第73話【Careless forward】

Odevu verseから出て来たモルガナを待っていたのは太陽の光。

たいよーでぶ妖精の腑抜けた光では無い暴力的で情熱的な日光。


「でぶ妖精には悪いがこの太陽の光は眩し過ぎる・・・まるで孕んでしまいそうだ」


たいよーでぶ妖精は多分モルガナの事を何とも思っていないので

寝取られには属さない。


次にモルガナを襲ったのは暴力的で荒々しい緑の香り。

森の中に転移した様だ。


「畑とは違うな・・・野生の強さをしっかりと感じる

まるで巨大な生き物の中に入ってしまった様だ」


丸呑みとは上級者である。


モルガナは空を仰ぎ見て回りながら動き回った。


「ふふっ、 素晴らしい・・・この世界はまるで生命の」


言葉を最後まで言う事は出来なかった。

モルガナが立っていたのは崖である。

哀れ、 モルガナは崖から落ちて無惨にも骨折をしたのだった。


「いてぇ・・・いてぇ・・・ははは」


あらゆる事が素晴らし過ぎて笑いが零れるモルガナ。

何と素晴らしいのだろうかこの世界はっ!!


「・・・・・」


とは言え骨が折れた以上添え木をしなくては。

ジルから渡された斧で枝を切り落として添え木とするモルガナ。


「ふむ・・・こんな物か、 それでは次は食事にでもするかな」


食事、 つまり狩りである。


「確か動物を見つけて殺して肉を食うんだったか・・・」


Odevu verseでは確実に無い事である。

Odevu verseでは肉も木から生るのだ。


「とは言え動物が都合良く現れるか・・・まぁ探していれば会えるだろう

骨が治る頃には動物の一匹位」


世の中、 そんなに甘くない、 骨折が治ってからなんて悠長な事は言わない。


「ん?」


モルガナの所に現れたのは彼女よりも巨大な熊であった。


「なるほど、 私を食べる気か、 良い、 良いよぉ

この命を脅かされる感じ、 最こ」


全て言葉を言い切る前にモルガナの顔面を引っ掻く熊。

当然ながら顔に傷が出来て血が噴き出す。


「良い・・・良い!! 最高だッ!! これが生きる!! 生きるって事かぁ!!

あはああははははははははははははははははっははっはははっはははっはぁ!!」


哄笑を挙げながら斧を振り上げて熊に向かって突撃するモルガナ。

彼女に有るのは傷付けられた痛みよりも生きる喜び、 それが全てを占めていたのだった。

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