閑話【家族三人】

ラッパが礼服を着て外に出る。


「既に御両親は馬車です」

「・・・父上と母上と同じ馬車で行くのか?」

「えぇ、 護衛も付けていますし分散させる意味はないと」

「護衛・・・この世界で我々の敵は居ないのに・・・」


ラッパは溜息を吐いてショウ家の家紋である喇叭と槍の紋章が描かれた馬車に乗った。


「まぁまぁラッパちゃん、 遅かったじゃない

従者が怠けていたのかしら? 首にしようかしら?」


ラッパの母親、 クララ・リオン・ショウがふくよかな体躯で嘆く。


「直ぐに首にするのは良く無いさクララ」


はっはと気楽にしているのはラッパの父親で

ショウ家当代当主ヒューグル・ホーン・ショウ。


「そうかしらあなた?」

「遅れても数分じゃないか、 君は神経質過ぎるんだよ」

「でも・・・」

「まぁまぁ良いじゃ無いか、 ラッパ、 座りなさい」


ラッパが両親の眼の前に腰かける、 そして馬車が走り出す。


「こうして家族三人で向き合うのは何時振りかしら?」

「最近ラッパがお友達と外食するから家族で食事が出来ないからねぇ・・・」

「うーん、 ちょっと問題じゃ無いかしら? 悪い友達だったら母さん心配よ?」

「私の大事な友人です、 貶めないで下さい」


ラッパが淡々と言う。


「大事な友達ねぇ・・・ラッパちゃんの審美眼には母さん疑問が有るんだけど」


クララが首を傾げながら言った。


「何でですか? この聖者の私の眼が信用出来ないと?」

「聖者の前に自分の息子よ? 可愛い可愛い私の子供

子供の事を心配するのは親として当然じゃない?」

「まぁまぁラッパが友人と認めるのならばきっと忠実な友人なんだろう」

「忠実と言うのは部下に使う言葉では無いのですか父上?」

「だってその友人の家柄は大公じゃないだろう?」

「・・・はい、 そうですが・・・」

「ならば君と友人関係を結ぶには君に忠実でなければならないだろう?

家柄が下の人との友人関係と言うのはそう言う物だろう」

「・・・・・」


両親の考え方にうんざりするラッパ。

二人は仲の良い夫婦で愛し合っている。

その愛し合っている理由は『互いに良い生まれだから』である。

しかもそれで相思相愛なのだ、 権力しか目に入らないのなら分かる

しかし生まれが良いだけでそれだけで愛し合う理由になるのだ

少なくとも互いに浮気や愛人は居ない。

両親の考え方がラッパは嫌だった。

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