第41話 第1回イベント前半戦5
イベント開始2日目、今日は西の大陸の三層目、'ロックロックマウンテン'が仕事場所らしい。
名前から想像できると思うが、とにかく岩の多い山だ。
魔王としてログインしてから、既に7時間以上が経過している。
正直な感想を言えば、消化不良だ。
このイベントが決定した時に、学の話では1日に千人以上と戦う可能性があると言われていた。
それを聞いた俺は、色んなスタイルのプレイヤーと戦えるのを、結構楽しみにしていたというのに……
しかし蓋を開けてみれば本日戦闘したのは40回程度、
稼ぎは12100w、時給にして、たった20円だ。
超絶ブラックだ。
レベルアップは無し。
アイテムもこんな山じゃなにも見つけられない。
モンスターすら出て来ないときた。
やばい、愚痴が止まらなくなってしまう……
冷静になろう。
何故こんなに人も稼ぎも少ないのか?
俺は今日1日を振り返ってみる。
思い当たる理由は2つあった。
まずプレイヤーが戦闘に参加してこない事。
俺を見ると、遠くに行ったり、光と共にログアウトする人間が多数存在した。
これに関しては、気になる点が1つ。
ログイン最初はバトルには発展しないものの、人間とのエンカウント率は昨日と変わらなかった。
しかし時間が経つにつれて、そもそもプレイヤーに遭遇する事自体が少なくなっていった。
また、常に一定の距離をとって、観察に徹するプレイヤーも数人確認出来ている。
今だってこっそりついてきたり、岩に隠れながら俺の様子を見ているプレイヤーは何人か居るだろう。
まだ炎の魔王の情報が出ていないからだろうか?
それとも配信者?
もしかしたら不意打ちを狙っているのかもしれない。
どちらにしろ積極的に挑戦してくる人はあまり居なかった。
次に戦えたとして、プレイヤーの所持金が少ない事。
今日だって40人以上は倒しているが、奪えたwワールドは平均300w程度、0wも何回かあったのを覚えている。
流石にプレイヤーも考えなしではないか……
おそらくは、所持金を使えるだけ使ってからイベントに参加しているのだろう。
もしかしたら所持金を、アイテムや装備に替えておいて後で売るつもりの人もいるのかもしれないな……
あぁ、追加でもう1つ。
「我がライバルよ、再び出会えると信じていたぞ」
今日倒した内の10%以上が、この堕天使系勇者だという事だ。
もう6回は倒している。
それでもルシファーは一定時間毎に現れる。
俺がこの場所にいる事を知っているからだろうが……
しかも毎回鎧が違う。
正直面倒だ……
なんせ、こいつを倒しても100wも貰えない……
「いざ、勝負」
そんな事はお構いなしに勝負を挑んでくる勇者ルシファー(35)。
もはや俺が勇者を攻略した。
少し前に剣を褒めたら嬉しそうに語っていたのを思い出す。
奴の剣が光っている理由は'発光'と言う魔法を使っているから、だそうだ。
1の魔力消費で1分間武器を輝かせる効果がある。
断じて能力が上がるわけではない、ただ光るだけだ。
魔力は剣を輝かせる為だけにあるみたいで、それ以外の魔法は覚えていないらしい……
「うぅ、勝てない…… クソッ、我は決して諦めんぞっ! また見つけ出して必ず倒してやるのだ」
本日7回目の捨て台詞と共に光となって消える勇者。
経験値になるからいいのだが、今回は37wしか貰えなかった。
そのまま22時になってしまった様で、俺の体は光に包まれ、目の前は暗闇に染まる。
なんか長かったなぁ
闇を駆ける光が完全に無くなり、目の前が真っ暗になったことを確認した後にマシンを外す。
何故だろう?昨日よりもかなり疲れた……
今日はもう遅い、このまま寝てしまおう。
念のため、メールや着信が無いかだけは見ておく。
通知はゼロ、明日の予定は18時〜26時、もしかしたら深夜帯にしかログイン出来ないプレイヤーとも戦えるかもしれない。
このままイベントが終わってしまうのはつまらない。
わざと負けるか?
それとも手札を全部曝け出すか……
俺の情報をネットに流すのは…… 法に触れそうだからやめておくか。
自分なりにどうすれば良いかを考えている内に俺は眠りについていた。
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