第4話 僕と契約して魔王になってくれないか?4


 質問してから少しの間があった。


 

「もう……企業秘密とか関係なしに言っちゃうけど…

 裕くんにはまずは第1回イベントのボスをやって欲しい

 その後も運営側のプレイヤーが操作するボスやモンスターとして働いて欲しい

 ゲームチップさえあれば出社する必要ないし

 自宅で決まった時間にこのゲームをやって貰えれば良いんだ

 もちろん正社員として給料も出すしこのゲームのシステムを利用した換金という形でそれなりの報酬も出すと約束する」


「どうかな?」


 どうかなって言われたって……

 頭の中でさっきの言葉を必死に思い出す。

 俺がボス?

 働く?

 報酬?

 ゲームやってるだけで?


 最高かよ

 どうせ暫くゲーム三昧の日々を送る予定だったのがそれが仕事になるなんて。

 こんな上手い話があるのか?

 なんかの罠か?

 むしろ詐欺?

 それは罠だろ

 でも相手は学だぞ?


「だめ?かな…」


 電話から聞こえる自信なさげな声が自分の世界に入っていた俺を現実に戻す。



 「ゲームは好きだから別に構わないし

 むしろ敵ボスとかやった事ないし凄く楽しそうだし

 それで金が貰えるなら喜んでやるけど?」



 頭の中はぐちゃぐちゃだったが、

 元々ゲーム好きで今現在職もなく、親とも顔を合わせづらい生活をしている俺に失うものはない。

 だから迷いなく答えた。



「本当!!?

ありがとう!やっぱ裕くんに頼んで良かったー

詳しい話をしたいんだけど

これからはゲームやりながら説明した方がわかりやすいと思うから

とりあえずゲームチップと口座番号って今すぐ出せる?」



 さっきまでは雰囲気とは一転していつも通りになった学が声を弾ませる。


 んっと、チップはあるし通帳は引き出しの中だっけ?

 大学生の時にゲーム代を稼ぐ為に日雇いバイトをして以来使うことのなかった通帳を探す。



「あるよ、用意できた」


 埃を被った緑の通帳に息を吹き掛けながら報告する。


「ありがとう!

そしたらチップの番号と口座番号教えてー」


 チップを見てみると裏面に小さく番号が貼られていた。


「チップの番号は35216

口座はVR銀行 MMO支店18.16.7

これで大丈夫か?」


「大丈夫だよー

 口座はもう登録したから後はログインしてくれればこっちで介入してゲーム内で会えるようにするよー

 ちなみに今すぐログイン出来る?」



 流石に仕事が早いな。

 俺はチップを入れたダイブマシンを装着する。


「あぁ、いつでもOKだぜ」


 後は電源ボタンを入れるだけだ。


「じゃあ向こうで待ってるね!

 僕を見たら驚かないでね!

 そしたらこっちの電話は切っちゃうねー」



 じゃあまたねー

 そう言って学との通話が終了する。

 一応登録しておこうか迷ったが学以外からは着信来ないだろうと思い携帯を閉じた。


 さて予定とは大分変わってしまったが、

 楽しみだったゲームの世界に行くとしますか。


 俺はマシンの電源を入れた。

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