第5話これから
「いや〜まじで楽だったな」
ホームルームを終えると璃久がそんなことを言う。今日は楽でも明日が大変なんだけどな。
璃久は真理愛と帰ると言って俺と別れた。俺もまだしていないことがあったのでその目的を達成するために職員室に向かっている。
職員室に入り担任を呼ぶ。
「先生、入部届けをください」
担任は少し驚いていたが、すぐに入部届けを取り出し俺に渡す。
「小鳥遊、何の部活に入るんだ?」
「バスケ部です。中学の時もやっていたので」
すると担任はあまり興味のなさそうに「頑張れよ」とだけ伝えて自分の席に戻って行った。
俺は急いでその入部届け届けを書き終えバスケ部の顧問のなかむーこと中村先生を呼んだ。
幸い今日は午前日課で部活の人達はまだ教室や部室でご飯を食べているので教師はあまり出払っていない。
すると中村先生がやってくる。
「えっとお前は......」
「一年C組の小鳥遊颯です。」
すると中村先生は「どうした?」と訪ねてくる。
「バスケ部に入部したいです」
そう言って入部届けを差し出す。
そうすると中村先生は怪訝な様子を浮かべ俺に問う。
「お前って、もしかして県選抜だった小鳥遊颯か?」
これは驚いた。
ただの公立校の教師が中学の県選抜の事を把握してるなんてな。
「そーですけど。ていうか俺の事を知ってる人がいるなんて思いませんでした」
そう言うと中村先生は自分が今年異動してきたことと元々バスケが強い高校で授業をしていたためたまたま知っていたということを教えてくれた。
「お前がいりゃ心強い。次の月曜日から来い」
ここで俺は職員室を後にして帰路に着いた。
駅のホームにへの階段を降りていると見慣れた後ろ姿の女の子がいた。
「桜、今帰り?」
「あっ、颯くん!そうだよ」
「午前日課だと楽だね。電車も空いてそうだし」
周りを見回しても見えるのはほとんどがうちの高校の生徒ばかりだ。
明日がテストだと言う理由で部活がない所も多いのだろう。
「桜は勉強してる?」
「あんま出来てないかな〜誰かさんと夏祭りに行っちゃったし」
「それは俺が悪いって言いたいのか?」
「冗談だよ〜」
桜のSっ気モード久しぶりに見た......
「だから、今日は頑張って勉強しないと!」
桜は両手に力を入れるような仕草をしているが、慣れてないのか少したどたどしいのが面白くて笑ってしまう。
「颯くん〜笑わないでよ」
そういいながら俺の二の腕をポコポコと叩いてくる。
そうしているといつの間にか電車が来ていた。
俺達は電車に乗り込み明日のテストの対策みたいな事を話し合っていた。
学校に着くとみなソワソワしていた。必死にワークを解いている人もいれば友達と駄弁っている人もいる。
璃久もそのうちの一人でワークを必死にやっていた。
「璃久、おはよう」
「おはよう颯。なあ、今日のテストカンニングさせてくれよ〜」
こんな事を言っているが璃久は律儀な所もあってカンニングなんて事は絶対にしないだろう。
「はいはい、どーぞ」
璃久は虚を疲れたような反応をしたのであえて一言加える。
「お前はカンニングするようなやつじゃないからな」
璃久は何も言わずにまたワークに取り組み始めた。それだけ今いる状況が大変なことになってるんだろう。
そしてチャイムが鳴る。
テスト用紙を持った担任が現れて皆に1枚ずつテスト用紙を配っている。
名前を書きペンを置く音がまばらに聞こえる。誰も喋ることを許されず、時計の針がチクタクと進む音だけが流れる。
チャイムが鳴った瞬間皆一斉に紙をめくペンを走らせる。
全ての問題を解き終え、時計を見るとほぼ終わりに近い時間となっていた。
チャイムが鳴り終わりを告げる。
周りからはため息の漏れる音がした。
担任がテストの枚数を数えて号令を行うと皆が一斉に立ち上がり周りの人と答え合わせやらをしている。
俺も例外ではなく、桜と答え合わせをしていた。
すると気の抜けた声が隣から聞こえる。
「颯〜明日夕方の四時からでいいか?」
「おう、分かったぞ。んで、璃久......テストはどうだった?」
「あんだけ勉強してたんだぜ?」
「そうか、ダメだったんだな」
璃久が嘘泣きをして、真理愛がそれを慰めている。夫婦漫才をするな。俺と桜は困ったように顔を見合わせて、笑った。
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