閑話【家族会議・ショウ家】

「父上、 一体陛下の仰った秘密とは何ですか?」


ラッパは帰りの馬車でヒューグルに尋ねる。


「それは言えない、 これは私でも精神に来る類の秘密だった」

「そんな悍ましい秘密だったのですかあなた」

「あぁ・・・君は知らない方が良い・・・だがしかし我が家の腹は決まった」

「決まった?」

「我が家はソク家のバックアップをする」

「何ですと?」


驚愕するラッパ。


「先程、 シロナが暴れてシロナを牢屋に衛兵が放り込んでいる時に

ダイヤと話すチャンスが有った、 その時に決まった」

「確かに私は聖者でバックアップ向きの職業ですが・・・」

「いや、 ラッパは待機だ」

「は?」


間の抜けた声を出すラッパ。


「君は大事な跡取り、 早々に危険な戦場に出す事はしない

無論私もクララも出ない」

「なっ!? で、 ではバックアップと言うのは!?」

「金と兵隊だ、 戦力では大した事無いが分家の者達に頑張って貰う事にした」

「あなたらしく無いですわね」


クララが口を挟む。


「前線に出ないまでもラッパに治癒等をさせたら如何ですか?

少々消極的過ぎる様な気もします」

「命は大事だ、 死なない様にするべきだと私は思うよ

死ぬのは身分の低い者達に任せれば良い」


ギリッと歯軋りをするラッパ。

こうまで人を見下す理由は一体なんだ?

自分がどれだけ恥知らずな事を言っているのか分かっているのか?

怒りにも似た感情が沸き上がる。


「酷い父親だろう?」

「え?」


ラッパがヒューグルを見る。

ヒューグルはラッパが今までに見た事の無い表情をしていた。

まるで自嘲する様なそんな表情である。


「私とて良識は有る、 自分でも酷い事を言っていると思う

でも仕方のない事なんだよ

我々が生きる為には誰かに犠牲になって貰わないといけない

貴族とはそういう物なんだ」

「父上・・・」

「あなた・・・」


ラッパとクララはヒューグルを見る。


「さてと・・・御者!! 一回止めろ」

「はい?」


御者に声をかけるヒューグル。


「後ろから分家の者達が追って来ている、 方針を彼等に伝えて来るよ」

「あなた・・・」

「大丈夫だ、 こういう言い回しの仕方は私の最も得意とする所

上手い具合に言いくるめて来るよ」


心配する妻を後目にヒューグルが馬車の外に出て行った。


「・・・母上は何か思う所は無いのですか?」

「信頼出来ない夫に嫁いだ覚えはありません」


クララは言い切った。

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