく。その異常事態に周辺諸国はついに軍隊を出動させた。


 住民を守るべく現場に駆けつけた軍隊が目にしたのは、人型や動物型をした化け物たちが人々を襲う様だった。人型や動物型といっても、本物らしい肉体を持ったものだけでなく、金属や岩石、植物、水、土で体を構成しているものもいた。

軍隊は化け物じみたその生物たちを殲滅するべく攻撃を開始。

次々と終わりなく出てくるその生物たちに軍隊は苦戦する。しばらく拮抗状態が続き、その生物たちが人類の作りだした兵器や機械を取り込み始めたところから一気に戦況が変わった。軍隊側が押され始めたのだ。


 そして、軍隊側は……壊滅。敗北に終わった。


 戦力を高めて増殖し続け、勢力範囲を拡大していくその生物たちは南米大陸の南部や北米大陸へと進出。

人類滅亡の危機を感じた国際連合は、その生物たちを貪欲な姿から『グリード』と名づけ、世界各国へ支援を要請し、対グリード国際連合軍を結成する。

対グリード国際連合軍は持てる全戦力を投入して、アマゾン熱帯雨林を中心に総攻撃を仕掛けた。


 その戦いは『地獄の拷問』と呼ばれるほど壮絶を極め、多くの犠牲を払った。

しかし長い月日を経て、人類側の勝利で一応の決着をみた。




 それから10年後。対グリード国際連合軍は一時解散したものの、厳重に警戒を続けていた。

当時の悪夢に眠れぬ夜を過ごしていた人々も、グリードは本当に絶滅したのだと安心し始めていた。


 だがしかし、悪夢は再び訪れた。


 突如として世界各国に殲滅したはずのグリードが大量に出現。グリードは再び人を襲い始め、世界中は大混乱に陥った。

 自国を防衛するのに手一杯で、対グリード国際連合軍は上手く機能しなかった。そこで国際連合は世界各国に超巨大地下都市の設計図を送り、建設を急がせた。

 国民を守りつつ、多大な犠牲を払いながら地下都市建設を急ぐ世界各国。

その最中、グリードは人を襲うだけでなく、世界各国のシンボルや目立つ場所に血で大きく、人類に向けてメッセージを残した。

 そのメッセージは、


『どちらが頂点に相応しいか、決着をつけましょう』


 という宣戦布告を意味するものだった。

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