第91話【Memories】

喫茶店にやって来た一同。


「俺の古い知人が居るんだ」


コーヒーを飲みながらフギットが話す。


「それで?」

「その知人は俺と同世代でね、 昔は魔導義肢はもっと機械の様だったから

偏見の眼で見られたよ、 しかし彼女は俺に普通の人と変わらず接してくれた

もしも彼女が居なかったら俺はヤバかっただろうな

根性が曲がったひねくれ者になっていただろう」

「今でもそうだけどな」

「何か言いました先生」

「いや、 何も」

「兎も角、 俺の古い知人のアモールを助けてやりたい」

「助ける・・・って事はその人は怪我人なの?」

「・・・あぁ、 彼女、 アモールの家はとある商会の会長令嬢だが

次女で家は継がないから冒険者としても活動していた

しかしある日大怪我を負って家に帰って来た」

「大怪我?」


フギットは俯いて語った。


「体の半分以上が無くなっていた、 辛うじて生きているのも吃驚なレベルだ

人造臓器が無ければ危なかっただろう」

「人造臓器?」

「あぁ魔導義肢が人が作った腕ならば人造臓器は人が作った臓器だ

かなりの高額だが跡継ぎが急死して彼女を生かさなければならないから

急遽つけられる事になった、 俺も彼女を救う為に魔導義肢の開発を進めた」

「問題が無いようには見えないけど?」

「・・・?」

「あ、 魔導義肢は問題無く動いている様に見えるって意味だよ」

「これか、 これじゃあまだ駄目だ、 人間の腕とは程遠い

完全な人間の手足の再現、 これが目標だ

俺が着けているのはハイエンドタイプで戦闘にも使えるがまだまだ

人間の質感には程遠い」

「あんた学者先生だろ? 何で戦闘する必要が有るんだよ」


モルガナが尤もな質問を尋ねる。


「じゃあ聞くがアンタが義手を作ったとして

最高の義手を他の業者が作ったら如何する?」

「努力して上を行くよ」

「アンタの様な人間ばかりなら世間は平和だが

世の中、 上を消そうとする人間も居るって事だよ」

「・・・おっそろしい世界だな」

「俺もそう思う、 とは言えだ、 今回、 お前の治療魔法を見て

俺の苦労が徒労に終わった」

「ごめんなさい」


謝るロダン、 しかしフギットは笑って言った。


「いや、 前々構わない、 アイツが元気にまた立ち上がってくれるならば

俺の人生が丸ごと無駄になっても後悔はねぇさ

まぁ残念に思うが構わない、 俺の依頼はアモールを治して欲しいんだが出来るか」

「やるよ!!」


ロダンは立ち上がって叫んだ。

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