第7話皆でタコパ
俺達は今、四人でテレビに向かっている。
国民的キャラのレースゲームを行っているからだ。
最初に練習でやってみたのだが、真理愛と桜は下手だった。少し練習すればCPUには勝てるくらいになっていたので、俺と璃久も参戦しているという状況だ。
結果は璃久が一位で俺がそれに続くようにして二位になった。真理愛と桜は俺の後ろでデットヒートを繰り広げ少しの差で先に桜がゴールした。
三位なのだが真理愛に勝てた事が嬉しいのかまるで子供のように喜んでいる。
真理愛は悔しそうにしながら
「次は絶対に勝ちます!」
そう意気込んでいる。そう言って何故か真理愛は璃久の股の間に腰を下ろした。
「りっくんは強すぎだからハンデね」
そして璃久も平然とそのハンデを受け入れる。
そして真理愛は何か言いたげな視線を桜に向けていた。
「わ、私はやらないよ!?」
「多分颯くんが勝っちゃうよ?」
俺は変な挑発に乗るなよと心の中で願いながら次のレースが始まるのを待っている。
だが、現実は非情で桜が俺の股の間に腰を下ろしてきた。
「は、颯くん、に、匂いとか嗅がないでね。絶対だよ!」
そうは言っても俺の目の前には桜のサラサラとした髪がある、そこから鼻をくすぐるようないい匂いがしてくる。すると桜は俺の両手をがっちりとホールドして自分の前に回してくる。
俺が桜に抱き着いているような状態だ。
そうすると自ずと桜との距離は近づきレース所ではなくなってしまう。女の子特有の身体の柔らかさで意識はどんどん桜に持っていかれて衣擦れ一つでさえ意識させられていた。
結局を俺は六位という何とも微妙な順位になってしまった。璃久は相変わらず一位でそれに続いて真理愛が二位となっていた。
俺の前にというか間に座っていた桜は最下位を取っていた。
時間は五時半を回っていたので俺は料理を作り始めることにした。
今日は鳥の唐揚げにフライドポテト、サラダを用意してあとはたこ焼き器で皆で作るだけだ。いわゆるタコパというやつだ。
フライドポテトは市販の物なので時間も大してかからない。
サラダも野菜の切ればすぐ終わるのでまずは鳥の唐揚げをする事にした。
既に水に馴染ませてはあるのでそのまま小麦粉と片栗粉の混ざった物を付けて百七十度くらい油に入れて揚げていく。
茶色く色がついたら一度引き上げて三分程休ませる。その間に百九十度まで温度を上げる。そして休ませたものをもう一度揚げていく。
引き上げていくとそれはこんがりときつね色に焼けている。全て油を払ってさらに盛りつければ完成だ。
そして切る野菜を冷蔵庫から出している時に桜がキッチンに入ってきた。
「どうしたの?」
「ちょっとリビングに居づらくて......」
どうせ璃久と真理愛が所構わずイチャイチャしているんだろう。
「それじゃあ野菜切るの手伝ってよ」
そうして二人並んで野菜を切り始めた。
桜は手際もよく普段から料理をしているんだろうと伺える。
野菜を切っている間になんであの二人が付き合い始めたのかが気になるということを話したり、これから学校で行われる文化祭について話し合っている。俺たちのクラスは演劇を行う予定だ。お金が発生するものは二年生以降でしか出来ないので、一年生は何かを展示したり、ダンスや演劇を披露したりする事になる。
俺も桜も裏方の仕事なので特にすることはないのだが......
楽しく談笑していると、いつの間にか野菜は切り終わっており、盛りつければ終わりというところまで来ていた。
予めタコパをする予定だったのでたこ焼きの生地の元は既に作っており具はたこ、エビ、ソーセージなどを用意しておいた。
出来た食べ物をリビングまで運びそれに対して待っていた二人がちょっとした歓声を上げる。
「これは颯くんが作ったの?」
俺が頷くと、真理愛は少し悔しそうな表情でを浮かべている。そして小声で「男の子なのに......」と言っている。
たこ焼き器を温め始めて、油を敷き生地を入れて中の具を入れる。皆自分が好きなものを入れて楽しんでいるようだ。
タコパは滞りなく進み皆でケーキを食べている。
「これ颯が作ったのか女子力高すぎだろ、そりゃモテるのも頷けるわ」
「別にモテてないから、そもそも皆俺がこんなに料理をするなんてしらないでしょ」
それもそうだななんて璃久は言っている。そして俺と桜がキッチンでも話していた文化祭の話題に移っていった。
「俺たちがやるのって『白雪姫』だったよな?」
「そうだよ、自分たちのクラスのやることくらい覚えとけよ」
「キャスト決めてる時の颯は大変そうだったな〜」
「そうだね、全力で否定してるの面白かったな〜私は結局やることになっちゃった、けどね」
真理愛は白雪姫役でクラスの皆が異議なしと一発で決まったのだ。
俺は璃久からは邪推され、クラスの女子からは説き伏せられそうになったが、担任が助けてくれた。
あの時ばかりは感謝せざるを得なかったのはいい思い出だ。
「璃久いいのか?お前の彼女が違うやつに唇奪われるぞ」
軽く笑いながら冗談交じりにそう聞く。
「別に本当にする訳じゃないし〜真理愛は俺のだし〜」
そう言って二人で目を見合わせてニコニコとしている。
桜はそんな光景を羨ましいそうに見ていた。
俺が「桜?」と声をかけると驚いたように一瞬身体を震わせて「何かな?」と聞いてきた。
「ボーっとしてるように見えただけだよ」
桜の頬はほんのりと赤くなっていた。
璃久と真理愛に当てられてしまったんだろう。
俺も二人の仲睦まじい所を見てるだけでなんだかいたたまれない気持ちになる。
その後も、俺達は真理愛と璃久のイチャイチャを見せつけられて自分の家なのに自分がいていいのかと何度も思わせられることとなった。
とても濃密な時間を過ごし時間は九時を回ろうかというくらいになった。
「そろそろお開きだな」
そういうと璃久は物足りなさそうな視線を向けてくるがこれ以上イチャイチャを見せつけられていると変な気分になりそうなので無理やり止めた。
皆帰る準備をし始めた所で俺はある事を思い出しそれを璃久に伝える。
「あ、璃久、俺来週から部活始めることにしたから一緒に帰れなくなっちまった。ごめんな」
そう伝えると璃久はあっさりと「分かった」と一言だけ。
そして数秒の空白の後
「ええー!部活!?聞いてねぇよぉ!」ということを大声で言われ耳が痛くなった。
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