第3話 僕と契約して魔王になってくれないか?3


 はぁ……

 ベッドに座った俺はもう1人の佐藤に話しかける。


「で、話って何?俺早くゲームやりたいんだけど」


 手には買ったばかりのチップが光っている。


「うわー、25歳になっても変わらないんだねー

ちょっと嬉しい反面、今、平日の10時なんだけど

裕くんの事心配になっちゃうよ」

 余計なお世話だ。

 さっきまでの真面目な雰囲気はどうしたのか。


「うるせ、働いてないからいいんだよ

あ、でも今日からThe 2nd worldで稼ぐからニートは卒業する予定」


 そうだ、

 このゲームがあれば毎日ゲームをして生活出来る、なんならゲームに掛ける時間が多いほど収入が多くなるのは当たり前だろう。

 俺はこれからの生活を思うと少しテンションが上がった。



「セカンドワールド?もしかして今持ってるの?

しかも話の内容からしてまだプレイしていない状態?」


 前半は軽く無視された。

 いつもの学らしくなく食い気味に質問してくる。


「そうだよ、今買ってきたばかり

 これから楽しみって時に自称親友君から、迷惑で、意味不明で、詐欺みたいな電話が来た感じですね」


 少し大袈裟に責めてみる。

 早くゲームがやりたいのは本当だ、

 迷惑なのも本当だ。

 あれ?大袈裟じゃないんじゃないか??


「それはごめんって!久しぶりでテンション上がってて……

いや、そもそも携帯番号登録してくれなかった裕くんが悪いんじゃないかー!

でも、丁度よかった 

そのゲームについて話したいことがあるんだ」



「このゲームについて?」

 ダイブマシンを起動させつつ手元にあるチップに視線を落とす。



 「そう、僕達のチームがそのゲームを作ったんだけどね、予想以上に売れてしまって

その……親友とはいえ関係ない裕くんに言うのはどうかと思うんだけど……

強いプレイヤーが多すぎてこのままだと簡単に現金を稼がれちゃうんだ…」



 それを俺に言っていいのか?

 待てよ?ゲームを作った?

 確かに昔から技術の成績は良かったが、

 一気に入ってきた情報が過去の記憶を刺激する。


 そういえば……

 思い出した。

 昔から頭の良かった学はゲームだけは下手だった、

 近接攻撃は当たらない、

 飛び道具は変な方に飛んでいく、

 アイテムは間違えて落とす、

 何故かフレンドリーファイヤーの命中率は高い、

 モンスターからの攻撃は自分から当たりにいくレベル、

 思い出せばいつも俺が手伝いをさせられていた。


「それ、俺に言っていいの?

今から稼ぎに行く予定だった人間だぜ?」


 なんとなく言われることは予想できるが、

 当たり前の疑問をぶつけてみる。


「裕くんならいいんだ

 チームのみんなにも相談して決めた事だし

 それでね、また僕を助けて欲しいんだ……」



 真面目な声だ。

 どこか弱々しくて、お人好しで憎めない学がたまに見せる真剣な雰囲気。


「助けるって?

 具体的にどうすれば良いんだよ」


 俺は手に持ったチップを置いて電話に集中した。

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