呪殺師は可愛い男の子が好き

第62話 呪殺師ヒョー1

 私は呪殺師じゅさつしヒョー。呪術を生業なりわいとする者。


 呪殺師と名乗っているが、実際に殺しまでやるのはまれだ。


 それでも『呪術師』ではなく『呪殺師』と名乗っているのは、非情で冷酷な殺し屋という印象イメージを世間に持たせるため。


 私に呪術を依頼する者は、対象者の殺害までは望まない事がほとんど。


 ただ、対象者には私から狙われたら殺されるかもしれないという恐怖を抱かせるためには、『呪殺師』という呼称は都合がよい。


 例えば、しつこいストーカーに付きまとわれている女性がいたとしよう。彼女はストーカーをなんとかしたいが、殺すのはいやだ。そんな時には、私に依頼してもらうとよい。


 私ならストーカーに軽い呪いをかけた後、私が呪殺師ヒョーである事を名乗った上で、これ以上のストーカー行為を続ければ呪殺すると警告する。


 ストーカーが私の悪名を知っているなら、それでストーカーを止めるだろう。もし止めなければ、本当に呪殺するまでの事。


 まあ、そうなるのは希だ。たいていの奴は、私の悪名を恐れて悪行を止める。


 中にはトチ狂って霊能者協会に相談を持ちかける奴もいるが、それは一番の愚策。霊能者協会なら確かに呪いから守ってはくれるが、呪いをかけられる事になった原因を徹底的に調べられる。協会内には、サイコメトラーやテレパスもいるので隠し事などできない。


 その結果、悪行が明かになって警察に通報される。


 ちなみに私が警察に捕まることはない。


 呪術は科学的に証明できないので、私が呪術を行ったことを立証する事など不可能だからだ。


 ただ、私も霊能者協会には気をつけなければならない。


 協会には、強制修行場という事実上の超能力者専用刑務所がある。


 もしも、協会を敵に回すような事になったら、私もそこへ入れられる事になるのだ。


 まあ、私は協会上層部にコネがあり、今のところは持ちつ持たれつの関係にあるのでそういう事にはならないが……


 だが、今回の仕事は、ちょっとやばい。


 依頼人は殺しを依頼してきた。 


 脅しではなく、確実な殺しを……


 協会上層部からも、あまり殺しをやりすぎるとかばいきれなくなるから、やる時は発覚しないようにやってくれと釘を刺されている。


 だから、今回の仕事は慎重に進めなければならない。


 それと、もう一つ問題がある。


 殺すべき相手が分からないのだ。


 今回は、自殺した女子高生の遺族からの依頼。自殺の原因となったのはイジメであり、彼女をイジメていた相手を呪い殺すことが依頼内容だが、相手の名前を学校が隠しているのだ。


 そこで私は教師として学校に潜入し、殺害対象を探り出す事にした。


 幸いな事に、私は教員免許を持っている。


 そして、くだんの学校では国語教諭が急死したため、臨時の教師を求めていた。


 そんなわけで、私は容易に学校へ潜り込めたわけだ。


 この時、事前の調査で知ったのだが、彼女が自殺した空き教室で幽霊が出るらしい。


 その幽霊が自殺した少女であるなら、本人から直接聞くことができるかもしれない。


 時間が経ちすぎているから、難しいかもしれないが……



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