第2話 商社Mでの日常
「お~い、木下。これコピー取って!」私の野太い声がフロアに鳴り響いた。
痛快だ。俺の存在感を示す場。ウザがられようがこれが自分のスタンス。
仕方ない。
「利賀さん、総務課のキャンペーンで紙印刷減らすように言われてます」
「そんなの関係ねえよ。誰が稼いでると思ってるんだ。お客と接する
営業が稼いでんのによお、気にしないで無視無視!」
木下は怪訝そうな顔をしたが、俺は無視した。
このような日が毎日続くと思った。自分のポジションは固定顧客に
定期訪問するルート営業。タイから仕入れる化学材料を売るプレイング
マネージャー。良くも悪くも代り映えしない。自分にとっては
毎日のジョギングのようだ。
自宅の赤羽から飯田橋まで乗り換え一本。改札を出て揺れる
飯田橋歩道橋にも慣れた。
ユラユラユラユラ。体に余韻を残しながら俺は会社へ向かっている。
すべての規則正しい自分のスタイルに反して
飯田橋歩道橋はいつもユラユラユラユラ。それすらも心地よく
思えてた。コロナの第二次余波が来るまでは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます