本気大魔王〜行動派大魔王さまの想像豊かな勇者攻略〜
ゼロん
第1話 大魔王、死す!
「くぁーっはっはっはっは!! これで世界の九割は我が手に落ちたぁ!」
紫の邪悪な炎が灯る玉座で大魔王は笑う。
「北、西、東の大陸は我ら魔王の手に。残るは人間の王国。南の大陸のみにございます」
「ウム。すばらしい働きだ」
大魔王は手に持ったグラスから水を飲み干す。
「世界のほぼ全てを我が魔族のものにできたのは、お前たち七魔王の働きによるもの……」
「────勿体なき御言葉。大魔王アジ=ダハーカ様」
大魔王の前に跪く茶髪の女性。
しかし、それは人間ではない。人間離れした耳と顔以外のツギハギに縫われた身体が物語っている。
大魔王からの賛美に彼女────すなわち私ことドゥルジは肩に手を当て顔を下げる。
「しかし問題はここから。神界がこの世界に遣わす選ばれしもの────勇者にございます」
「予言の勇者……このオレ様を倒そうなどと神々がぬかすわけか」
大魔王様は城の窓に顔を向ける。
この城を覆う外縁部────────その城壁から魔族の一人が大きな容器を城壁の外にいる巨大な魔物にやっているのが見える。
言わずとも私にはあの中身がわかる。
あの中にあるのはおそらく……
「我こそは、と大魔王様の存在をいち早く察知し向かってくる挑戦者たちは……予言のものではないかと」
「気まぐれに我が城の城壁まで飛ばしてやっているのにつまらぬなぁ。ものの数秒でくたばりおる」
「逆にそうでなくては困ります………」
大魔王様はいつの間にか手に持っていたドラゴン殺しの剣を棒切れのようにへし折り、跡形もなく消滅させる。
他愛ないやつよ、と彼は呟く。
「我々七魔王の多数は件の勇者など放っておけと仰っています。勇者に対する警戒は、」
「──────不要っ!!!!」
ダハーカ様は身に纏う闇の衣を払って高笑いをあげる。
「この大魔王がいるかぎり、我が魔王軍に敗北は無────────くぁぶあぁはしゃ!?」
「!?」
………………えっ? な、なんでじゅうたんに血が?
「ぐお、ぐぉぉぉ………ぅげぅ、がくがくっ」
………ん? んんんん?
状況が整理できない。幻覚でも見ているのだろうか。
私には急に目の前で大魔王様が吐血なされたように見えたのだが────?
そして今身体が固められたように硬直なされて痙攣して………あごガクガクなされてる?
「ぅぅぅぅぅ、がくがくがくっ」
ホッペつねって………痛い。
試しにもう一回………………やっぱ痛い。
────あ、これマジや。
「あぁぁぁぁダハーカさまぁぁぁ、これマジに痙攣なされてるぅぅ!!」
「ぅぅぅがくがくがくっ」
やべぇ。魔王軍、逆転負けするかも。
これはそう言わずにはいられない状況だった────!
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