第92話【Privacy】

アモールが住んでいる区画に案内するフギット。

アモールが住んでいるのは高級住宅街区、 カレーの街の富裕層が住む区画である。

明確に区切られており、 そこには貴族の邸宅と見間違うかの様な建物が

幾つも並んでいる、 入るには関所を通過しなければならない等

警備も重点的に行われている。


「フギットさん、 こんにちはー」


関所の警備員が挨拶をする。


「こんちは、 今日はちょっと治癒が出来る奴を連れて来たんだ」

「治癒ですか、 アモール様の怪我を治せるレベルの人が居るとは驚きですね・・・」

「腕は確かだ」

「貴方が言うのならば・・・」


フギットはロダン達を連れて区画内に入った。


「・・・検査とかしないのか?」


カリエが尋ねた。


「俺は顔パスだからな」

「何故?」

「俺は物凄い奴だからな、 こう見えても魔導義肢が欲しい富裕層に

幾つも魔導義肢を作っているから信用も有るんだ」

「へぇ・・・」


区画内は綺麗に清掃されており警備員が巡回していた。


「フギットさん、 こんにちはー」

「こんにちは、 何時も御疲れ」

「いえいえ」


挨拶を躱しながら区画の奥に進むフギット。


「そのアモールって人は何処に居るの?」


ロダンが尋ねた。


「まだまだ先だよ」

「変だなぁ・・・」

「何が?」

「怪我人が居る、 と言う感じが全然しないんだよ、 ここら辺・・・

不思議だなぁ・・・」

「怪我をしたら病院に行くからじゃないの?

お金持ちだし怪我を直ぐに治すと思うけど」


花子が呟く。


「怪我人が居るとか分かるのか?」

「うん、 何となく」

「ふむ、 それはあれじゃないか? この区画の屋敷には結界が張ってあるからじゃないか?」

「結界?」

「そう、 万が一カレーの街が攻撃を受けた時に魔法の影響を受けない様に

この区画と屋敷には結界が張ってある

その結界の影響でお前の勘が働かないという場合がある」

「はぁ・・・なるほどぉ・・・ならば僕はその結界の中も見通せる様にならなくては」

「止めろ、 プライバシーの侵害になる可能性が在る」


プライバシーは大事である、 それはこの街でも同じ事なのだ。


「ぷらいぱしー? それって怪我人を治すよりも大事な事なの?」

「うーん・・・命よりは大事ではないが・・・

あまり人の家に首を突っ込むのは如何かと思うぞ?」

「ふーん・・・」

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