「女子高生」「花」
亜中洋
毎日投稿する短編
私は学校の長期休暇に合わせ、アフリカ某国に青年海外協力隊としてボランティア活動に来ていた。
今日は花の農場へ見学兼手伝いが活動内容だった。
高地の適した気候を利用した農場で生産されたバラは世界中に出荷され、現地民に安定した雇用を生んでいる。
この農場で働いているのはほとんどが子供だ。
このあたりでは働くことは子供の仕事という価値観が根を張っている。
食事をするにもまず大人が食べ、その残りを子供が食べる。
もちろん学校に通うという文化も無い。
そもそも子供と大人という区別は近代になってからの・・・・・・それは置いといて。
様々なNGOが学校を建てているが、子供達は働く時間を確保するために、だんだんと学校に来なくなってしまうという。
こういった文化を悪と断ずることが差別の温床となるのだろう。
それでも私は自分よりも十も年下の子供が働く姿を見ると“同情”してしまう。
この農場は子供に安定した雇用を与えることで、学校に通う時間を確保するという目的もあって運営されている。
午前中は農場で働き、午後に学校へ行く。
陽が昇り、暖かな大気が私を包む。
それに伴って、岩の陰の露が日差しに溶かされてゆく。
標高2000mで体感する快晴は、宇宙まで見透かすことが出来そうだった。
そんな大自然を目にした反動で、来年の受験のこととかちょっと俗っぽいことを考えてみたりして。「広い海を見ていると、自分の悩みがちっぽけに思えてくる」なんてセリフがあるけれど、現実はどこまでいってもリアルに自分の背後に付いてくる。
私は今日の体験をいつまで憶えていられるだろうか。
いつかは“現実の自分”ではない“過去の自分”の体験になってしまう。
私は籠の中の間引かれたバラを自分の髪に差してみた。中央部が黒にちかい赤で、外側にいくほど明るい赤のグラデーションになっているバラだ。
私の様子を見た少女が自分の髪にもバラを飾り、微笑みをくれた。
「女子高生」「花」 亜中洋 @anakayo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます