第28話 魔王vs魔王4
俺は考える。
さっきと同じ相手の動き、相手の攻撃力やさっきの攻防を参考にしても、抵抗なくダメージを喰らった所で1発退場にはならないだろう。
紫一色の景色や、ノートに書いてあった言葉、さっきの攻撃といい、魔王ベルゼブブが毒をメインでプレイヤーを追い詰める戦闘スタイルなのは間違いない。
だとしたら相打ち覚悟で胴体に攻撃を仕掛けるのが1番効率が良いのではないか?
気掛かりなのは大き過ぎる魔力と一切使って来ないスキル。
対複数人補正がある以上1度に召喚して貰えれば今回も楽勝だと思っていたが、全く召喚されないとは思わなかった
何かしらの理由はあるのだろう。
思い付くのはスキルを使うのに条件があるパターン、
オーソドックスなのは一定以上のダメージか、時間経過あたり。
もしも相打ち覚悟のカウンターを選べば前者の条件を間違いなく達成される。
どんな蟲が出てくるかわからないが、此方が不利になるのは間違いない。
次に様子を見るために回避に専念する方法、
時間経過がスキル発動の条件だった場合は悪手だが、それ以外ならもっとも安全な策だ。
魔王とはいえボスならば特定の行動パターンがある、
それを全て把握した上でカウンターを決めれば良い。
あぁ、楽しいな
リアルではない緊張感、
普通のゲームでは味わえない臨場感、
実に生きている感覚だ。
これだから俺はゲームから抜け出せない。
さて、どうするか?
相手のスキル発動条件については全て推測、答えがわからない以上自分の勘を信じるしかない。
俺はこうゆう時にとる選択を決めている、
勿論ワクワク出来る方だ。
それが最適解ではないのを知っている。
でも、ゲームの中で位、ゲームの中だからそこ、自分の欲求に従っても良いだろう。
選んだ行動は向かい撃つ事、
全力で攻撃する為、左手から両手に持ち替えたシルバーソードを上段に持っていく。
勿論胴体はガラ空きだ。
両膝を伸ばした体勢に加えて両手共上にある以上、どんな攻撃が来ても躱す動きは出来ないだろう。
だが、かまわない、動く気も躱す気も無いのだから。
ベルゼブブはこちらに向けて飛んでくる。
俺はその時に備えて集中する。
もう少しだ、まだ早い、逸る心を抑えて手に力を込める。
そしてまた予想を外す。
ベルゼブブは剣の届かない範囲で止まると、
透明な羽を使い空中で停止する。
おかしい……
俺の知ってるモンスターは特定の攻撃パターンを繰り返すだけのはず。
体力の減少により行動が変わったり、突進とフェイク等、同じ初期動作からの枝分かれは有るだろうが攻撃を自分でキャンセル出来る相手とは戦ったことがない。
それはモンスターを動かしているのが人間でない以上仕方ないだろう。
だからこそ多くのボスは強く設定されるのであり、それでも倒す為に時間を掛けて研究するのだ。
攻略動画を見たり、サイトを覗いたり、負ける事を前提に挑む事だってある。
『……』
最初に感じたのと同じ違和感、
まるで何か考えている様な間。
ベルゼブブはゆっくりと地面に着地すると、
羽を畳んで地に伏せる。
『許してください!降参しますぅ』
俺はまたもや硬直した。
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