閑話【乱れた部屋と男】

Odevu verseのショウ家のラッパの自室。

滅茶苦茶に荒らされていた。


「ラッパ様、 失礼します・・・

な、 こ、 これは一体何が有ったのですか!?」


部屋に入った従者が尋ねる。


「・・・・・私がやった」

「ラッパ様が・・・? 一体何が・・・」

「一体何が? 自分の婚約者が放逐されたんだぞ?

荒れない方が可笑しいだろう」

「そ、 そうですか・・・ラッパ様はお優しいですね」

「当然だ、 私は優しい男だ、 慈しみ慈愛に溢れている・・・

それで?」

「それでとは?」

「お前はノックも無しに私の部屋に入った訳だが・・・」

「失礼しました、 ドアが開いており、 更に緊急でして」

「・・・暴れた時に開いていたのか・・・緊急とは?」

「王家から登城命令が来ています」

「なんだと?」


困惑するラッパ、 王家からの登城命令。

ラッパが記憶する限りそんな命令余程の緊急事態で無ければ行われない筈。


「・・・私が何かしたのか?」

「いえ、 御両親にも登城命令が来ていますので・・・」

「家全体の問題か? 分かった直ぐに準備をする」

「は、 はい、 御両親は準備が出来ているのでお早目にして下さい」

「分かった・・・」


倒れたクローゼットを起こしてから礼服を取り出すラッパ。

礼服に袖を通して確認をしようと鏡を見る。

鏡は割れている。

割れた鏡を見て自嘲するラッパ。


「モルガナ・・・何で・・・」


憂鬱になるラッパ、 自分はモルガナを愛していた。

その為、 誰にも奪われない様にモルガナの評価が落とす様な事を言っていた。

本人にも「お前は誰にも評価されていない」と度々言って

評価が上がらない様にしている。

本来ならば王立各園にも根回しをして退学にさせたかったが

流石に学園を中退では自分の妻としては恰好が付かない。

その為、 態々譲歩して通う事を認めているのに

教官と稽古をしている、 教官を解雇したかったが五大公の分家だったので

何も出来ず仕方なく我慢していたというのに。


「あれ程、 行動を見逃していたというのに何で俺を殴ったんだ・・・

男自体嫌いなのか・・・?」


ぽろぽろと涙を流すラッパだった。


「ラッパ様、 まだですか」

「・・・すまない、 今袖を通した、 タイを付けてくれ」

「分かりました」


リボンタイを従者に結ばせるラッパ。

割れた鏡で自分を確認して部屋を出るのだった。

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