第38話 第1回イベント前半戦4


 ピロピロピロピロピー

 ゲームの世界から戻ってくると、部屋には携帯の着信音が鳴り響いていた。


「もしもし」


 相手を確認せずに電話にでる。


「あっ、もしもしー! 裕くんお疲れ様ー」


 やはり学だ。


「1日目ありがとうねー、こっちで強制ログアウトさせちゃったから自分の所持金とか覚えてないよね?」


 そういえば俺はどのくらい倒したのだろうか?

 最後の方はアイテム集めに夢中になって、なんか大きいスライム出てきて……


「ごめん、覚えてない」


 正直に告白する。


「ん、大丈夫だよー!裕くんの結果は76人撃破、所持金は134,930wで終了してるねー」


 1回も倒されなかったのはリーダーと裕くんだけだよー

 そう追加して学が教えてくれる。


 そうか、鈴木さんも倒されなかったのか。

 あれだけやって1349円しか稼げてない……

 明日は積極的に倒しにいくか。


 

「でね、これからが大事な話なの、事前に予測した人数よりも、初日に魔王との戦闘に参加したプレイヤーが少なすぎるんだ、

 今、理由を考えているんだけど、何か心当たりとかあるなら教えて欲しい」


 電話越しに伝わる雰囲気が変わる。

 俺は倒したプレイヤーを思い出す。


「今日当たったプレイヤーはレベルが低かった、後はゲーム初心者が多かった気がする」


 1人変な勇者も居たが、あいつは報告しなくて良いだろう。


「知恵ちゃんも同じ事言ってたね、ネットの情報だと高レベルプレイヤーは、深い層で待ってたらしいから会えなかったのかも……」


 そうだよな、もしも魔王が出てくるなら深い層だ、と思うのは至極当然のことだろう。

 他にも自分がプレイヤーだったらどう考える?

 このゲームでの死は現金を失う事と同じ意味を持つ。


「デスペナを恐れて様子見って可能性はないか?」


「やっぱりそう思うよね、僕達も情報が出揃うまでは動かないプレイヤーが多数いるって結論に落ち着いたよ」


 どうやら同じ推測をしたようだ。

 オンラインゲームのイベントといえば積極的に参加するものだと思っていたが、リアルのお金が絡むと人は消極的になるらしい。

 また積極的に参加するプレイヤーでも、魔王の動きやスキルの詳細等の情報を解析してから行動する人もいるのだろう。

 本気で稼ごうとするならば、事前準備は念入りにする筈だ。


「もしこの推測が正しいなら、明日からもプレイヤーとの戦いはそんなに出来ないかもね、出来たとしても所持金を使ってから突撃してくるパターンも考えられるかも」


 ちょっと誤算だったねーと、いつもの調子に戻った親友は情報ありがとね! と伝えると同時に電話を切った。


 俺は魔王としてゲームをやるだけだ、でも学達はゲームが発売されてから、初めてのイベントを成功させる為、ずっと働いているのだろう。

 自分の作ったもので最高に楽しんで欲しい、すっかり小学生のイメージがついてしまった親友が、そう言っていたのを思い出す。

 少し羨ましい……

 それ以上に素直に尊敬する、絶対に本人には言わないが。


 仕方ない、稼いでやるか

 やる気が出てしまった俺はネットで情報を集めることにした。


 ピロンッ

 携帯がなる。


 丁度、携帯を開いていたのですぐに開封する。


 'やっほー、情報共有だよー

 スレ板情報

 1.高レベルプレイヤーは第四層で待ち構えていたらしい


 2.雷の魔王が1番楽だと噂されている


 3.今のところ不満は見当たらない


 配信者情報

 1.魔王に負けた動画が結構多く配信されている


 2.聖なる石をある程度集めるまで、戦わない方が良いと書いてある記事が多い


 3.雷の魔王を安定して倒せる方法がもうすぐ見つかるかもしれない


 今の所こんな感じかなー

 これからも色々探してみるから、裕くんも大変だけど頑張ってね!


 ps

 明日は14時〜22時だからねー           '



 気がつくと笑っていた。

 本当にコイツは……


 俺は明日に備えて寝る準備をする事にした。

 

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